A diary

叙述トリック大好きギャル…満74歳現役女

第1話 日記

■令和●年4月6日(水)

 入学式。今年も新入生が入ってきた。ぞろぞろ入場する男子を見ながら、ひょっとして新しい出会いがあるかも、なんて期待しちゃった。それより、新しく来たK先生、何かめっちゃ怖そう。超嫌いなタイプ。しかも生活指導担当らしい。最悪。


■令和●年4月8日(金)

 全校集会。1年生が一人ずつ自己紹介。ちょっと気になる男の子を発見。1年5組のM君。目元がクールで、ちょっとクセ毛のヘアースタイルが体型に似合ってる。もしかしてハーフかも。趣味は、二郎系ラーメンの食べ歩きだって。帰ってからスマホで調べたら、二郎系ラーメンって、もやしとニンニクがてんこ盛りの、フードファイターが食べるようなラーメンだった。あたしには絶対無理。しかもそれを食べ歩くって、どんだけラーメン好きなんだろう。


■令和●年4月13日(水)

 ドキドキが止まらない。最近M君のことが気になってしょうがない。こんな気持ち初めて。今日は勇気をもって、休み時間に5組まで行ってみた。教室をチラ見したら、M君発見。数人の女子に囲まれて、楽しそうに笑ってた。やっぱモテんだろうなぁ。もしかして、もう付き合っている彼女、いるのかなー。あー、M君と話がしたい。M君の顔を、もっと近くから見てみたい。


■令和●年4月15日(金)

 M君が好きな二郎系ラーメン。どうしても食べてみたくて、放課後ママの車でラーメン屋さんに連れて行ってもらった。・・・M君。あなた、何でこんなラーメン食べれんの?ママも無理で、半分以上残しちゃった。「もう来ないでください」ってラーメン屋のオヤジ。もしここにM君がいれば、残りのラーメン、完食してくれたんだろうなぁ。あぁ、M君と一緒に食事したぁーい!


■令和●年4月16日(土)

 週末。今日も明日もM君に会えないなんて、超悲しいよぉー。あたしの心の中はM君でいっぱい。これって、もしかしたら初恋?初恋って、こんなに切なくて、苦しいものなの?ママに聞いてみたいけど、・・・恥ずくて言えない。


■令和●年4月17日(日)

 思い切って美容室に行ってきた。肩まで伸ばした自慢の巻き髪をバッサリ切り、ショートボブ風にしてもらった。おまけに少し明るめにカラーリングしちゃった。校則では当然ヘアカラー禁止。でも、M君に見てもらいたかったから。少しでも目立ちたかったから・・・。

 M君。あたしに気付いて・・・。


■令和●年4月18日(月)

 全校集会。この中にM君がいるなんて、同じ空気が吸えるなんて、あたしって超しあわせー!

 あたしのイメチェンが注目されていることは何となく感じてた。生活指導のK先生、集会中ずっとこっちを睨んでた。後で絶対怒られると思ったけど、結局何も言われなかった。超ラッキー♥


■令和●年4月21日(木)

 まだM君とは話しすらできていない。少しイライラしてきた。M君の周りにいる女子ども、消えろ。お前らウゼーんだよ。


■令和●年4月25日(月)

 あたしの心臓はまだバクバク鳴っている。ついに、今日、ついに!まさか掃除の時間に! M君と廊下ですれ違っちゃった。M君、あたしのこと見てたと思う。M君の視線を感じたもん。でもあたし、目をそらしちゃった。ってか見れなかった。でも満足。かなりの前進。だって、愛しのM君に初めて近づけたんだから。お祝いに今日は生クリームプリン食べよっと。


■令和●年4月27日(水)

 もう誰もあたしを止められない・・・決めた。告(こく)る。M君に正面から向き合って、自分の気持ちを伝える。告るのは、あさって29日の金曜日、あたしの誕生日。

 神様、最高の誕生日になるように、どうかあたしに力をください。


■令和●年4月28日(木)

 朝からドキドキが止まらない。ついに明日、M君に会って、想いを伝えられるから。朝ごはんが食べれなくて、ママから、「何かあったの?」って聞かれたけど、「ううん、何でもない」と答えるのが精一杯。本当は、「ねえママ、ひょっとしたらあたし、彼氏できるかも」って言えれば最高なのになぁ・・・ああ、M君、好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き

だーい好き!


■令和●年4月29日(金) 午前7時30分

 ・・・一睡もできなかった。お気に入りのプーさんのぬいぐるみを抱きしめたまま、天井だけを見てた。朝、ママに誕生日おめでとうって言われたような気がしたけど、何も答えられなかった。今何時? プーさんの時計・・・7時32分。・・・それでは、学校に行ってきます。

 あたしのすべての気持ちを、これからM君に伝えてきます。

 神様仏様ご先祖様プー様、あたしにすべての力を貸してください。

 告った後は、この次の行にあらためて書きます。




















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