13 鍛冶

 この後、鶏の卵、食パン、ハムを儲かったお金でたくさん買った。

 サンドイッチは自分たちの分を4つだけ残してある。


 また噴水広場の空いてる場所でサンドイッチの製造に励んだ。


「ふふふ、僕はサンドイッチ大王だ」

「なにそれ? 可愛い」

「ふぇ? 可愛い? 違うよ、かっこいい!」

「えー。ワイちゃんはいつだって可愛いんだからねっ」

「うぅ」


 まあいいんだ。




 さて、もうお忘れかもしれないが、ちょっと前に採掘をしたと思う。

 『鉄鉱石』と『小石』をかなりの数入手した。


 もちろん鍛冶をしようと思う。


 ファンタジーRPGでは鍛冶で武器を作るのが、定番な気がするもんね。


「ということで便利ちゃんのリズ先生に聞きたいと思います」

「はい、リズ先生です。便利ちゃんって呼ぶのはやめてね」

「うん。では先生、鍛冶がしたいです」

「メニューに普通にあるわよね」

「どれどれ、うん、ある……」


 なるほどメインメニュー見ればいいのか!

 思い付きそうで思い付かなかった。

 メニューから『鍛冶』を実行、出てきた画面で『鍛造』を選んでっと……


『炉がありません』


 世は無情なり。


 そうだよね。鍛冶なら炉が必要だよね。


「露店っ、露店行ってくる」

「あはいはい、私も行く」


 二人で露店街に急いで行く。


 急いでいても、一通り見て回らないと、高い商品を買ったら損な気分になってしまう。


 ちらっちらっして、炉を探す。


 あったああ。『初級携帯炉』15,000G。

 うみょーん。ちょっと高くありません?


 探すぞ。もっと安いのを。


「見つけたっ」


 12,000G。ちょっと安くなったけど、もっと安くならないのおお。


「これください」

「まだ全部見てないけど、いいの?」

「いい、これ買うっ」

「まあいっか。お金あるもんね」

「うんっ」


「まいど、ご購入ありがとうございます」

「はい。ありがとうございました」


 初級携帯炉を買った。


「あお客さん、初めて?」

「うんっ」

「剣を打つには、もちろんハンマーもいるけど、買う?」

「買う買うっ、ありがとう」


 ハンマーも買いましたっ、これで全部かな、かなかな。


「これでいい?」

「いいはずだけど」

「よっし、噴水広場へ、れっつごー」


 炉を買って急いで広場に戻る。

 この辺で一番近い空き地は噴水広場なのだ。


 携帯炉も魔道具で、コークスとかは要らないようだ。

 魔石が必要で消耗品となっている。

 これは中古で魔石(76/100)って表記があるから、まだそこそこ使える。


 炉を地面に設置、ボタンで火を入れる。

 メニューが既に表示されているから『鉄鉱石』を選んで『インゴット作成』だあ。


「炉に鉄鉱石入れて」

「はーい」


 指示通り、炉に鉄鉱石15個を投入する。


 しばらく経ったら下の出口を開ける。

 するとチョコレートみたいに入れ物に溶けた鉄が出てきて溜まってくる。


「おおすごい。明るくて、なんかすごい」

「語彙力ぅ」

「いいの!」


 リゼちゃんに突っ込まれるも、いいんだもん。


 そしてすぐに冷えてきた。この辺はゲームだ。


「できました。『鉄のインゴット』で~す」

「ぱちぱちぱち」


 リゼちゃんに褒められた。


「では本番行きます」

「はーい。きゃあ、ワイちゃんかっこいい」

「やった。かっこいい、いただきました」


 メニューから『武器製造』を選択して、武器の種類を選ぶ必要がある。

 悩んじゃうなぁ。


 しかし、消極的な僕に強い味方がある。

 ゲーム備え付けの便利機能『ルーレット』。

 いろいろなルーレットをカスタマイズして作ることができる。

 じゃんけんもできる。


 片手剣 両手剣 刀 槍

 メイス ワンド

 片手斧 両手斧 ハルバード

 盾 弓 銃


 盾は武器ではないとか突っ込みなしで。


 ルーレットスタート。


 ちゃんちゃらちゃんちゃん。どろろろろろろ。ぴきーん。


『片手剣』


 おう、超王道。片手剣。


 メニューを操作して、片手剣を選択。


 炉にインゴットの先端を投入して、温めていく。

 今度は完全に溶かしてはいけないんだけど、ゲームなので簡略化されている。


 赤くなったインゴットを取り出して、ハンマーで叩く。


 何回か叩いていくと、ピカーっと光る演出が入って、武器に形が変わっていく。


「できた!」

「おおおおお」


 できたのは『鉄の片手剣Lv5』。


 どうだぁああああああ。


「やったじゃん」

「あはははは。僕はやりました」


 早速装備して、振り回してみる。


「えいやあ」


 剣ばしゅーん。


「とやあ」


 剣ばしゅっ。


「やっ。とおっ」


 剣しゅぱしゅぱ。


 素晴らしいね。


「ワイちゃんかっこいい」


「ワイリスちゃん、いいよ」

「ワイリスちゃん、可愛い」

「可愛い、可愛い」

「かっこ可愛いよ」

「よっ、姫騎士様!」

「お姫様! 頑張って」


 う、声援をいっぱいいただいた。

 でも可愛いの声のほうが多い。ぐぬぅ。


 可愛いんでもいいもん。


『魅力値:50→55』

『総戦闘力:180→195』


 どうじゃ。僕はまた強くなったぞ、えっへん。


「せっかくだから、ワイちゃん。私のワンドも作ってくれる?」

「ワンドね、分かった」

「材料は、はい。これでいい?」

「うん」


 レベルは同じだから材料も一緒だ。ただ選ぶ武器が違う。


 火が燃える。インゴットを作った。


「えいっ、えいっ、えいっ」


 今度はハンマーで叩く。

 お、なんか最初よりうまくいった気がする。


「できたあ」

「やったね、ワイちゃん。ありがとう」


 こうして『鉄のワンドLv5』が完成した。


 僕はこうして鍛冶師への入門を果たしたのだった。


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