第2話〜謎の虹色の光〜

・ゴマくん……レモン、係の猫A

・無頼様……まっちゃ(若き猫。心優しいうっかりさん)、客A、桃太郎

・兎蛍様……ミカン、係の猫B

・砂漠様……ゴマじい

・くらげ様……N、宿屋の娘、客B


————



N「老猫ろうねこのゴマは、かつて星猫ほしねこ戦隊コスモレンジャーの一員——暁闇の勇者ゴマとして、世界を救ったヒーローである。だがそれはもう昔の話、今はレモン、ミカン、まっちゃの若き猫3兄弟と共に、諸国漫遊しょこくまんゆうの旅をしていた。レモン、ミカンにとっては〝十六菊花じゅうろくきっかしるし〟を取得すべく、老猫ゴマの弟子としての修行を兼ねての旅である。

宿屋で一夜を明かしたゴマ一行。この後、前代未聞の事件が起きようとは、誰も知る由は無かった——」



宿屋の娘「朝食の準備ができました。みなさま、どうぞ食堂へ」


ゴマじい「ほーっほ、お前さん、やっぱ可愛いのう。どうじゃ、この後ワシとデ↓ェ〜↑トしないかのぉ?」


ミカン「もう! ゴマ様、朝っぱらから!」


ゴマじい「あ、痛ぁ〜! これ、ミカンや、引っ張るな! 年寄りを大事にせい!」


レモン「……かつては、現ニャガルタ聖騎士団総帥ルナ様に対しても、同じように引っ張り回していたそうではないですか。因果応報ですぞ、ゴマ様」



N「宿での食事のコースの手配は、まっちゃが担当していた。だが——」



宿屋の娘「極上マグロのモーニングフルコースでございます」


ゴマじい「ふぉーーーー↑↑↑っほっほっ‼︎ マグロ、マグロぢゃああ!」


レモン「な、……⁉︎ これはどういうことだ! おい、まっちゃ!」



N「真っ白なテーブルクロスの上には、マグロの刺身が整然と盛り付けられている。テーブルの周りには宝玉が飾られたイスが4匹分。すでに、まっちゃがご機嫌な笑顔をうかべて座っていた」



まっちゃ「いやぁ〜、こいつはうっかりだぁ。ご馳走を食べたいあまり、最高級のコースを注文しちまったよぉ〜」


レモン「何てことだ……! 予算はどうなってる!」


ミカン「ひぃふぅみぃ……。ふぇぇ、足りるには足りるけど、残高0だよ。また〝うっかりまっちゃ〟が発動したよー……」


ゴマじい「これ、早くせんと鮮度が落ちるではないか! 金など、何とかなるじゃろ。今は目の前のマグロが1番大事じゃ。レモン、ミカンや、はよう席につかんか!」



N「3兄弟の末っ子、まっちゃ。ゴマ一行の心優しきムードメーカーである。戦いを嫌うため、剣士であるレモン、魔導士であるミカンとは違い、戦闘能力は無い。もちろん〝十六菊花の印〟の取得は、とうに諦めている。しょっちゅう、早とちりやドジをやらかすため〝うっかりまっちゃ〟と呼ばれている」



まっちゃ「おいしそう〜! いただきまぁーす!」


レモン「はぁ……いただくとしよう」


ミカン「いただきまーす」


ゴマ「はぁーー↑うみゃうみゃ! うみゃうみゃ! うみゃ……げふぉぉッッ⁉︎」


まっちゃ「ゴ……ゴマ様ぁ〜! 大丈夫ですかぁ⁉︎」


レモン「喉に詰まらせたか……! ミカン、すぐに水を!」


ミカン「たいへんだ、ゴマ様が! ……はい、ゆっくり飲ませてね!」



N「……他の客はみんな、ゴマじいたちの席を物珍しげな目で見ていたのだった」



ゴマじい「……はぁ、はぁ。もう大丈夫じゃ。さて、続きをいただくとするか。……ん?」


まっちゃ「ん? マグロが……ない」


ゴマじい「何じゃと⁉︎ ワシのマグロもないぞい! レモン、勝手に取って食ったじゃろ!」


レモン「な……⁉︎ 私はそのようなことはしておりませぬぞ!」


ミカン「あれ! 僕のぶんのマグロもない!」



N「突然消えた、テーブルの上のマグロ。不審に思い、周りを見渡すゴマじいたち。何と、異変は食堂のあちこちで起きていた」



ミカン「あ! 見た? 今の!」


まっちゃ「見たよぉ! 他のお客さんの料理が……虹色の光の中に消えていったぁ!」


係の猫A「わあああああ! 何だ⁉︎」


係の猫B「どうしたタマ! 何⁉︎ タマが消えた⁉︎」


レモン「……見ましたか? ウェイターのネコも虹色の光の中に消えましたぞ。ゴマ様、……ゴマ様?」


ゴマじい「うみゃうみゃ……マグロうみゃうみゃ」


レモン「ゴマ様‼︎ 一大事ですぞ!」


ゴマじい「ぶふぉっ! これ、食事の邪魔をするでない!」


客A「わああああ!」


客B「きゃあああ! あなた、どこへ消えたの⁉︎」



N「料理だけでなく、周りの客たち、食堂内のインテリア、備品などが次々に、突然現れた虹色の空間に消えていく。——と思ったら今度は」



ゴマじい「うみゃうみゃ……バリッ。ん? んなあああああ‼︎ 何じゃこりゃあ! 誰じゃこんなもん盛り付けたのはぁ! ぶふぉえ! ぐおえええああああゲボゲボゲボゲゲボゲボボゲボゲボ……!」



N「ゴマじいの皿の上にいつの間にか、皿からはみ出るほどの大きさのゴキブリがあったのである。そして、異変は次から次へと起こる」



レモン「おい、これを見ろ!」


まっちゃ「車ぁ! おもちゃ……じゃあないよねぇ?」


ミカン「だってほら、ヒトが乗ってる!」


レモン「な……なにゆえ、ニンゲンがこんなに小さき姿で現れるのだ⁉︎」



N「今度は何と、テーブルの上に虹色の光が現れた直後、そこから猫の手のひらサイズの乗用車が突然現れた。乗用車に乗っている人間たちは、何が起きたか分からず混乱している様子だ。……さらに」



ミカン「あれ見て! 窓の外!」


まっちゃ「な……⁉︎ ぶ、豚さんが3匹……にしちゃあ、大きすぎやしないかぁ⁉︎」



N「宿屋の前に、建物よりも大きな服を着た豚3匹が現れていた。1匹は藁を、1匹は木片を、1匹は巨大なレンガを抱えてながら、地響きを上げて歩き回っている。彼らも、何が起きたか分からない様子だ。……そして」



ミカン「ひぃーーっ! 君、い、いつの間にいたの⁉︎」


桃太郎「……は、はじめまして? 僕も、気付いたらここにいたんだよ。これから鬼退治に行かなきゃいけないのに」



N「今度はミカンの隣の椅子に、桃のマークのある鉢巻を巻いた青年が、いつの間にか座っていた。——一体、何が起きているのだろうか」

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