第13話 エピローグ

 大学を卒業して、俺たちは結婚した。結婚を報告すると、武蔵と柊木はすぐに返事をしてくれた。気恥ずかしさと嬉しさの両方が沸き上がった。


 俺たちは結婚式を挙げないことにした。卒業してからすぐだったから、お金がそもそもないっていうのもあるし、将来のためにお金を少しでも貯めておきたいというものからだ。


 将来のためって具体的には?


 子供のためだ。


 不自由なく食べて、元気に育ってほしい。俺もエリカもそう思っている。


 エリカは看護師として、俺はエンジニアとして、将来の子供のためをモチベーションに毎日仕事に励んでいる。


 だけど、まだ社会人二年目。仕事に少し慣れはじめて、少しずつ仕事が上手く回せるようになり始めたばかりだ。


 お互い、将来のキャリアを考えるとまだ子供は産めないねと話をしていた。三十歳になるまでに子供一人は産みたいと考えているが、育休をとれるかもわからないし、とれたとしても、そのあとのキャリアがどうなるかがわからないから難しい。


 これも働き始めて分かったことだ。働いてみないとわからないことがたくさんある、というのがこの一年間働いて分かった。人生はわからないものだ。


 今日は休日。俺とエリカは料理に励んでいた。


「ほい、できたぞ」


「おいしそう。私のほうもうすぐできるから」


 大学から親元を離れて、俺たちは一緒に生活していた。それから六年が経った。毎日のように自炊しているからかなり料理のスキルは向上したと思う。


「私のほうも完成したよ」


 盛り付けて、テーブルに運ぶ。


「「いただきます」」


 今日のお昼は特製ソースパスタだ。簡単にできるから重宝している。


「やっぱりおいしいね。誰から教わったの?」


「親父がよく作ってたから教えてもらった」


「お義父さんに感謝だね」


 うーん、おいしいと食べてくれている。俺もおいしいものをつくれて一安心だ。そして好きな人に自分の作った料理をおいしく食べてもらうのはやっぱりうれしい。


「「ごちそうさまでした」」


 さくっと洗い物を済ませて、休憩する。


「今日ものんびりだね」


「そうだな。今からどこかに行くか?今日は土曜日だし」


「うーん。今日はのんびりしよ」


「そうか」


 まったりとした空気が部屋に流れる。この空気感がたまらなく俺は好きだ。幸せをかみしめている感覚がする。


「私、シュウと結婚できて幸せ。だからこれからも一緒にいてね」


「俺もエリカと結婚できて幸せだよ」


「私たち両想いだね」


「だな」


 肩に温かい想いを感じた。エリカが眠っていた。幸せそうな寝顔だ。俺もうれしくなる。


 俺も少し昼寝をするか。


 エリカの手を握って、静かに目を閉じた。



 Fin

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