【絵本】魔王の命日と誕生日。

 昔々、大昔から、魔王の呪いを掛けられた魔王が居ました。

 いつ生まれたのかも、名前も、誰も知りません。


 魔王は不老不死ですが、眠る事も、食べる事も出来ません。

 だから楽しい夢も見ないし、美味しいごはんの味も知りません。


 そして悪い子だと常にイジメられているので、常に誰かの為に何かをしています。


 誰かが捨てたゴミを拾い、動物を拾い、子供を拾って面倒を見たり。

 誰かがケンカをしていたら仲裁に行ったり、時には怖がられない様に引き籠ったり、実験の為に病院へ体を貸し出したり。


 ですが、魔王だからと、どんなに良い事をしても褒めては貰えません。

 どんなに良い事をしても、良い事は魔王をイジメる人間の手柄に、悪い事は全て魔王のせいになります。


 けれども、誰も魔王を幸せにはしてくれません。

 そして魔王も、魔王だからと幸せになろうとはしませんでした。


 何故、どうして?

 それは魔王だから。


 人々はそんな風に思うだけで、誰も魔王を救おうとは思いませんでした。


 そうして300年が経った頃。

 やっと魔王にも友達が出来ました。


 ですが人間の寿命は短いので、直ぐに魔王は1人になりました。


 それから100年。

 魔王はどうして魔王なのか、誰も疑問を持たないまま100年が経ち。


 今度は疑問を持ってもどうする事も出来無いので、人々は考える事をやめ、更に100年が経ちました。


 そんな時、流れ星が1つ落ちました。


 魔王の願いが叶います様に。

 魔王に育てられた双子が願ったからなのか、世界に新しい命が1つ、生まれました。


 そして生まれた子は考えました。

 魔王は何故、魔王なのか、どうして魔王なのか。

 魔王とは何なのかを考えました。


 そして魔王の為、双子の為、世界の為。

 その子は魔王を人間にする事にしました。


 それからがさぁ大変、どうしたら魔王は人間になれるかを考えて、方法を調べ始めました。

 お勉強が良く出来る大人に話を聞いたり、とても心優しい大人から話を聞いたりして、答えかも知れない方法に辿り着きました。


 ですが、今まで誰もした事が無いので、成功するか失敗するかも分かりません。


 それでも、その子は魔王が人間になりたい心を信じて、試してみる事になりました。


 魔王に新しい体と名前、そして誕生日と居場所をプレゼントしました。


 するとどうでしょう、魔王は消え、そこには新しく生まれ変わった人間が居るだけとなりました。


 そして元魔王は、新しく命をくれた子の為に。

 その子は元魔王と双子と世界の為に、その世界で生きる事にしました。


 おしまい。

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