野菜転生・死んで転生先はいつもベジタブル

羽弦トリス

第1話あの世

おれは、子供の時分から弱い者を助ける性格だった。この高校に赴任してきてからは、生徒の声を聞き、問題を解決してきた。

赴任3年後からは副担から担任に変わり、更に放課後に時間を作り生徒と接し活動した。

生徒指導の角田はおれのやり方が気に食わない様子で、いちゃもんを付けてきたが、生まれつきの身長と極真空手のお陰で、角田の襟首を掴み、腕を捻り上げるとそれ以来角田は何も言わなくなった。

まだ、27の若造なので女性には滅法弱かった。

彼女いない歴5年だ。大学生までは、ひとみと付き合っていたが、ひとみは就職が決まると九州のど田舎の農家になった。

水耕栽培の技術者として、働いている。

おれは、名古屋にとどまり高校の数学教師として人生の軌道に乗った。否、乗ったハズだった。


いつもの朝。自宅から徒歩で学校に向かっていると、横断歩道にうちの学校の生徒が数人立っていた。

「おはよう、何かあった?」

「おはようございます。土屋先生、交差点の真ん中に仔猫がいるんです。その子猫足をケガしたらしく動けないんです」

おれは、気付いたら行動していた。交差点の真ん中に行き交う車を停めて、仔猫を抱いた。生きている。

横断歩道に戻ろうとした時だ。猛スピードで大型バイクがおれに向かって突っ込んできた。

とっさに、仔猫を先生に投げ渡しおれは大型バイクと衝突したのであった。


気付くと、白い布団の中にいた。病院だろうか?

誰もいない。広いフロワに1つだけベッドがあり、そのベッドで寝ていたのだ。

「誰かいませんか~」

と、声を出すと見るからにハレンチな姿の女性が部屋に現れた。胸を強調し、ミニスカートだ。

「ここはハプニングバーですか?」

と、笑える質問をすると女は、

「ここは、俗にいうあの世ですよ。あなたは、今朝、大型バイクに跳ねられて即死したんです」

おれは、そりゃそうだと納得した。証拠を見せろって言ったところでどうする?この女性はおれの死んだ状況を伝えるだけだろう。

「土屋さん。あなた、とても素晴らしい教師だったんですね。みんな泣いています。仔猫は、生徒の1人が面倒見るみたいですよ」

「それなら、いいや」

「土屋さん。あなたは、大魔王様に裁きを受けてもらいます。それで生まれ代わります。ここに歯ブラシと髭剃りなど有りますんで、まずはお風呂で清めて下さい」

そう言うと、女は「あの世温泉物語」に連れて行き着替えを渡し、

「では、1時間後、迎えに参ります」

女は去って行った。

「あの世温泉物語」って、あそこのパクリじゃねえか!

おれは、風呂に浸かった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る