第7話 ……んん?
これから一体なにを言われるのか、流石に告白ではないとは思うのだが、もし本当に告白ならばどう断ろうか? などと思っていたのだが、氷室さんの口から出た言葉は『ペットは欲しくないか?』という言葉であった。
「……はい? ぺ、ペットですか……?」
「そう、ペット。 今欲しくないかしら?」
なんだろうか? やけに食い気味に聞いてくるのだが、もしかしたら子猫や子犬を拾ってみたはいいものの、親から『捨ててきなさいっ!』とでも言われたので新しい飼い主を探しているのだろうか?
でもそれだったとしても俺にこんな紛らわしい手紙を出してまでわざわざ校舎裏に呼び出すだろうか?
そもそも氷室麗華さんともなると普通に友達へ聞いて周るだけで直ぐに飼い主は見つかりそうな上に、学校の掲示板にでも飼い主募集と書いた紙を貼り付けた方が複数の目に触れる為、俺一人に聞くよりもよっぽど効率がいいはずである。
にも関わらず、なぜ俺だけを呼び出してペットが欲しいかどうかを聞いてくるのだろうか? いくら考えても氷室麗華さんの考えはまったく分からない。
「そうですね、犬か猫ならばいずれ飼ってみたいとは思うのですが、流石に家族の断りなく飼うこともできませんので……」
そして俺はとりあえず、当たり障りない感じでペットはいりませんよと遠回しに返す。
「ほ、本当かしらっ!? それは行幸ねっ!!」
しかしながら氷室麗華さんは何故か俺の返した言葉にかなり喜んでいるみたいである。
去年一年間同じクラスで過ごしてきたのだが、これほど感情を表に出して喜んでいる氷室麗華さんを見るのは初めてだ。
「いや、でも両親に聞いて見ないと分からないですから──」
「あぁ、そのことでしたら大丈夫よっ!!」
一体何に対して大丈夫なのか、それを説明してほしい。
「それで、本題なんだけれども……犬飼君……」
「は、はい……」
「私は犬飼君の事が異性として好きですっ!! 私をペットにしてくださいっ!!」
「………………んん?」
何故だろう? 『ペットにしてください』と聞こえた気がしたのだが聞き間違いだろうか?
そもそも氷室麗華さんが俺の事が好きだという事もびっくりなのだが、普通ならばこの後続く言葉は『付き合ってください』だとか『私を彼女にしてください』あたりだと思うのだが……。
うん、流石にペットにしてくださいは無いか。 ならば聞き間違いであろう。
「ごめん、最後の方あまり聞き取れなかったみたいなのでもう一度先程言った言葉を聞かせてもらえないだろうか?」
「まったく、仕方ないですね。 私は先程犬飼君へ告白した後『ペットにしてください』と言ったのだけれども、これで聞こえたかしら?」
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