もしもスマホが泣くならば

大守アロイ

第1話

僕のスマホは、スマートフォン機能を持つ、アンドロイドロボットだった。名前はスマホさんと自称していた。

「カケルさん。高校へのご入学、おめでとうございます」

 入学式当日。そう言って、スマホさんは僕へおじぎした。物心ついたころから、僕は彼女と暮らしていた。スマホさんの緑と赤のオッドアイや、青色の長髪は、アンドロイドである証拠だ。スマホだから、右耳部分にはブレードアンテナ、左耳部分には小さなインカムを装備している。長く淡いパステルブルーの髪を、今日はセーラー服に合わせてか、高く結い上げてポニーテールにしている。ちょっと釣り目の大きな瞳と、はっきりした鼻筋を持ったスマホさんは、僕よりやや背が高い。

「ありがとうスマホさん。それで、十時から入学式らしいけれど、どこに行けばいいんだろう」

 事前に貰っていたプリントには集合場所が書いていない。僕は不思議に思って首を傾げる。けれど困ることはなにもない。スマホさんが教えてくれるだろうから。

「高校のホームページによると、第二体育館が集合場所ですね。マップアプリを起動、エスコートします」

 スマホさんの手のひらの上に、ホログラムの窓枠が浮かぶ。スマホさんはモニターやタッチパネルを装備していない。その代わりとなるのが、このホログラムウィンドウだった。ウィンドウに映る学校の地図を頼りにして、僕は体育館へたどり着けた。『特殊科学高等学校』の入学式に間に合った僕は、自分の座席から、父兄席のスマホさんへ手を振った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る