突き放したところのある文章

※5話までの感想。

 作者と書かれている対象(登場人物)に距離・隔たりを感じる。
 虫かごの中の昆虫の生態を、冷静に書き写しているような文章である。
 そのため、作品世界に読者も必要以上にのめり込まずに、一歩引いて事態を見守ることになる。
 この文体が、作者の作風と非常に相性がよい。

 文章についてもうひとつ書けば、リズムがとてもよいのでうらやましい。

 なお、個別の作品について書けば、「黄昏」のラスト、「金魚」のリズム感、「謎」の不気味さが読みどころ。とくに「金魚」がたいへんよい。