55.明かされた力

 手の中にあったのは、さっき戦った黒い大蛇だった。

 ただし、サイズは両手でつかめる。

 直径は5メートルくらいかだと思う。

 ぱっくり、大きな口を開けている。

 ただし、のどや歯はない。

 どこまでも空洞がつづいている。

「報告どおりだね! 」

 そうだね。

 もう一回手榴弾!

 イヤイヤと左右にふれる、口にねじ込む。


 ドーン!


 できるだけ遠ざけた口から、一回火が吹いた。

 手にかかる衝撃がなくなる。

 黒い大蛇は雨に溶けるように、消えていった。

「なんとかの1つ覚えとは言わないで」

「そんなことは言わないよ。

 これが効果的なんだから」

 報告しないと。

「こちら、ウイークエンダー・ラビット。

 敵ポルタから市街地へつづくルートはつぶした。

 これより、市街地へ向かう」

 安菜が、やってくれた。

 なんか、そういうロボットみたいだな。

「ところで、なんで一緒に叫んでたの?」

 安菜は、あっけらかんと答えた。

「このロボットシリーズは、人の意思に反応して動かせるんでしょ。

 だったら、一緒に動かせると思って」

 ありがたい申し出だね。

 それって、機体にかかる衝撃は、痛みに変換されるから。

 彼女のタフさはあくまで例外です。

 まねしないでね。

「・・・・・・そう言えば、ルルディの魔法炎って、こんなにモロかったっけ?」

 安菜は、分かってる。と言った雰囲気。

「栄養不足なのかな? 」

 そして、指示をだす。

「早く山を下りましょう。

 敵をふみつぶすだけなら、私でもできるでしょう」 

 ・・・・・・では、お言葉に甘えて。

 それがありがたいのかどうか、悩みながら。


 お向かいの山にも、ポルタと黒い大蛇のルートがある。

 そして爆心地があって、パーフェクト朱墨が同じことをしている!

 そうだ、あのあたりは朱墨ちゃんの学校がある!

「あれ、なんだこれ」


 ジャラジャラ ジャラジャラ


 鈴の音が聞こえてきた。

 これは空港で、グロリオススメで聞いた。

 神楽鈴に似た、この音?


 それは、かくれてなかった。 

 街を、それほど大きくないけど、そこにひしめく建物があるはずの場所が、銀色の何かにおおわれてる!?

 鈴の音は、外から空気を震わせて耳にとどく音じゃない。

 ずっとそばから、はーちゃん?

 いえ、ウイークエンダー自体が、巨大な楽器になったみたい。 

「鈴みたいな音。

 これって、MCOじゃないの? 」

 安菜? あんたいつもどこからそんな情報仕入れてるの?

「達美先輩がお店で言いふらしてたの」

 あのおしゃべりネコめ。

 この分だと、シャィニーシャウツ全体に知られてるかもね。

「そんなことより。

 あのMCO、膨らんでない? 」

 そう。

 見入ってる場合じゃない!

「飛ぶよ! 」


 銀色の金属の輝きは、空にとがった形で伸びていく。

 とがりは、二またに分かれた。

 またの内側に、鋭い突起がズラリと並ぶ。

 巨大な口になったんだ。

 こん棒エンジェルスの来た方を向く。

 頭にあたる部分から、ニョキッと2つ、3角形がとびだす。

 猫耳だ・・・・・・よね?

 その顔は、恩人の顔。

 間違えようがない。

「ボルケーナ先輩、だよね」

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