第3話 歯車は回る

 まだ齢が十に満たない位の頃


「どうして私と姉上は争うの?

母上はどうして私に王位を継がせたいのかな…

あ、そうだ!

私が王位継承権を放棄すれば

こんな争いをしなくていいのかな姉上!」


幼いながらに考えて出した答えだった。

今でもこれが最善策でないのかと思う事もある。


ただあの時の姉上の表情は

長い年月が経っても覚えている。


……忘れられるはずがない。

驚きと微かに感じた怒り

そして長い沈黙。


元々決して口数の多い人では無かったけれど

負の感情を全面に出す人では無かった。


垣間見えた感情は恐らく

『絶望』と呼ばれる類のものだと思う。

 

そんな姉上の姿を見てからというもの

私は姉上に王位に関する質問を一切口にせず


だからと言って継承権を放棄する事もなく

こうやって毎日を自虐的に過ごしている。

 

コン!…コン!

 

少し間の空いたノックの音が響く。


扉を開けたのは一人のメイドだった。


「アモル様。

十五時に第三会議場『騎士の間』へ

おいで下さい。

騎士様方との会議があります。」


メイドはその言伝のみを伝えて

静かに去って行った。


(私は、行くとも答えていないのだけれど…)


まるで

『拒否権などない』

と言われているかのような気分だった。

 

 約束の時間は十五時。


(でも騎士様の事だ。

一時間以上前から待っている方が多い。

……一緒に話しながら待っても良いかも知れない。)

 

  そう思い、指定された時間までは

一時間以上ある状態で歩いて五分とかからない指定されま場所まで

向かう事にした。

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