黒い猫人ナーゼと共に生きる異世界生活、呪われ子と災厄の騎士団、統合失調症から始まるチートな冒険譚

灰児

第1話プロローグ

 高校の頃から、不登校になり二十代になる私が精神病院に入院して統合失調症患者になり襲い掛かる悪夢と対峙して、十年になる。

 

 親は面会に来てくれるが、友達は当たり前だがいない。一番の友達は自分で買った黒猫のぬいぐるみだった。


 いつもそれを抱きしめて持っていたが、少し目を離した隙にいつの間にか無くなってしまった。


 慌てた私が看護師さんに話そうと廊下を走ったその時、床が濡れていて、背中から転げ落ち強かに頭を打ったのは、私が二十七歳の時だった。


 意識を取り戻すと、雲の中にいるようで、目の前に黒い猫人みたいな獣人がいた。

 猫の獣人である、ファンタジーなキャラクターの幻覚だろうか?

「浅倉昇陽あなたは残念ながら死んでしまいました」

 私はびっくりする。驚くというより呆然とする。

 いきなりな発言である。もう少し大人しく話して欲しかった。


「え、私はもう死んでしまったのですか」

「はい、あなたは、医学的に頭を強く打って死亡しています」

 黒い猫人は女神のような微笑みを浮かべる。

「それはこの世界を司る神の手違いもあり、異常事態イレギュラーながら救済措置があります。可能性は残されています。異世界に転生することです」


「異世界に転生?精神障害の私が、いくら何でもやっていけません」

 十年も精神病院に入っていたのだ、社会と折り合いのつかない自分が異世界で何かやっていけるとは思わなかった。それに異世界とはどういう世界だろう?


「まあ、そういわず、お試し感覚で二度目の人生を歩んでみませんか?」

 猫のぬいぐるみは好きだがこの黒い猫人は、表情やしぐさに愛嬌があって何故かどきどきする。私は考える。「あなたは、何者ですか?」


「私は生死を司る女神であなたの創造の産物です。あなた好みに見えています」

 私はがっくり来て、理想が音を立てて崩れ去る様だった。

「私の唯一の友達が黒猫のぬいぐるみだったからですか、皮肉ですね」

 黒い猫人の獣人は幻想なのだ。これが夢である可能性もある。女神はそのまま話を続ける。

「その代り、あなたには特別な力が授けられます。そして特典として、私の仮初も同行者としてついて行きます」

「異世界とはどんなところですか?年齢は変えられるのですか?能力も病状も」


「あなたが一番人生を後悔している十代後半くらいでいいでしょう。やり直せますよ。能力はそうですね、生前精神障害だったので、呪われていることにしましょう。症状は完治しているといいですね」


 はい!?精神審障害だったから能力が呪われている、おかしいぞ。私は騙されているのか??やはりこれは夢ではないかと疑う。頬を叩いても決して覚めない。

「まあ、次の世界で会いましょう、私の名前はナーゼあなたのつけた愛しき名です。末永くよろしく」


 暗転する視界に黒い猫人の女神が優しく微笑んでいた。

 すぐ起き上がるとそこは精神病院ではなく、黒い森に囲まれた漆黒の夜だった。

「気づきましたか?」

 優しげなその声の女性は丁寧に私の頭を膝枕していてくれた。

 黒い猫人の成人の女性で女神様とそっくりな姿だった。

 これから、私の異世界生活が始まるのである。

 いきなりだが呪いという能力と共に相棒のナーゼの黒い猫人の女性と新しい世界の冒険が始まった。


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