第5話

ある日、隣のデスクの大山公太が

[おい、松田、横田の事どう

思う?]

[どう?って同期だよ。]

[それだけ?]

[それだけ?って何?]

[横田、松田の事好きみたいなんだ

どう?付き合ってみない?]

[それは無いね。]

会社の廊下で横田に会う。

(大山が変な事、言うから意識

しちゃうじゃん!)

すると

[松田さん。]

と言われ壁際に連れて行かれる。

そして壁をドンと

(あ~これが流行ってた壁ドンだ!)

[松田さん俺じゃ駄目なの?大山に

聞いた。]

[うん。]

[どうして?]

そこに長瀬が、森友さん達とやって

来る。

(ヤバい!この状況は!)

すると185センチ有る長瀬は横田の

腕をヒョイと持ち上げて

[俺のチビに、何してんだよ!]

と一言。

[すみません。]

と横田は逃げる様に去って行った。

[チビ、お前な~いつまでも子犬

みたいに、してるからあーなるん

だよ!ボケ!]

と言って頭を軽く叩いて行ってしまった。

(私、子犬みたいかな?)

その頃、長瀬は森友達に、

冷やかされていた。

[長瀬、俺のチビ?]

[やっぱり夢ちゃん可愛いいんだろ?]

[とうとう、会社1番のモテ男も

年貢の納め時か?]

笑う3人。

1人、ふて腐れる長瀬。

久々のランチ夢は歩美達に聞いて

みた。

[ねぇ、私って子犬みたい?]

[どうした?]

[長瀬さんが子犬みたいだって

言うけど分からない!]

[そうだね、夢の、そのあどけない

表情とか歩き方が見てると、そう

思うね!]

[歩き方?]

[うん、トコトコ子犬が歩くみたいに

歩いてるよ!]

[え~私は、さっそうと歩い…]

[無い、無い。]

と遮られる。

みんな笑ってる。

(そうか、歩き方か!)

夢は背筋を伸ばし、少し大股で自分

なりに、さっそうと歩いていた。

すると長瀬が

[チビ、何かの大会に出るの?]

[どうしてですか?]

[いや、変な歩き方してたから!]

(変な?さっそうとじゃ無いんだ?)

夢は営業先でOL達の歩き方を見てた。

[松田さん、それで、この商品は

いつ頃、納入出来ますか?]

[あっ、はい!来週には納入

出来ます。]

[何か気になる事でも?]

[いや、みなさんの歩く姿が

カッコいいな、と思いまして!

申し訳ございません。仕事に

関係の無い話で!]

[わが社では歩き方、話し方

全て教育してるので、そう言って

くれると嬉しいですな~]

[そうなんですか?凄いですね!]

そう言って営業先を後にする夢。

(教育されてるんだ、羨ましい!)

その夜、夢は携帯で歩き方を検索

して部屋で練習をしていた。

頭に本を乗せて歩く…バタッと

本が落ちる。

[チビ!何やってんだよ!]

[いや、ちょっとレッスンを。]

[何の?]

[歩き方の。]

[ボケ!今更やって、どうするんだよ!

ご飯だぞ!]

[は~い、いただきます。今日も

美味しいですね!]

[そりゃあ、そうだろう?]

と笑う2人。

こんな毎日を過ごしていた。

同期の歩美、清香、友美はもう

結婚していた。

京香が今月、結婚する。

(わ~独身、私1人だよ!京香の

結婚式は何を着て行こうかな?

そうだ貸衣装屋さんに行ってみよう!)

[長瀬さん?今日ちょっと出掛けて

来ます。]

[何処に?]

[京香の結婚式に着て行くドレスを

貸衣装屋さんに見に行こうと思って。]

[じゃ、俺も行くよ!]

(え~っ!)

貸衣装屋さんに着いた2人。

夢は最初にロングドレスを試着

した。

すると

[チビ、お前チビだからロングは

止めとけ、七五三みたいだぞ!]

[は~い。]

落ち込む夢。

そしてなん着か、試着して、やっと

決まった。

[良かった、これで行ける。]

[チビ、今日、せっかく出て来た

事だし、ご飯でも食べて帰るか?]

(又、定食屋かよ!)

[そうですね。]

(おっ?定食屋じゃ無い、イタリアだ!

やったー)

[好きな物、頼めよ!]

[俺、カニのクリームパスタ。]

[私、マルゲリータとラテで

お願いします。]

[美味しいですね!]

[俺のパスタも美味しいぞ!

チビ、一口食うか?はい!]

と言うとフォークで私の口に

運んでくれた。

(恥ずかしい~)

[長瀬さん私のビザも、どうぞ?]

[お~!]

楽しい食事を満喫して帰る。

京香の婚礼の日

[じゃあ行って来ます。]

[チビ、似合ってるぞ!]

[ありがとうございます。]

(京香、キレイだな~いいな?

結婚式って。)

そして、花嫁がブーケを投げる。

みんなが集まって来る。

スポッ!

(えっ!)

ブーケは夢の手の中に飛んで来た。

京香が

[次は夢の番だね!]

[ハハハ、相手が居ないよ!]

[長瀬さんが居るじゃん!

頑張れ!]

と言って行ってしまった。

(長瀬さんは私の飼い主だから

お婿さんじゃ無いの!)

[ただいま。]

[おかえり、チビ、どうだった?

何それ?]

[あ~京香が投げたブーケが私に

飛んで来たの!]

[そうかぁ~じゃあ次はチビの番

だな?]

[でも相手が…]

(チビ、お前、相当ニブイカ?

やっぱりボケ!だな!)

[よく見ろよ!案外、近くに

居るかもな!]

[そうですかね~]

(こいつに、付ける薬は無い!)

[疲れただろう?風呂入って早く

寝ろ!]

[は~い。]

そう言う、長瀬の同期も、みんな

結婚していた。

会社1番のイケメン、キャリアの

長瀬だけがフリーだった。

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