第7話

「お?ここだここだ!アナウンス出たから場所の特定に手間が掛かったけど早くついたな。っとお嬢ちゃん隣ごめんねー」


「え?!あ、はい・・・。ってあれ?!周りに人が続々と増えてる?!なんで?!」


困惑しているフィリアの横に楓色をした髪が長く、体格の良い偉丈夫のキャラが立っていた。


「んあー、そうかお嬢ちゃんが今回の新規さんだったのか・・・災難だったなぁ!変なの多いけど良いゲームだから嫌いにならないでほしいんだけどねぇ・・・」


「あ、はい・・・八重桜さんには良くして頂きましたし、友人もプレイしてますのでちょっと驚きましたけどなんとか続けてはいけるとは・・・って、不躾ですいませんが先日運営の放送で映っていた方だったりしますでしょうか?」


「なら良かったよ!新規さん入ってこそのオンラインゲームだからなぁ、おお?そうそう!バッチリ映ってたっしょ!俺はクラン『TIN』の楓ってんだ!よろしくなー!」


「はわわ・・やっぱり!最後部分しか見てませんでしたけど、攻略する姿はそのまま動画かと思いました・・・!私もいつかああなりたいって友達と盛り上がりました!」


「そうかそうか!仲間はいくらいても良いから、エンドで待ってるぜ!っと自己紹介はここらへんで!ここから大事なところなんだよ・・」


「はい!ってそうなんですか?いまいち何が起きてるか分からないのですが・・・」


「そうだよなぁ新規さんは分からんよなぁ。まあ簡単に説明すると今運営が悪質なことをしたプレイヤーに事情聴取とそのまま罰則を言い渡す状態だな。俺らには会話が聞こえないのはプレイヤーの個人情報やプレイの内容、個人の性質の話をしつつ説教あたりだとは・・・八重さんだから事細かに突っ込んでる気がするけどな」


楽しそうに楓はフィリアに説明する。オンラインゲームでいう悪質なプレイヤーを刑務所や監獄といった場所に移送する場合があるが、HOTに関していうとその場に空間を作成し他者からも見える状態にする。これは実際に悪事を働いた結果どうなるかという事を視認させ抑制させる目的と、裁量の加減もプレイヤーから罰する側のやり過ぎかそうでないかの評価をする場合といった様々な意味がある。ただ今回に限ってはそれ以外の目的で集まっている聴衆が多い。なぜなら通常の事情聴取は安全地帯での強制移送で行われ、公開逮捕から公開裁判の流れになっているからである。


「んでもってあの状態になるとログアウト不可になり強制会話モードになってるんだが・・・ってちょうど奴さん気がついたな。めっちゃ焦ってやがる」


「本当だ・・・ログアウト不可ってでもPCとかだったら電源消せばいいのでは?」


怪訝な顔をしてフィリアが質問すると楓はさも面白い様に笑顔で返す。


「お嬢ちゃん忘れたかい?このゲームをプレイする上で必要なものはなんだっけ?」


「え、ASAP製のPCとかスマホとかですけど・・・・?あと学生証とかのIDですね。それがどういった関係が?」


「おや、お嬢ちゃんも良く読んでなかったのかぁ。いかんよ!説明書はしっかりと読まないと!学生に関しては特に、親の認証、学校の認証とかも必要だろ?その中でゲーム内での出来事の責任はそのまま責任者に通達し、その本人の性質を改善する義務を負うっていう一文があるはずだぜ?まあお嬢ちゃんの場合そんなことには絶対ならなさそうだがなガハハハ」


「え・・ぇ・・ええええ・・・・・そんな事になるんですね・・・友達もうちの家族と仲良いからそのまま疑いもなく・・・気をつけなきゃ・・・どうしよう・・・」


「ああ本当にそう思ってるなら大丈夫だぜ!ダメなのはその気持ちを持てない連中だな・・・このゲームは知っての通り現実のトレーニングの意味もある。ゲーム内で社会不適合な発言する連中は現実だってそうだ。それを黙認しない為の措置と思ってくれれば良いさ。それに運営もわざわざこんな馬鹿騒ぎみたいにしてやって刑を執行するっていう重い感じにせず、説教をして立ち直れるようにしてるから、もし仮になんかあったとしてもちゃんと寄り添ってくれるさ!だからキニスンナ!」


「そうなんですね・・・!分かりました。ゲームだからっていう気持ちじゃなくてちゃんと相手がいるっていう気持ちを持ってプレイします!」


「そうそうその意気だ!ガハハハ!さてさて・・・そろそろ動きがありそうだな?」


不安そうなフィリアであったが楓の説明と激励を受けて一転して自分に言い聞かせるように気を引き締めるのだった。そして二人が視線を当の二人へと移す。

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