二葉の物語

織青 叶

私の初恋の人

1.私は


私と彼は生まれた日が同じで同じ名前をもらった。

私は二葉(ふたば)で彼が双葉(ふたば)

そしてもう一人 弾一だんいちの三人。

家が隣同士の幼馴染で昔から遊んでいた。

関係が少し変わったのは中学生に入ってからだった。

思春期に入りあまり遊ばなくなった。

帰り道が一緒で登下校がほぼ同じだったけど。

そんなある日…。

「二葉のことが好きです。付き合って下さい!」

弾一から告白された。

でも、

「ごめん。弾一とは付き合えない。」

私は振った。

だって

「私は双葉が好きなの。」

小学生の頃から感じてた違和感。

中学生になって恋だと気づいた。

「そうか。」

「うん ごめん。」

「いや いいよ。」

弾一は笑ってくれた。

「じゃあもう行くね。」

「あぁ。」

私はその場を去った。

………

「二葉 お前の恋は難しいぞ。」

弾一のこの言葉は聞こえなかった。


2.語られたのは

「ヤバいー!」

私は今とてつもなく焦って急いでいた。

話は昨日に遡る。

弾一から告白されて3日後

「お前の恋を手伝うことにした。」

協力者ができた。

そして、

「明日双葉と二人で遊びに行ってこい。」

弾一がセッティングしてくれたのだ。

「なに着てこようかな。」

せっかく掴んだチャンス。

双葉にドキドキさせてやる。

服選びから私は本気を出していた。

「うーん。」

散々悩み気づけは夜も深くなっていた。

「はっ!」

そして気づけば眠ってしまい起きたら待ち合わせ時間ギリギリだった。

そして現在の状況になっていた。

「ふ 双葉!」

「二葉。」

「わわわっ!」

目的地に待ち合わせ時間ギリギリについたことはいいのだが、あまりに急ぎすぎてブレーキが効かずそのまま双葉に突撃してしまった。

「おっと大丈夫か。」

「うん。」

少し鍛えた体。

「おい?」

「はっ。」

少し堪能してしまったが双葉の声に私は我を取り戻し体から離れた。

「お待たせ まった?」

「いや、今来たところだよ。」

髪を整え 完璧な私で聞くと双葉は定型文で答えてくれた。

「それじゃあ いこっか。」

「うん。」

双葉のリードのもと私たちのデートもといお出かけが始まった。

「まずはここ。」

やってきたのは本屋だった。

「さすが双葉 わかってる。」

「だろ。」

私は本が好きだった。

ファンタジーでもミステリーでも恋愛でもジャンルは問わず本を読んでいた。

でも、小さい頃からではなかった。小さい頃は外で遊ぶのが好きな女の子だった。

きっかけは単純。

「おっ双葉の新作 発見!」

「ほんとだ 買うのか?」

「買うよあったり前じゃん。」

好きな人が作家にだった。

ただそれだけのことだった。

「おっこれ面白そうだな。」

「どれどれ?」

そこからたくさんの本を読むようになって私は本を好きになった。

「おっいいじゃん。」

「買うのか?」

「うーん、今日はいいかな。」

「そっか。」

その後も色々なところをみて回り気づけばお昼ごはんの時間になっていた。

「お昼ごはんのどこ行く?」

「ここにしようと思ってるんだ。」

きちんとエスコートしてくれるらしい。

「ここオシャレ。」

やってきたのはオシャレな内装のパスタのお店だった。

パスタが好きな私のテンションは上がりまくりだ。

そういえば双葉はいつも私の好きなものやところに連れていってくれた。

「双葉 好きだよ。」

「僕も好きだよ。」

小さい頃は双葉は私が好きだというと好きだよと言ってくれていた。

けど、年があがるにつれ言われなくなった。

昔はなにも考えずに喜んでたけど、今思うと恥ずかしい。

双葉も同じことを思ったのかもしれない。

「うま!」

中に入り私は海鮮パスタを双葉はカルボナーラを注文した。

「こっちも美味しい。」

「双葉っていつもカルボナーラだよね。」

「いいじゃん 美味しいんだし。」

確かに美味しそう。

「ねぇ。一口交換しない?」

「食べたいのか。」

なんか食いしん坊みたいに言われた気がするが、私は欲望に忠実になる。

「そう食べたいから一口ちょうだい。」

「わかった。」

「やったね。」

私は嬉しい気持ちのまま

「はいあーん。」

自分の海鮮パスタを巻き双葉に差し出す。

「ちょ!」

「なに?一口もらうんだから一口あげるだけだよ。」

なんか双葉慌ててるような?

「覚えとけよ。」

そういって双葉は私からパスタを食べた。

「お返し。」

そういっ双葉も差し出してきた。

「あむ。」

私は普通に食べた。

「おっカルボナーラもおいしい。」

いやぁー満足満足。

「お前ってやつは。」

なんか双葉がいっている気がしたが私にはわからなかった。

「あーん。」

「美味しい!」

隣のカップルが食べさせあいしている。

すげぇいちゃついてるな。

「!」

私のしたことはまさにあれではないかと遅ればせながら気づいた。

「双葉。」

「なんだよ。」

「変態。」

「理不尽!」

ふぅーまた暑くなってきた。

「ここが最後の目的地だ。」

「わぁー!」

お昼ごはんを終えた私たちはひまわり畑にきていた。

「綺麗。」

「ここまであるとすごいな。」

辺り全てがひまわりが咲いている。

「ちょっと休もうか。」

「うん。」

ちょうど近くにベンチがあったのでそこで一休憩。

「楽しかった。」

「それはよかった。」

私の好きなものばかり楽しくないわけがない。

「あのさ双葉。」

「なに?」

少しして私は決心して口を開けた。

「昔から私と双葉と弾一の三人で色々やったよね。」

「そうだな。」

今でも思い出す懐かしい光景。

この場所にも昔きたことがある。

あの時迷子になって大変だったな。

「でも、昔のままじゃいられないんだよね。」

「どうしたんだ?」

双葉が疑問を浮かべる。

「あのね双葉。」

言わなきゃ。

「あのね。」

言うんだ。

「ずっと。」

なのに言葉が出ない。もしこの関係が壊れたら…。

それが恐ろしくて堪らない。

「二葉?」

心配そうな声を出す。

「大丈夫か?」

怖い。

双葉の声が遠くから聞こえるくらい。

「二葉。」

肩を揺さぶられてる。

体から震えが止まらない。

「二葉!」

「!」

急に双葉が抱きついてきた。

「大丈夫だから落ち着いて。」

そして頭を撫でてくれる。

「あっ。」

言葉は安心をくれた。

気づけば震えが止まっていた。

「落ち着いたか?」

体から離れて頭を撫でてくれる。

「うんありがと。」

「悪かった。落ち着かせるためとはいえ抱きついて。」

どうやら少し罪悪感があるらしい。

「べつにいいよ双葉だし。」

いつもの私にもどってきた。

今なら言える気がする。

「ねぇ双葉?」

「なんだ。」

「ひまわりの花言葉ってわかる?」

「うーん。」

双葉は考え始めた。

「小説家なんだから知っといた方がいいよ。」

まぁ私もネットで知っただけなんだけどね。

「降参だ答えを教えてくれ。」

双葉は参ったとポーズを取る。

「ひまわりの花言葉はね あなただけを見つめる だよ。」

私はさらに続ける。

「双葉 私ずっと双葉のことみてたよ。」

幼馴染みとしてずっと、

「でも、これからずっと近くでみていたい。」

幼馴染みとしてじゃなくてもっと隣で、

「双葉のことが好きです。私の恋人になってください。」

いった。夕日をバックにしようかと思ったけどせっかくだからひまわりをバックに私はいった。私が見てることと勇気の朱色が隠せるしね。

「返事を聞かせてほしい。」

「……。」

「……。」

二人の間に少しの間の沈黙が訪れる。

「おれも。」

双葉が口を空ける。

「二葉のこと好きだよ。

「でも……ごめん。」

ごめん そう言われた私は戸惑った。

「な なんでよ。」

「今までずっと黙ってたことがある。」

次の言葉は私にとって衝撃な出来事だった。

「俺には許嫁がいるんだ 親同士で決められた相手が。」

許嫁 この言葉を聞いたとき頭が真っ白になった。

ただわかることは私は双葉と付き合えないってことだけ。

「そうなんだね。」

言葉を出せただけ私はえらいって褒めれる。

「今日はもう帰ろう。」

「うん。」

私たちは気まずさと心苦しさ入り交じる中帰路についた。

「二葉。」

最後に双葉がいっていた。

「僕のことを嫌いになってもいいから小説読んでいてくれ。」

何様だと思うけど、鈍感な双葉なりの優しさなんだと後になると思う。

「ただいま。」

私は自分の部屋にはいる。

「!」

今までよく頑張ったと思う。

帰り道 ずっとずっと我慢してたから。

「痛い いたい いたいよ。」

心が痛い。

今になって弾一の気持ちがわかる。

人を好きなることの痛みに好きな人に振られる痛みに。

「弾一はすごいや。」

これだけの痛みを抱えたはずなのに弾一は私のことを手伝ってくれるっていった。

どれだけつらかったんだろう。

涙が溢れる 鼻もいたくなってきた。

「!」

声も出せず私は泣き続けた。

そしていつの間にか眠っていて起きたら目がまだ赤かった。

赤みを消した私は弾一にことの顛末を話した。

「あいつ なにが小説読んでいてくれだ!かっこつけすぎだ!」

って怒ってた。

そして、

「黙っててすまなかった。」

許嫁がいたことを隠していたことを謝ってくれた。

「私を悲しませないようにだよね。」

「それもある。」

「?」

「ぶっちゃけ。傷心状態なら付き合えるかなとか思ってた。」

再度謝ってきた。

「別にいいよ。」

きっと私が反対なら同じことしてたと思う。

それにきちんと真実伝えてくれたから。

「平気か?」

「えっ?」

少しの沈黙のあと言われてビックリした。

「うん 平気だよ。」

「泣いていいぞ。」

あれ?おかしいな。

さっき散々泣いたはずなのに。

涙がまた……。

改めて思う。

私は双葉のことが好きだったってことが。

そして私は久しぶりに人前で泣いた。

できるだけ我慢してきたのに。

「おもいっきり泣いていいぞ。」

「うん。」

…………………

あの日から5年後

「おめでとう!」

「おめでとう!」

結婚式当日。

少し離れた丘の上からでも祝福の声と鐘の音が聞こえる。

「あーあ。結局双葉結婚したか。」

今日は双葉と許嫁との結婚式だった。

「うーん!」

少し伸びをする。

「ありがとう。」

誰にも聞こえてない場所で一言私は呟く。

ずっと大好きだったよ。

私の初恋の人








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