第二十二話
「よくお風呂場で髪を洗っていると後ろから視線を感じる・・・なんて話がありますよね」
昼間のファミレス。
明るい店内と比べて、どこか暗い感じのするSさん。彼女がそんな風に話し始めた体験。
先の例に漏れず、Sさんがお風呂場で体を洗っていたときのこと。妙な違和感があった。
沸き上がる奇妙な感覚を掻き消すかのように、両手で身体中をまさぐる。
すると、一ヶ所だけ肌触りの違うところがあった。
「どこだったと思います?」
抑揚はないが、どこかいたずらっぽく尋ねてくるSさん。
しかし、なんだか大勢の人がいる空間で口にするのが憚られた。
すると彼女は目を細めて囁くように教えてくれた。
「背中だったんです」
「背中に、背骨が二本。浮き出ていたんです」
「じゃあ、いま私の頭の後ろにはナニがいますか?」
予想外の展開に言葉を失い、自分は彼女から目を離せなくなった。
数秒の沈黙の後に
「あなたは見えないんですね・・・」
Sさんは目をそらすと、そのまま席を後にしていった。その顔は、心なしか話始めた当初よりも黒くなっていたような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます