未来からやってきた美女型ロボットに「私を使って性欲を解消して下さい」と言われたんだが?

ゆさま

1.未来からの来訪者

 とあるワンルームマンションの一室にて、スマホをいじりながらゴロゴロとしている。今日は火曜日、休みまでまだ長いな……。やることも無いし寝るか。

 

 照明を消す為に起き上がると、部屋にある机の引き出しが勝手に開いて、中から美女が現れた。


荒川亮あらかわりょうさん、初めまして。私は45年後の未来からやってきた美女型ロボット、レイーシャです」


「あなたは三日後、好意を寄せている職場の先輩を強姦します。それを阻止する為に私がここに転送されました。さあ、私を使用して性欲を解消して下さい」


「へ?」


 自称ロボットのその美女は、整った顔つきに、長く艶やかな髪、抜群のスタイルをしており、胸元が大きく開いたキャミソール、丈の短いスカートにニーソという、ボディラインの美しさが強調された姿をしている。


 どう見ても生身の人間だ。ロボットだとはとても信じられない。


 性欲の解消? こんな綺麗な人にエッチな事をしてもいいのか? 俺の鼓動は跳ね上がり、身体が熱を帯びてくる。


「レイーシャさん? ちょっと、状況が飲み込めないというか……」


「私に敬称は不要です。レイーシャと呼び捨てて下さい」


 目の前の美女は、混乱する俺に微笑みを向ける。 


「未来からって? それに机の引き出しから出てきた? 俺の机の引き出しがタイムマシンにでもなったのか?」


 俺は机に近づいて開いている引き出しを覗き込むと、乱雑にしまわれた文具が入っているだけの特に変わった様子の無い机の引き出しだった。


「時間跳躍をするための空間の歪みは既に収まっているので、今確認したところで普通の机ですよ。タイムマシンは未来からの一方通行です。私が未来に戻る事は出来ません。さあ早く性欲の処理を」


「しかし……」


 目の前の美女がじりじりと迫ってくるので、俺はごくりと生唾を飲み込み後ずさりをする。


「この容姿では、やる気になりませんか? 45年後の未来において、最新かつ最上位機種である私は、外観と声を自由に変化させることが出来ます」


 目の前の美女はそう言うと、職場の先輩であり憧れの人である蓮本美玲はすもとみれいさんの姿に変わった。


「亮君、エッチしよ♡」


 蓮本さんの顔で上目遣いをして、蓮本さんの声でそんなことを言われたら、俺に我慢なんて出来るわけ無かった。


 衝動を抑えきれずに飛びかかって抱き付くと、蓮本さんと同じ香りがした。伝わってくる体温と肌の滑らかな感触が俺の鼓動と呼吸を速くして息苦しいほどだ。


「亮君、慌てないで。私は逃げないよ」


 憧れの人の姿をしているそれは優しく微笑み俺にキスをする。夢なら覚めないで欲しい……。

 

 俺は欲望のまま豊かな胸の谷間に顔をうずめると、心臓の音が聞こえる。本当にロボットなんだろうか? と意識の奥の方で考えるも、憧れの人をこの腕に抱いていているという現状に、俺の思考はほとんど停止していた。




 * * *




 憧れの人の姿をしているそれを必死になってしばらく抱き続けた。溜め込んでいたものを出し切って、落ち着きを取り戻した俺は、元の姿に戻ったレイーシャに問う。


「なんで俺のところに?」


「未来のあなたは蓮本美玲を強姦したことにより、実刑判決を受け服役することになります。刑期を終えて出所するも社会の風当たりは厳しく、最低限の生活をすることすら苦しいほど経済的に困窮しています」


「自身の行いに深く後悔した未来のあなたは、なけなしのお金をはたいて私を購入し、この時代に送りました」


「え、経済的に困窮しているのに最上位機種なんて買えたの?」


「私は中古品です。とある大富豪が私を使用中に死亡してしまった為、事故商品となりジャンクショップで無料同然で買われたようです」


「げ……」


 俺はつい顔を引きつらせるが、レイーシャは微笑みを湛えたまま説明を続ける。


「私の頭部には一辺が5cmの立方体のコアユニットが格納されています。そして、私の身体を構成しているのは数十億個のナノマシンです。自浄機能と自己修復機能がある為、衛生面や機能面になんら問題はありません」


「そういう問題かねぇ……。で、このあと君はどうするの?」


「亮さんが性犯罪を犯さないように性欲の処理をしつつ身の回りの世話をし、蓮本美玲を攻略するのを手伝うように命令を受けています」


 処理って……。でも、まぁ、ありがたい……か。


 目の前の”美女”に「よろしく」と軽く頭を下げると、レイーシャは「よろしくね。亮君♡」と蓮本さんの顔に変身して言う。


「蓮本さんの顔に変身して言うな……」


 レイーシャは元の顔に戻り首を傾げる。


「嫌でしたか?」


「そうじゃなくて、突然憧れの人が目の前に現れると、心臓に悪いよ……」


「分かりました。今後は変身前に確認します」


「そうしてくれると助かる」


「それでは亮さん」


「は、はい?」


「寝不足は体調不良の要因となりますので、そろそろ寝ましょう。私が添い寝してよく眠れるように誘導します。構いませんね?」


「お、おう」


 二人で寝るには少し狭いベッドで二人抱き合いながら横になるが、先程さんざん発散して賢者モードなので安心だ。


 レイーシャを抱いていると、間近で感じる息遣いと鼓動、それに触れ合う肌の温もりがとても心地良い。姿を変えるのを目の当たりにしている以上、普通の人間じゃ無いのは認めざるを得ないが……。


 そんなことを思いながらも、気持ちよく寝入るのだった。

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