第5話 もう本音がダダ漏れなお姉さん

 綾奈さんのキスが心地良い。まるで夢の中にいるような。優しく抱きしめられながら、心から愛おしむようにキスをされる。ついばむようにチュッチュっと。


「あんっ♡ ちゅっ、あむっ、ちゅっ♡ 好きぃ♡ 大好きなのぉ♡ 実験じゃなく、本気で聞いて欲しいの。私はキミのことが好き。私の彼氏になって欲しいの。最初は実験だったのに、どんどんキミのことが好きになっちゃって。もう、大好きな気持ちが止められないのぉ♡」


 えっ! ええっ!

 実験じゃない……これ、綾奈さんの本気告白なのか?


「ねえっ、キミの本心を聞かせて。今日、部屋に呼んだのは、誰にも邪魔されない二人っきりの場所でキミの本心を聞きたいからなの。実験って騙したのはごめんなさい。でも、私がキミを好きなのは本当なの」


 こ、これは、どうすれば……返事しちゃって良いのか?


「私はキミのことが大好き。キミはどうなの? 私のこと、どう思ってるの? 返事を聞かせて。お、お姉さんを、キミの彼女にして欲しいな♡」


 興奮した綾奈さんが、どんどん俺の方に迫ってきて押し倒されてしまう。


「へ、返事を……聞かせてよぉ。あ、あっ、そうだ、実験の器具を付けてるからだよね。これを外せば聞かせてくれるんだよね」


 ガチャガチャ――


 綾奈さんが、心拍数などを計測する実験器具を外してしまう。もう完全に実験ではなく本気モードだ。


「大好きだよ♡ 私の想いは全部キスに込めたから。あれ、私のファーストキスなんだよ。初めては大好きな人としようって、ずっとずっととっておいたの。ねっ、キミの返事を聞かせて」


 実験器具を外したことで、この告白が完全に本気だと分かった。もう俺を止めるものは何も無い。この想いを本気で伝えるだけだ。


「お、俺も、綾奈さんが大好きです。最初は実験だと思って我慢してたけど、何度も会っているうちに、綾奈さんの優しさと、太陽のような笑顔に癒されて、どんどん好きになってしまいました。綾奈さん、大好きです。付き合ってください」


 俺は本気で想いを伝えた。


「はぁぁぁぁ~ん♡ き、き、キミも私が大好きなの? や、やったぁやったぁ、これでホントに恋人同士だよねっ♡ じ、実は……実験にかこつけて、キミを部屋に連れ込んで襲っちゃったから、事案発生とか言われたらどうしようって思ってたのぉ」


「じ、事案……ははっ」


「でもでもぉ、もう恋人同士だから襲っちゃっても良いよねっ♡ だって、私の部屋にきて私の告白を受け入れたんだから。もう君は、お姉さんに何されても文句言えないんだよ♡」


「えっ? ええっ?」


「うふふふっ、ほらほらぁ、ベッドに行こっ♡」


 綾奈さんにベッドに押し倒される。超積極的だ。


「ふふっ、こうして添い寝するのも、キミと始めて会った初日の実験以来だね。あの時のキミ、可愛かったなぁ♡ 私がキミのほっぺにキスしたら、体をビクゥーンってさせちゃってさ」


 あの時と同じように、添い寝されて耳元でささやかれる。


「ホントはね、キスの音は自分の手にして音だけ収録の予定だったんだよ。でも、キミの反応が可愛くて、つい頬にキスしちゃったんだよ。あっ、耳をはむはむしたのも実はアドリブなの」


 アドリブなのかいっ!


「ねえっ、またキスしてあげようか? 耳、弱いんでしょ? ふふっ、お姉さんが、キミの耳に、い~っぱいキスしてあげるねっ♡」


 綾奈さんの熱い息が耳にかかり、それだけでとろけそうな感覚になってしまう。


「ちゅっ、ちゅっ、んっ、好きだよ。大好きっ♡ キミが望むのなら、いっぱいいっぱいキスしてあげるね。お姉さんのキスは、もう一生キミだけのものだよ♡ ちゅっ、ちゅっ――」


 頬や耳にキスの嵐だ。綾奈さんがキスをする度に、俺の体がビクビクと反応してしまう。大好きな人からのキスが、こんなに気持ち良いなんて知らなかった。


「そうだ、耳にキスするのと、耳たぶをはむはむするの、どっちが気持ちいいかな? 実験してみよぉー」


 こんな時にも実験を忘れない綾奈さん。というか、楽しんでいるだけにも見える。


「ほらぁ、ちゅっ、んちゅっ……これとぉ、あむっ、はむはむっ、はむはむっ……んっ、これ。どっちが良かった? ん? なにピクピクしてるのぉ? ちゃんと答えてくれなきゃ実験にならないでしょ♡」


 どっちも気持ち良くて決められない。


「もぉ~っ、ちゃんと答えて。ちゅっ、ちゅぱっ……これとぉ、あ~んっ、はむっはむっ……これだよ。えっ、わざとやってるかって? そんなの、わざとに決まってるじゃない♡ キミが恥ずかしがるのを見たいだけなんだもん」


「ど、どっちも気持ち良いです……」

 俺は我慢できすに両方だと言ってしまった。


「ぬっふっふぅ~っ、どっちも好きなんだぁ♡ キミはエッチだなぁ。でもでもぉ、それじゃ実験にならないよねっ。お仕置きとして、もっと凄いコトしちゃいまーす♡ 耳の中に舌を入れちゃう刑でーす♡ れろっ、ちゅるっ、ちゅっ――」


 うわわわわわーっ!

 尖らせた綾奈さんの下が耳に侵入し、余りの大人な展開にビックリしてしまった。


「えっ、気持ち良過ぎるって? ダメぇ、やめてあげないよ。私の告白をOKしたのはキミなんだよ。お姉さんと付き合うということは、毎日ラブラブにイチャイチャしなきゃならないのっ♡」


 火照った綾奈さんに、ぎゅ~っと抱きしめられた。


「ほらぁ、こうしてギュッギュッてハグしたり、チュッチュってキスしたり、毎日してくれないとイヤなのぉ♡ こんなにキミのこと好きにさせたんだから責任とってよねっ♡」


 ま、毎日するのか……こんなに美人で可愛い綾奈さんと。まるで夢のようだ。


「ねっ、キミからもして♡ そう、ぎゅ~って抱きしめるの。そ、そう、もっと強くぅ。んんあぁ~ん♡ はい、よくできました。次はキスだよ。ほら、ほっぺや耳にしてっ。優しくだよ。んっ……ああっ……あふぁ♡」


 抱き合ったまま、お互いにキスをしたりイチャイチャして時間が過ぎる。大好きな気持ちが昂り、時間を忘れてしまいそうだ。



「え、えっと……今日はここまでだよ。これ以上は、また今度ねっ。えっ、もしかしてキミ……最後まで期待してたのかな? だ、ダメだよ。最後までするのは心の準備がいるのっ。お姉さんには心の準備が必要なのです。だって初めてなんだもん……えっ、何でもない何でもない」


 機材を片付ける綾奈さんが、重大なことに気付いてしまう。


「あっ……あああぁ~っ! 録音したままだったぁ。私の告白やエッチな声が全部収録されちゃってるよぉ」


 どうやら綾奈さんは、実験と収録で俺を部屋に呼んだものの、自分の気持ちが抑えられなくなり告白してしまったそうだ。心拍数などの器具は外したが、収録機材を止めるのを忘れてしまう。つまり、綾奈さんの告白シーンやエッチな声を上げていたのも全て収録済みになってしまったのだ。


「それ、聞いてみましょうよ」

 もう一度、綾奈さんの告白を聞きたい。


「えっ、ダメダメダメダメダメダメダメぇぇーっ! もう一度聞くとか絶対だめぇ~っ! これは私専用の快眠アプリにして、眠る時に聞くことにします。ふふっ、キミがキスされて感じてる声も入っちゃってるからねっ♡」


「そんなぁ……」


「もぉ、そんなにがっかりしないでよぉ。キミと私は恋人同士なんだよ。そんなに聞きたいのならぁ、毎日大好きって言ってあげるからね♡」


 やっぱり太陽みたいに暖かな笑顔で話しかけてくれる綾奈さん。そんな綾奈さんが大好きだ。


「大好きだよ」


 綾奈さんの『大好き』という言葉で、心も体も蕩けてしまいそうだ。ただ、綾奈お姉さんの声がエッチ過ぎて、このアプリが完成しても眠れない気がするのは俺だけだろうか。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る