11 採掘! 釣り!

 露店を見て回って、あるアイテムを購入した。


 その1。ピッケル。ツルハシともいう。

 その2。釣り竿。


 それからスズメウリは買い取り露店という収集物を買ってくれる露店で、全部売ってしまった。


 武器とか買ったほうがいいに決まっているんだけど、いいんだ。

 もちろん、ピッケルも釣り竿も2つ、二人分だ。



 門を出て、草原の中に点在している岩山の一つに向かう。


 途中、ちょっとレベルが上の人とすれ違った。

 ちょうど敵のラージラットLv8も目の前にいて、一瞬で倒すとそのまま行ってしまった。


 地面には『ラージラットの肉』が落ちている。


「お肉、だよね」

「うん」


 拾おうと手を出したんだけど。


『ルート権がありません。少し経ってから再度お試しください』


 とシステムメッセージが出て拾えなかった。

 なるほど自分で倒していない敵のドロップはすぐには拾えないようになっているということだ。

 そりゃあそうだろう。横からかっさらっていく悪い人もいるかもしれない。


 左右を眺めつつ、ちょっとだけ待つ。


 今度は手をかざして、軽く触れると、シュッっと吸い込まれていく。


「お肉、もらっちゃった」

「よかったね」

「うん」


 そこからすでに見えている岩山に移動した。


「着きました」

「おつかれ」

「お疲れさま」


 ただ歩いただけだけど、ちょっとお疲れだ。


「ではやりますか」

「はい」


 すでに現場には2人ほど先に掘っている人がいる。

 それでもちょっと広いので、横のほうに陣取る。


「えいやっ」


 武器をピッケルに変えて、岩山の黒っぽい場所に振り下ろす。


 ぽろっとアイテムがドロップしてくる。

 それを回収すると『鉄鉱石』だった。


「やった。鉄鉱石、ゲット」

「うふふ。可愛い」

「うっ」


 つい無邪気にはしゃいでしまった。


「次あっち」


 場所を移動しながら、それっぽい場所にピッケルを使っていく。

 次の場所でドロップした石は鉄鉱石より灰色っぽかった。


「あ、小石だった。次っ」


 次の場所を掘る。


「ぐぬぬ。また小石。次っ」


「やった。今度は鉄鉱石」


 小石、小石、鉄鉱石、小石、ふう一休み。という感じ。

 次々に掘って歩く。


「えいや~それぇ~ほいほい♪。あいや~それぇ~ほいほい♪」


 いい気分だったので、適当に歌いながら掘って歩く。


 気が付いたら、周りの採掘者の人たちが、微笑ましいものを見る目で、観賞していた。


「お。お歌は終わりかい?」

「なかなか可愛かったぞ」

「また歌ってくれよ」

「録画しておけばよかった……」


「うおおおお。恥ずかしいぃ」

「あははは」


 リズちゃんにも笑われた。


 そ、そのあとは、真面目に採掘に励んだんだ。ほんとだよ。



 ずっとやっていると、さすがに飽きてくる。


「釣りをしよう」

「うん」


 草原には、川が流れている。

 それから池が点在していたりする。


 今回は近くの池だ。

 見えていたので、そそくさと移動する。


 池というか、水がめっちゃ綺麗。これは泉と呼ぶべきかもしれない。

 小山の崖の下で、崖のところから水が湧いていて、ここに溜まっている。

 もちろん小川が流れだしていて、向こうのほうで川に合流しているみたい。


「では、釣りを始めます」

「はい」


 ここには先客はいなかった。


 釣りと一言で言っても、ルアー釣り、餌の投げ釣り、疑似餌、一本釣りみたいに、種類がある。

 これは、疑似餌だと思う。


 針の根元に白いひらひらがついていて、小エビみたいに見えないこともない。


「まあいいや、とにかくやってみよう」

「そうね」


 二人で糸を軽く投げて、ぽちゃんと着水、あとは待つだけ。


 というか水が綺麗で、魚が見えている。

 疑似餌もよく見れば、なんとなく見える。


 しかし魚ちゃんたちは僕たちを警戒してか、近くまで来るけどすぐUターンして向こうへ行ってしまう。


「なかなか難しい」

「そうね。まあ、気長に待ちましょ」

「うん」


 ぴゅーひょろろ。


 トンビが遠く高くを飛んでいる。

 あれはモンスターなんだろうか。

 もしかして狩れば、レアアイテムがドロップしたりして。


 平和だ。


 この世界は初夏なのだろうか。

 暖かい日差し、たまに吹く緩い風。


 のどかだ。


 僕の隣には、ニコニコ顔のリズちゃん。

 何を見ているかというと、僕の顔だった。


「敵を倒すゲームなのにのどかだね」

「うん」


 ぼーっとする。


 びくんっ。


 いきなりだった。竿が引っ張られる。


「きたああ」

「そっとよ、そっと」


 糸が引いている。

 びびびびって竿に振動がくる。

 魚も見える。糸に逆らって、水の中を必死に泳いでいる。


 僕はリールをそっと巻いていく。

 魚は逃げようと頑張っているけど、だんだん岸に寄せられてくる。

 水面まで上がってきた。


「いまだっ」


 釣り竿を立てる。

 魚が水の上に顔を出して、ぴゅいーんって飛んでくる。


「うわあ」


 なんとか竿を動かして、魚をキャッチして、捕獲する。


「釣れた」

「やったやった。おめでとう」

「ありがとう」


 ヒメマス。記録15センチ。


 人生初の釣りだった。思ったよりもずっと興奮した。


 名残惜しいけど、お魚ちゃんはアイテムボックスへしまった。


「ふう」

「よかったね」

「うん」


 それからもう少し釣りを楽しんで、何匹か釣れた。

 リズちゃんのほうが3匹多かった。


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