第27話 恋の終わり、逃げる僕

 一時間目終わり。


「高田さーん」

「フン」

「た、高田さん? ちょっと無視しないでよ」


 三時間目終わり。


「いや〜さっきのソフトボール(体育)は凄かったね〜。まさか高田さんの打ったボールが、サッカーで素早く動いている僕の顔を目掛けて飛んでくるなんてさ」

「フン」

「いや『フン』じゃなくて。あれ絶対狙ってたよね? だってあの後5回ぐらい当てられたんですけ……ちょっとどこ行くんですか! おーい!」


 昼休み。


「高田さん! 一緒にご飯食べぶばっ⁈」

「うるさい!」


 とまぁ見事に高田さんから拒絶され、放課後になり、話は前回の冒頭に戻るのだった。



※※※



「そもそもおかしいだろ! 佐々木が高田に嫌われたからって何で玉砕覚悟で告白しなくちゃならないんだよ!」

「それは早く付き合って、僕が今までの行動は畑中くんと高田さんをくっ付ける為というのを説明して欲しいからだ!」

「はぁ⁈」


 僕がこのまま嫌われたままでは、今後不良に絡まれた時、高田さんを頼る事ができない。何とか友達として仲直りしないと!


「ってかお前本当に高田の事嫌いなのか?」

「え?」

「嫌いだったらこんなにがっついて仲直りしようとしねーだろ。やっぱり幼なじみってのがあるから好きになってるんじゃ」

「違う!」


 またこれか。世間というのはすぐに幼なじみというだけで恋愛に絡めてくる。僕は当然高田さんのような破壊神と恋愛する気は全くない。僕が彼女と完全に離れたくないのは力の権力だけ。


「と、とにかく! これは君にとってもチャンスなんだよ」

「チャンス?」

「手短に話すと高田さんは僕が好きだった」

「え?」

「しかし今まで僕が素っ気ない態度をとっていた事により、今回限界に達した」

「ちょっと待て。初っ端からびっくりなんだけ」

「そこで」

「話を聞けぇぇぇ!!」

「現在高田さんは僕と恋愛に発展しない事に落ち込み、諦めた状況。言わば失恋ガールという訳さ」

「つまりあれか? 俺は相手が別に好きな人がいるのにも関わらず告白しろってか! 確実に無理じゃん! 無理ゲーじゃん‼︎」

「無理でも何でも行こう! そしたらきっと……何かが変わるはずです」

「何で本◯圭佑のジャンケンで負けた時に聞く話し方?! っておい?!」


 強引に畑中くんを高田さんがいる教室へと入れ、僕はすかさず廊下の窓から姿が見えないよう壁に耳を当て、様子を伺う。


「あなた昨日ハルといた……禿げ中?」

「畑中です」


 高田さんは畑中くんの登場に少し警戒している。一方畑中くんは僕といるときだけ見せるM精神は出せていないようだ。そんな事じゃあ高田さんと張り合おうなんざ千年無理だぞ! 畑中くん!


「ハルに何か言われて来たの?」

「お、俺が高田と話したいって佐々木に協力してもらったんだ」

「あなたが?」

「う、うん」


 かーダメだな。言葉に『あ』とか言葉を挟むなんざぁ陰キャみたいだぞ! それほど緊張しているというのは分かるが……まぁ僕も人のことは言えないか。


「じゃあ聞くけど、アタシがなんでここに来ているのか分かる?」

「え?」


 現在進行形で、僕は高田さんと話すことがままならない状況。謝ってもいつもチョロい高田さんには珍しく許してはくれない。そんな中考え付いたのは、


「……ハルがゴリラの写真をひたすら送ってきた上馬鹿だのアホだの小学生レベルの悪口を送ってきたからよ」

「ああ、授業が終わったと同時に佐々木が走り出したのはそういうことか」


 逆の発想で、高田さんを更に怒らせてみたのだ。僕はもしかしたら天才なのかもしれないが、今日の高田さんは無言で追いかけてきてめっちゃ怖かった。寿命を縮めるので、こんなこと二度するもんか。


「教室に追い詰めたと思ったらこの置き手紙。『高田さんに話がある』って書いてたから大人しく待っていたけど……ハルじゃなかったのね」


 高田さんの様子は少し悲しげな声だ。高田さんの方がまともに話してくれないからこうしてくどいやり方をしているのに。


「……ご、ごめん」

「別にいいわよ。あっちはアタシと仲良くしたくないのは分かったしね。あの感じだと……ハルはまだ昔の事は忘れてるから仕方ないわよ」


 昔の事? よく覚えている。高田さんに首を絞められたり、高田さんに殴り蹴られたり、持ってた5つで合体するロボットを腕一本になるまで壊されたり……鮮明に覚えてるのですが?


「アタシも最近思うことが増えてきたし、このまま平行線続けてもハルに記憶が戻るわけじゃない。だから……」


 記憶が戻る? それ逆じゃね? 明らかに被害者と加害者で認識が食い違ってるだけなんですけど!


「……」

「あっ、ごめんごめん。それではたな……はた……はだか?」

「畑中です!」


 はだかくんの事を完全に置き去りにしていたことに気が付いたようだ。しかし名前を何度も間違えられるのは可哀そうだ。


「アタシに何の用?」

「……実は!」


 だかついに、彼の告白が実行されようと!


「ごめんなさい!」


 ……した矢先、即振られてしまった。


「な、何で?」

「……他に好きな人がいるから」

「……そ、そっか。そうだよねー。あははは」


 畑中くん。君はよく頑張ったよ。あの破壊神に告白しようとする勇気も凄いが、好きな人に振られても気丈に振る舞うその姿は尊敬する。


「あっ! 俺、ちょっとぶっ殺さないといけない奴できたからちょっと外に出るよ。今日は来てくれてありがとう!」


 だからと言って、僕の方に鬼のような視線を向けるのは良くないと思う。


「佐々木ぃぃぃぃ!!」

「僕は助言しただけだもん!」


 結局、畑中くんとは良き友になれず、追い回される羽目に。全く、高田さんもそろそろ他の男を見つければいいのに!


「……ハルの馬鹿」

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