第5話 僕は悪くない、なぜ僕なの?

令和●年6月11日(月)「週刊夕日Web版」掲載記事


「僕は悪くない」、「なぜ僕なのか」

校長に告白された生徒の苦しい胸中

 ~ J市中学校長自死事件 ~


 J市立J第一中学校の校長(当時57歳)が5月に自死した問題で、校長が好意を寄せていたとされる生徒(M君、13歳)に、本誌はインタビューすることができた。そこには、いきなり社会の矢面に立たされた生徒の悲痛な叫びが聞こえてきた。インタビューの要旨は次のとおりである。


 ー 入学式のあいさつで初めて見た時、「何この校長、キモッ」っていう印象でした。周りのみんなも同じ。得体の知らないロン毛中年が僕らの前で「あたしは…」とか言いながら、普通にあいさつしてる。僕のお父さんよりずっと年上のオヤジなのに、汚い白髪を伸ばして巻き髪なんかして、恥ずかしくないのかって。時々僕の教室をのぞきに来て、そのターゲットが僕だったと(死亡した)後で聞いて、鳥肌サブイボが立ちました。今でも悪夢にうなされてます。


 ー 告白の日ですか?・・・4月の終わり、いつだったっけ?…、あっそうです。29日の放課後。確か担任の先生から屋上に行け、と言われ、行ってみたら、校長先生がプーさんのぬいぐるみ抱えて、これはあたしの初恋とか今日は誕生日とか訳の分からないこと言いながら僕に近寄ってきて・・・ 

 おーっうぇっ。ごめんなさい…。

 ここからはもう思い出したくないです…。


 ー 校長先生の告白に何て答えたかですか?正直覚えていません。思い出したくないっていうか・・・僕の頭の中で、何かの線がプチっと切れて、思いのままののしったと思います。


 ー 例えばですか?だから、よく覚えていなんですけど・・・。

「変態、こっち来るな!校長だろ、ぬいぐるみなんて抱えて、恥ずかしくねえのか。一度鏡でツラ見てみろ。キモイ!汚い。妖怪!化け物!ホモ!ナメクジ!カス!二度と僕の前に現れるな!」

 多分、このくらいのことは言ったと思います。その後ですか?知りませんよ。僕はすぐにウチに帰って、ママに全部話をして。ママはすぐにどっか(J市教育委員会事務局)に電話して・・・。


 ー あの日以来、S先生が学校に来なくなって、安心してたのに…。S先生が死んじゃってからは、テレビ局や新聞社の人たちがウチに集まって…。SNSっていうの?インターネットに僕の顔や名前が載っちゃって、それから毎日嫌がらせの電話は来るし、学校では「人殺し」とか言われるし。


 ー 何でなんだよ。何で僕がこんな目に合うのですか?

  僕が何か悪いこと、しましたか? 教えてください。

(取材:人吉 美津香)


 ■コメント 1,258件

 vxan*****| 3時間前

 可哀そうに…まだ中学生なのに…変態に好かれたばかりに…。心中お察しします。

 その校長が生前書いていた日記がネットにUPされてるみたい。まだ見てないけど。

 なんか、メッチャキモい内容らしくて・・・・・もっと見る

(返信 135件)


解説:この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。



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