君が消えた夏、僕らは共犯者になった

蒼木ゆう/ビーズログ文庫

プロローグ



「ナイショだよ、仲間だけのヒミツだからね?」


 少女は笑いながら宝物を箱の中にった。

 きっとそれは世界で一番大切なモノ。

 こわれないように、いつまでも、永遠にと願っていたモノ。

 時計の針は進み、やがて木は背を高くして、少年は大人になった。

 ぼうけん心も、世界がとても大きく、無限の可能性があることも忘れて、自分の目の前に見えるものが全てだと思うようになっていた。

 雲の上に城はない。

 森の中にようせいの家はない。

 海の底にかくされた王国はない──。

 そんな現実に慣れて、あのころかがやいて見えていたものも、いつのまにかかたわらにはいなくなっていた。

 けれど、まだどこかに残っている。大切な、とても大切なキラキラしたものをめて、子どもたちは〝箱〟を思い出の場所にめた。たくさんの宝物を埋めた箱は、いつか開くその時が来るのを待っている。

「忘れないで」

 ずっと、忘れない。

「思い出して」

 覚えているよ。

「ナイショだよ」

 うん、だいじよう──絶対に、心の中に大切にしまっておくから。

 じゆもんのようにり返した約束の言葉。けれどやがて春先の雪のように、静かに、だれの目にも止まらぬままに心の底にけて消えていってしまった。

『どうか忘れないで』

 そのおもいを、最も強く願ったのは、誰だっただろうか。

 遠くで、暗い空……けれどこうこうと月の光が照らす夜空に、フクロウが羽ばたいていた。


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