第1章 第3話【邂逅】

「さあ!シミ取りと洗濯たたみを最速で終わらせた水瀬里帆が料理に取り掛かるようです!何をお作りになるんですか?」

「一番自信があるコロッケです。」

「おお!さすが自信があるだけあって、手際が良いぞ!」

シミってどうやったら取れるの……?ママ助けてーーーーー!

先に洗濯物たたんで料理やった方がいいのかな。もう考えてる暇無いし、そうしよう!

「さあ、ここでシミ取りを諦めたのか、洗濯物をたたんで料理に取り掛かりました!一ノ瀬優愛さん、何をお作りになるんですか?」

「え?あ、オムラです!」

「少しテンパっている様子か?オムラとはおそらくオムライスでしょう!独特な略し方はかわいさポイントか!?」

どさくさに紛れて、実況の人がシミの取り方を教えてくれた。

実況の人優しすぎるし、玉ねぎ切ってるし、涙がとまらないよぉぉぉぉおおおお!

「おおっと?一ノ瀬優愛どうしたんだ?号泣しているぞ!」

「玉ねぎは!直接目に来るんじゃなくて鼻で成分を吸うから痛くなるんですーー!」

「少し日本語が怪しいが、豆知識を披露してくれたぞ!これはへぇ〜となった観戦者も多いんじゃないか?」

また実況の人が、ケチャップライスは胡椒多めで、最後に強火で適度に焼くと大人なオムライスになると教えてくれた。



「さあ、全員終了しましたので、食レポの方お願いします。」

実況の人のおかげでシミも取れたし、オムライスも大人になったし、何とか戦えそう…

「このオムライス、ちょっとガーリーで香ばしくて、玉子も丁度よく火入れされてます。大人なオムライスって感じで美味しいですよ!」

味は良かったらしいけど、手際が最悪だった。

至る所にお米や玉ねぎが飛び散り、ケチャップがエプロンにかかっている。

「あーこのコロッケ、じゃがいもを潰しきってないのか、ザクッフワッだけじゃなくてホクッもあるので、いいですね!あと、味付けが絶妙でソースも醤油もいらないです!これは本当に凄い!」

里帆ちゃんの調理場を見てみると、飛び散ってる物は全く無いどころか、使い始める前より綺麗になっていた。

全ての課題が終わって暇な時に掃除をしていたらしい。

負けか…あーあ、彰人に告白したかった──いや、待てよ?別にここじゃなくても告白できるじゃん!なんで今まで気付かなかったんだろう!

よし、彰人の事だし今頃教室で本読んでるでしょ!

「私、棄権します!バイバーイ!」

周りの人からすれば、負けが確定して逃げたって思われるかもしれない。実際そうだし。

でも、あくまで告白するための手段にすぎないんだ。私は、今から彰人に告白する!


────────────────────


「そ、それではクイーンとなった感想を!」

「好きな人に告白するために頑張りました。嬉しいです。」

優愛ちゃん、何しに行ったんだろ。負けるからって逃げるような子じゃないと思うんだけど。

「それでは、告白したい相手の発表をお願いします!」

告白か。私にできるのかな。いや、するしかないんだね。

「私の好きな人は一年三組の真木彰人君です。」


────────────────────


「あのね。」

『ガラガラガラガラドン!』

『ピーンポーンパーンポーン』


「真木君の事が大好きなの。」

「彰人!大好き!」

『一年三組の真木彰人君。至急、体育館へお越しください。』


「え……?」

「ん……?」

『ピーンポーンパーンポーン』


「一ノ瀬さん…なんでここに?生徒選挙は?」

「ふ、二人とも何してんの!?ここ学校だよ?」

「え、すっ……好?」


「こ、これは違くて…事故で。でも、私は真木君の事が──」

「信じらんない!もういい!」

『ガラガラガラガラドゴン!』


横になった男女が身体を密着させて顔の距離が近い。なんて誰がどう見ても誤解しかしない。今回に限っては誤解とも言いきれないけど…

ただでさえ気まずい空間に、優愛が何故か二組の教室に入ってきて、更には俺の事を好きだと言った。

そして、この光景を目にして……

「えっと…ご、ごめんなさい。私、自分勝手すぎたよね…ごめん。」

「い、いや。その…気持ちは嬉しいし抵抗しなかったし……ごめん。」

『ピーンポーンパーンポーン』

『繰り返します。一年三組の真木彰人君。至急体育館へお越しください。繰り返します。一年三組の真木彰人君。至急体育館へお越しください。』

『ピーンポーンパーンポーン』

えっ…なんで体育館に?

「ほ、ほら。早く行かないと…」

「う、うん……」

聖那と気まずいまま体育館へ向かい、到着した。

先生からステージの方に案内されて、ステージに上がると里帆が立っていた。

「さあ!それでは白咲学園祭恒例!付き合ってみたい生徒選挙クイーンによる告白タイムです!」

え、俺なの?

息を整えながら脳内を整理ながら里帆の話に耳を傾ける。

「私は、幼稚園の頃から彰人君の事が好きで、彰人君と結婚するためだけに家事も勉強も一生懸命やって来ました。今は一人暮らしをしているので、同棲生活をしたいです。私と結婚を前提にお付き合いしてほしいです!」

恋愛知識のない俺でも少しウッとなる内容だったけど、本当に俺と結婚するためだけにって言うなら──いや、だったらさっきの二人はどうするんだ。

放っておく事はできないし、先にあの二人から言われたから、回答?も準備通りにした方がいいでしょ。

「えっと、その…考えさせてほしいと言いますか、色々ありまして……」

「は、はい!私の事を考えてくれるだけで嬉しい!やっぱり彰人君大好き。」

「あ、ありがとう…?」

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