第41話 決着
人里離れた森の中……
ハーフラインはとことん優秀な男だった。
もしも、ハンズ・バンが逃亡した場合の逃走経路から、なぜその道を選ぶのか……また隠れ家として理由する拠点まで全てを網羅していた。
だが、それを使ってもハンズ・バンが捉えられなかったということで、冒険者ギルド本部も諦めかけていたというこだ。
だが、だからこそ導き出される逃走経路がある。
正規のルートはダメ、ハーフラインが用意した隠れも使わない。
そうなると、ダンジョンとかした森を通る必要があるということだ。
「やっと見つけたよ」
「なっ!どうしてここが!」
トレンドの森と言われるダンジョンは、他国へと繋がる森となっている。
普通の冒険者であれば、身を隠す場所としてなど思いつきもしないような場所ではあるが、それ故に安全。
「元高ランク冒険者が考えそうなことを予測しただけさ」
「ふん。貴様のような落ちこぼれ講師が一人で来たとして何が出来る?現役を退いたといってもワシは元A級冒険者として実績を積んできた。貴様には煮え湯を飲まされたのは事実ではあるが、それがどうした?貴様に何が出来るというのだ」
ハンズ・バンは、まだ自分が置かれた状況がわかっていないようだ。
「ギルドをやめさせらた恨みか?くだらんな」
「別にギルドの講師をやめさせられたことに恨みはないさ。それはギルドとしての判断だと言われれば従うだけだ」
「なら、なんだ?こんなところまでワシを追ってくるなどバカでしかないぞ」
「そうだな。お前が……法の下で刑を全うするのであれば、俺も手を出すことを止めていたかもしれない。教え子との約束もあったからな」
ローガンの顔が浮かんでは消える。
「だけど、お前は逃げて法の下から解き放たれた」
「ふん、ワシを王国の法で裁こうなど」
「いや、これでよかったのだと俺も思ってるよ」
ハンズ・バンとの距離を詰める。
「死にたいのか?それ以上近づけば殺すぞ」
「やれるものならば」
「舐めるなよ」
ハンズ・バンが、背中に背負う両手剣を抜いて斬撃を放つ。
「これはハーフラインの分だ」
斬撃を躱した俺はハンズ・バンの頬に拳を叩き込む。
「グフッ!」
「これはお前に従おうとしたバッツの分だ」
ハンズ・バンと共に刑を受けるところだった。
だが、ディーが足止めしたことで、バッツは刑を受けずに済み。
今ではディーと友になれた。
「これはリリア、セシルの分だ」
オーボを野放しにして、犯罪を隠蔽していたこともわかっている。
リリアやセシルは命を落としかけた。
それもハンズ・バンなら事前に防ぐこともできたはずだ。
「これはガロの分だ」
暗殺ギルドや貴族たちの繋がりを強めるためにスラムの子供たちは被害を受けていた。
「全てがお前のせいではないと思いたい。だけど、他の奴らが罪を償う中でお前だけ逃げることは許さない」
「はっ!ちょこまかと逃げおって、多少は体術が使えるようだが、それがどうしたというんだ。貴様にワシは倒せん。岩砕き」
両手剣のスキルを発動して、大木を切り裂くハンズ・バン。
ダメージを受けているはいるが、まだまだ元気な様子だ。
「冒険者は戦いの基本がなっていない者が多い。スキルとレベルのお陰で乗り切ってしまう。だが、本来は基礎を鍛え自身の身体能力を上げることで、レベルやスキルも上昇率が変わる」
俺はナイフを取り出して、ハンズ・バンが放ったスキルを弾き返す。
「バリィ。単純な防御技だが、極めれば世界を制するほど強くなれる」
「くっ!どうしてワシの剣が!」
「A級如きが頭に乗るなよ」
「如きじゃと、このゴールドプレートの意味を知らんのか?」
胸からゴールドプレートを取り出したハンズ・バンは驚いた顔をする。
「世界には上には上がいるんだ。お前は知っているか?世界に二人しかいないSSS級冒険者の存在を」
「ふっふん。知らない冒険者などおらん!魔王を倒した勇者セリカ。そしてその師であり、勇者が世界から敵認定されそうになったとき、世界と敵対することを宣言した悪魔の教師。デビスティーチャーの二人だ。だがその伝説がどうしたというのだ???」
俺はアイテムボックスから冒険者時代のプレートを取り出す。
「なら、これの意味も分かるな?」
「なっ!ブラックプレートだ……と……バカな!ありえない!SSS級を表すブラックプレートを貴様がもっているはずが……まさか……」
「そのまさかだ。俺が勇者の師匠のデビスティーチャーの異名を持つ」
「バカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカなバカな!!!!!!!!!!!!!!!!」
ハンズ・バンはやっと状況を理解したようだ。
「お前がケンカを売った相手。そして、SSS級冒険者の友人を殺した末路はわかっているだろ?」
「ひっひ~!!おっお許しを!!!知らなかったのです。私はただ、冒険者ギルドをより高みに押し上げようとしただけで、私のやり方は強引だったかもしれませんが間違ってはいないはずだ!!!」
ここに来てもまだ謝罪の言葉ですら出ない。
代わりに発せられたのは自分自身の正当性を訴える言葉。
「人が一人の命を奪う行為は己の命を取られる覚悟も必要になると知れ。
ましてや、医者や僧侶のように助けるために尽力するのではなく。
己が欲望を叶えるために、奪った命の対価が許されるはずがない。
因果応報。出来るだけ苦しんで死ね」
【黒魔法 夢魔無限】
無限の地獄で死ぬまで夢を見ろ。
「いやだ!!!いやだ!!!!!!!!!!!!!!」
ハンズ・バンの絶叫は現れた死神と共に消え去り、トレンドダンジョンに静寂が訪れる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます