26.初めてのデモ、再び

「そんな無礼なことは、考えておりません!」

 ビックリした!

 飛び上がってしまう、激しい叫び!

「僕は今こそ確信しました!

 やはり、朱墨さまを尊敬しています!」

 叫んだのは、アーリンくん。

 顔はシワクチャ。それでも、笑ってた。

 泣きそうな目で震えて朱墨ちゃんを見つめてる。

「でも、あれ?」

 周りのボンボニエールを改めて見回す。

「これは朱墨さまの力のワケがない。

 もしかして、霊的な力で作られた、ハリボテ?」

 尊敬の念が消えた。

 代わりにおずおずとした不安が現れた。


 その時。

 ボンボニエールたちのモーターが、唸りを上げた!

 間接をひねる者、足をふみ鳴らす者。

 カメラが一斉にアーリンくんを向く。

「装備は仕様書どうりに! 作れ!」

 怒りの合言葉だよ。

 生まれたのは昨日の、ハンターキラーのための。

「装備は仕様書どうりに! 作れ!」

「装備は仕様書どうりに! 作れ!」

 全てのボンボニエールに人がのり、叫んでるの?

 重なる叫びとともに、モーター音がさらにうなる。

 ボンボニエールは、本物なら10トンはある。

 これは四輪駆動の装甲車両としては一番重い方なの。

 その動きが重なり、地面が細かく揺れた。

 ハリボテなんかじゃない!

 一番近くにいたのは、胴体の上にもうひとつ胴体をおいたようなやつだよ。

 上の胴体みたいなのは、前の装甲が左右に開いてく。

 現れたのは、6つのレンズ。

 6連レーザー砲。

 どんな壁でも、2回撃てばボンボニエール1台分の通り穴ができそうな、でっかいやつだよ。

 音が止まったとき、無数の銃口がアーリンくんに向けられていた!

 刃渡りの長いナタ、マチェットも向いてた。

「や、止めなさい!」

 私は、両手を上げて叫んだ。

 手に麦わら帽子をバタバタさせて、少しでも目立つように。

 目は見開いた。

 せめて逃げてないことを示そうと。

 帽子の値段とか、そんなことは構うもんか。

「武器を向けるのは許せない!」

 それを止めさせることだけを考えた。

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