ヴィータのパンチ気持ちよすぎだろ!~S級勇者パーティから追放されたハズレスキルの拳聖が実は最強だった件。SSS級魔王パーティに誘われたので楽しく暮らします。人類は滅亡するけど今更謝ってももう遅いです~

ライキリト⚡

◇1.追放

001:最強の男、なぜかパーティを追放される①

「ヴィータ、お前は勇者パーティから追放だ」


「断る」


「断るな!!!!」


 とある人間の国、その冒険者ギルドと呼ばれる場所に併設された酒場の一角でそんなやり取りがあった。

 話の中心にいるのはヴィータと呼ばれる黒髪の少年である。


 そしてそのヴィータを囲むように立っているのは『運命の絆』ディスティニーナイツという冒険者パーティの面々。

 Sランク勇者パーティとして人類の最高戦力とも呼ばれている冒険者たちであり、ヴィータの仲間でもある。


「ちょっとヴィータ、アンタ自分の立場わかってんの!? ヴィータの分際ぶんざいでクリム様に逆らうんじゃないよ!!」


 いきなりの追放宣言を当然ながら却下したヴィータに食ってかかったのは水の勇者、オリバ。

 水の魔法剣の使い手で、多くの技で戦局をコントロールするパーティの頭脳を自称する水属性なのにダイナマイトボディな剣士である。


「そうよそうよ! 大人しく追放されなさいよ!!」


 そんなオリバに抱き着きながら便乗するのは風の勇者、アイリ。

 遠距離攻撃を得意とする風の魔法剣の使い手であり、主に追撃を担当するパーティの眼を担っている。

 そしてオリバ大好き娘でもある百合百合な少女もまたオリバに負けず劣らずの爆乳な剣士である。


「死ね!!!!」


 最後にドストレートな言葉の暴力を全力投球してくるのは木の勇者、キキー。

 このロリ幼女はパーティで唯一のツルペタ娘であり、そして木の魔法剣の使い手でもありパーティで唯一の回復スキルの使い手なのだが……性格はバーサーカーのそれである。


 とても語彙が少ないのだ。

 なぜか特にヴィータに対しては。


「そういうワケだ。満場一致という事で、お前が反抗してもムダなんだよ。お前は追放されるんだ」


 最後にみんなの意見をまとめるように前にヴィータの前に歩み出たのは火の勇者、クリム。

 Sランク勇者パーティ『運命の絆』のリーダーであり金髪碧眼のイケメン勇者である。


 そしてクリムは攻撃特化と言われる珍しい剣、火の魔法剣の使い手でもある。

 その高い攻撃力からパーティのメインアタッカーを担っているギルドでもトップランクの実力者だ。


「いや、理由がわからん」


 そして今まさに追放されているこの少年は黄金の勇者、ヴィータ。


 この『運命の絆』の5人は人類が誇る最強の勇者たちであり、人類の四天王と呼ばれて称賛を浴びていた。


「なんだと!? まだそんな態度を取るのか!? ずっと言っているだろう、原因はお前の武器だよ!!」


「これか?」


 そう言ってヴィータは拳を突き出した。

 何も装備していないただの素手に、ビクッとクリムたちの体が跳ねる。

 ヴィータの目の前にいたクリムは無意識に一歩、後ずさりをするほどであった。


 それもそのハズである。

 クリムたちは誰よりもその危険性を知っている。

 彼らはヴィータが何気なく振り上げたその拳が、これまでにあらゆるモンスターを葬っていくのを何度も見てきたのだから。


「そ、そうだ……! 落選者なんて存在はSランク勇者パーティに相応しくないんだよ!!」


 この世界の人類は10歳になると魔法剣と呼ばれる神からの加護が与えられる。


 それはその名前の通り魔法の力を持った剣だ。

 魔法剣は与えられた者の体の一部となって本人の意思だけで自由に出したり消したりできるその人間固有の武器となる。

 そして人類を脅かすモンスターたちを倒せる強力な武器でもあるのだ。


 魔法剣の強さには個体差があり、様々な属性を持つ。

 中には戦闘向きではない剣もあるし、戦闘向きなのに能力が低くて戦えない剣も存在する。


 だが、何かしらの力を持った魔法剣が誰にでも与えられるのだ。

 なのに極めて珍しいことではあるが、たまに剣を与えられない者がいる。


 それがヴィータだった。

 ヴィータは魔法剣に選ばれなかった落選者なのである。


 だからヴィータは剣士ではない。

 この世界では極めて珍しい格闘家の勇者である。

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