第20話 18週目

 スマホの着信が鳴って俺は目を覚ました。眠たいし、最初は無視しようと思ったが、その着信が叶汰からであることに気づくと、電話に出ずにはいられなかった。

「もしもし、どうした」

「真結が一人で歩けなくなった、、」

 そう聞いて俺は朝ご飯も食べずに家を飛び出した。

 広崎さんの病状が悪化し、ついに点滴量が1日に必要な塩分量を下回ってしまい、体への影響が今後出てくるであろうことは叶汰から聞いていた。だけど、たった1週間で影響が出てしまうものなのか…だとしたら広崎さんの死は…

 そう思ったところで考えるとのを止めた。今はただひたすらに彼女を思って行路を走った。


 病室に入ると頭を抱える叶汰と目を泣き腫らした広崎さんがいた。

「陽介さん、私…」

 そう言って涙をこぼす広崎さんに俺は何も声をかけてあげられなかった。

「真結は何も言わなくていい」

 叶汰が静かになだめた。しばらくの沈黙の後、俺はやっとのことで口を開いた。

「リハビリとかすれば…また歩けるようになるんじゃ…」

「それは難しい。今足りない栄養分は筋肉から補っているんだ。病状が悪化した以上生きるためには必要なことなんだ」

「そう…なのか…」

 ベッドの横に置かれた車椅子が俺にはとても醜く見えた。

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