第31話 グレートモンキー争奪戦 前半

ジャングルは広大で、それぞれのモンスターが縄張りを持って牽制し合っている。

力の強い者同士がせめぎ合うということは強者を生み出しやすく。

また、本能が自分よりも強者を避けるように出来ている。




「モンスターが現れませんね?」



「気配もしねぇ~」



「まるでジャングル全体が息を潜めているような気がするわね」



「そうだね。ジャングルなのに虫の声すら聞こえない」




セシルは付与魔法を覚えながらのんきに言葉を発し。


本を読みながらも気配を探るガロは拍子抜けして。


新たな武器を手に素振りをするリリアは、少し怯えたように。


魔力コントロールを続けるディーは不思議な様子で会話をする。




「静かならいいじゃないか、君たちの練習時間だと思えばいい。ダンジョンの中で静かに過ごせるなんてあることじゃない」



俺は一人でティーセットを用意して、テーブルで優雅にお茶を楽しむ。

最近は、指導と準備の手伝いでゆっくりとお茶を飲む時間も持てなかったが、ティータイムは心を豊かにしてくれる必須時間だ。


何よりも、ジャングルに入ってから余計な異物が混ざり込んでしまったのは想定外と言えるだろう。


ただの冒険者がジャングルを冒険するのなら邪魔するつもりはないが……リリアとセシルにとっては因縁の相手であることがキナ臭い。



ハーフラインはこのことを知っていたのだろうか?それとも偶然か?



「少し課題に向けて練習が必要になるな。時間を稼ぐためにも少々、イタズラをするとしよう」



こちらを警戒しているジャングルのモンスターたちに、少々威圧を放ってこちらに近づかないように結界を施す。


こうして置けばかなりの手練れでなければモンスターたちはリベンジャーズに近づいてこない。



俺の予想では5、6時間ほどの時間の余裕が取れたはずだ。



逆にあちらには……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



【Sideオーボ】



ジャングルに生息するモンスターは何かに追い立てられるように三人の冒険者へと殺到していた。

それこそモンスターパニックに入ったと錯覚するだけのモンスターの群れに囲まれていた。


「くそ!さっきからなんなんだ魔物の数が多すぎるぞ」


「弱い奴が群れやがって!弱くても、ここまで連続で来れば疲れてくるぜ」


「ハァー。もう良いんじゃない?帰ろうよ」



ヘトヘトになりながらなんとかモンスターを退けたB級冒険者パーティーパンサースナッチは、魔物避けのアイテムを使ってなんとか休息を取ることが出来た。



「バカなことをいうな。グレートモンキーの縄張りはすぐそこなんだ。

この休息を終えればすぐに討伐して、帰れば問題ない」


「マジかよ。もう疲れたぜ」


「僕も魔力が尽きたよ。せめて半日は休息しないと厳しい」



二人の言い分はオーボ自身も納得できることなので、いちいち反論する気もおきない。



「ちっ、疲れたのは俺もだ。とりあえずは魔物除けが効くのが5時間はある。その間に食事と睡眠を交代で取るぞ」



リーダーであるオーボが方針を決めると二人は早々に横になって眠りについた。


シーフとマジシャン、そしてナイトのオーボを加えた三人パーティーであるため二人の体力はオーボよりも劣っている。



オーボは二人が眠っている間に荷物から、食事と水分補給を行う。



「くそが、なんで俺がこんな仕事をやらないといけないんだ。それもこれもあの二人をダンジョンに連れて行って手も出せなかったからだ。ついてないぜ。

帰ったら娼館に言って少々無理な注文を聞いてもらうぜ」



サディスティックな笑みを浮かべるオーボは、食事用に保ってきていた干し肉を囓り、ワインで流し込んだ。



「おいっ交代だ!」



二時間ほどで一人を起こして交代を促す。


順番に休息を取り終えるのに5時間を使ったB級冒険者たちは、万全とは言いがたいがそれでもグレートモンキーを早々に討伐して帰宅することを選んだ。


魔物避けが切れると同時に、襲ってくるモンスターに魔法をぶつけて突破口を開く。



「こいつらは無視だ。いくぞ!」



オーボの声で三人はモンスターを無視してグレートモンキーの縄張りへと突撃を仕掛けた。



「はっ!モンスター共もグレートモンキーの縄張りまでは入ってこねぇな」



ジャングル内でも上位に入るグレートモンキーは多種族からすれば警戒しなければいけないモンスターということになる。



「だけどよ。ここからは俺らも気が抜けねぇよ」


「そうだよ。オーボが頼りだよ」



戦闘面においてシーフは頼りにならない。

グレートモンキーに対して、マジシャンの護衛に徹する。

マジシャンは群れで襲ってくるグレートモンキーを牽制してオーボを守る。


そのため主として攻撃を行うのは、ナイトであるオーボ一人と言うことだ。



「任せとけよ。グレートモンキー程度。俺一人で十分だ」



臨時パーティーメンバーを雇って何度か討伐経験がある以上。

問題なく討伐は出来る。

だが、油断をしていい相手でもない。


それぐらいにはB級冒険者としての経験は積んでいる。


三人が警戒しながら進んでいくと、グレートモンキーを見つける。


何やら戦闘を行っているようで、こちらに気づいていない。



「おい、あいつを仕留めろ。今ならお前の魔法で一撃だ」


「うっうん」



こちらに気づいていないグレートモンキーをマジシャンに攻撃させる。


しかし、オーボたちが見ているグレートモンキーは通常のグレートモンキーよりも身体が大きく。


マジシャンがウィンドーカーターを放つと同時にオーボたちへと振り返った。



「ウギャギャギャギャギャ!!!!!!」



雄叫びを上げると共、木の上から一斉にグレートモンキーがオーボ達に降り注いだ。



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あとがき


どうも作者のイコです。


第1回「G’sこえけん」音声化短編コンテスト


に応募する作品を昨日から投稿しました。


【声フェチは願望を叶えたい】といタイトルです。


短編で2万文字以内に終わるショートストーリーですので、よかった読んでみてください。


出来れば、レビューといいねを頂ければ嬉しく思います( ・∀・)


厚かましく生きていく!!!

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