味変スキルがレベルMAXで最強無双~ポーションの味を変え続けて10年。俺を追放したあいつらは、俺がモンスター肉を激ウマのステータスアップ料理に変えてた事を信じない~

喰寝丸太

第1話 追放された

 俺の名前はテイスト。

 味って意味の古語だ。

 孤児だった俺がそう名付けられたのは理由がある。

 味変スキルを持ってたからだ。


 今のステータスはこんなだ。


――――――――――――――――――

名前:テイスト LV3

魔力:26/26


スキル:1/1(MAX)

 味変 LV9(MAX)

――――――――――――――――――


 見て分かると思うが、レベルが低い。

 レベルが低いと色々と利点がある。

 まずスキルレベルが上がり易い。


 先日、味変スキルがやっとカンストした。

 これでやっとレベルを上げる事が出来る。


 俺には関係ないが、新しいスキルも覚えやすい。

 俺のスキル限界は1だから、味変スキルしか覚えられないけどな。


 別に新しく覚えられないのは構わない。

 俺は味変スキルが気に入っている。

 話によれば、俺一人しか持ってないユニークスキルらしい。


 不味い食べ物を美味くできる。

 幸せじゃあないか。

 幼い頃はこれにどれだけ助けられたか。

 不味いクズ肉でも美味くなるんだぜ。

 使わない手はないよな。


 最初はスキルレベルも低かったので、ほんのちょっとしか味が変えられなかった。

 生活が激変したのは6歳の時、医者に拾われてからだ。


 不味い薬を美味く変える。

 ほんのちょっとでも、無いよりはましだ。


 だが、医者は俺のスキルが成長する事を期待した。

 スキルには魔力を使うのだが、医者は惜しげもなく高いマナポーションを買って俺に与えた。

 スキルレベルが3になる8歳の頃には、子供でも医者の薬を嫌がらなくなった。


 スキルレベルは1と2が駆け出しで、3が中堅、4が熟練で、5が英雄だ。

 3はそこそこ使えるレベルだ。


 医者の所で9歳の時に運命的な出会いがあった。

 Sランクパーティ栄光が治療に訪れたのだ。

 この時、俺のスキルレベルは4になっていた。

 美味い薬を味わった彼らは、これは使えると俺をスカウトした。


 そして、10年。

 19歳、現在に至るってわけだ。


 栄光のパーティメンバーも変わった。

 俺をスカウトしたリーダーは代替わりしていない。

 他のメンバーも何人か入れ替わっている。


 現在のメンバーは

 リーダーのジャス。

 イケメンの銀髪で氷の貴公子と呼ばれている。

 年齢は25歳。

 今、一番脂が乗っていると思う。

 武器は大剣を使う。


 盾職のシルド。

 筋肉むきむきの大男だ。

 沈着冷静で状況を見て警告を良く発する。

 30歳だ。

 武器は大盾を使う。


 斥候のスカウ。

 鋭い目つきの女で、長い黒髪をストレートにしてる。

 年齢は20歳。

 武器はレイピアと弓だ。


 魔法使いのマナ。

 金髪で攻撃的な性格。

 年齢は16歳。

 3種類の魔法を使う。


 治癒師のキュアラ。

 茶髪で少しふくよかな感じだ。

 穏やかな性格だ。

 誰にでも優しい。

 年齢は23歳。

 回復魔法を使う。


 これに雑用係の俺を加えた6人が、Sランクパーティ栄光のメンバーだ。


 今日は討伐前のミーティング。


「一つ朗報がある」


 そう、リーダーのジャスが切り出した。


「何よ、早く言いなさい」


 マナが急かす。


「新しいポーションが発売された」


 ジャスが発表。


「討伐が一段と楽になるな」


 とシルド。


「効力も改善されているが、朗報なのはそこじゃない。味が改善された」


 ポーションはそりゃ不味い。

 俺の味変スキルがなければ無理して飲まなきゃならないレベルだ。


「それで、俺はテイストを首にしようと思ってる」


 リーダーのジャスの発言に俺は言葉を失った。

 そりゃあ、ないぜ。

 お前らは、ポーションの味を変えるしかしてないと思っているだろうが、俺は雑用を頑張って来た。

 食事の支度から野営のあれこれ。

 俺がいなくなったら困るだろうが。


「なるほどね。テイストを首にして、新しい雑用係を雇う心算ね」


 と斥候のスカウ。


「収納魔法使いなんてのはどうだ?」

「賛成だ」

「賛成」

「賛成」

「私は反対よ」


「反対はキュアラだけか。いいか、こいつに使っているマナポーションの額は、年間いくらだと思っている。金貨300枚は下らないぞ」

「俺はスキルレベルがカンストした。もうレベルを上げられる」

「上げてどうするんだ。スキルが新たに覚えられないお前は、もう伸びしろが無いんだよ。それなら新しいメンバーを鍛えた方が良い。それに知っているぞ。お前マナポーションを横流ししてただろ。ポーションに掛けるスキルだけじゃ計算が合わないんだよ」


 何に使ったか俺は知っている。

 料理に使ったのだ。

 モンスターの肉は不味いのが多い。

 だが、その分、特殊な効果がある。

 これは俺が苦労して調べた事だ。

 後で本にしようと思って秘密にしてた。


「それは、料理に使ったんだ。モンスターの肉は不味いから。モンスターの肉には特殊な効果があるんだ」

「嘘だな。そんな話は聞いた事がない。なあみんな」


「ないな」

「ないわね」

「あるわけないじゃない」

「ありませんね」


「ほら、みなもこう言っているぞ」

「それはモンスターの肉が激マズだから、スキルを使わないと吐くほど不味いんだ」

「もう良い加減認めろよ」


 パーティメンバーの目は冷たい。

 分かったよ。

 俺の努力はどうでも良いんだな。

 モンスターの肉を料理に使っている場面を誰も見てなかったって事か。

 俺の仕事ぶりなんて欠片も意識にないって事か。

 分かったもういいよ。


「退職金はくれるんだろうな」

「聞いたかみんな。盗人猛々ぬすっとたけだけしいとはこの事だな。いいか装備も置いていくんだ。ギルドの口座もだ。ギルドに犯罪の報告はしとくからな。罰を覚悟しとけよ」

「もういい」


 首になってしまったな。

 おまけにほとんど無一文だ。

 残ったのは財布に僅かなお金。

 こうなったら、どこかの医者の助手にでもなろう。

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