第26話 平穏という名の日常回という名のお風呂回!

「ふいー……久しぶりだな。湯船に浸かるのは……。」


さて、何故練が正気を保ったまま湯船に浸かれているのか。

度の過ぎたロリコンたる彼が、どうやって幼女達のあられのない姿を見て正気を保っていられるのか。


時間は少し前に巻き戻る────


「……うーん。ダメですね。」

「やっぱりお兄ちゃんと一緒にお風呂は無理かもね。」


2人はあまりにも無慈悲な現実を練に突きつけた。

いや、無慈悲というか、当たり前の事なんだが。


「どォォォォォォォッッッしてだよォォォォォォォォッッッッッッ!!!!!!!!」


「いーや、ダメ。ドクターストップだね。」

「私たちは医者じゃないですが、それでもダメだと分かります。」


しかし、意外にも2人が拒否した理由は練の身を案じての事だった。

しかし、そんな2人の思いはどこへやら。


「『治れ』……ほら!鼻血止まった!」


錬金術で鼻血を止めてみせる。

そんな主人に溜め息を吐きながら、


「そいっ。」


ぴらーん。スカートという名の花弁が花開いた。

あまりの特急スケベに練の血圧は爆上昇。


「ブシャー!!!!!」


「ほらダメじゃん。えいっ!」


「フガッ!」


突然鼻に布が詰め込まれ、藻掻く練に、


「はい、治してください。」


冷静なライトの声が指示を出す。


「……『治れ』。」


すぐに止まる血、流石の錬金術だが……


「あのね?お兄ちゃん。死ぬよ?」

「これは確実です。なんなら今日はもうご飯食べて寝てください。絶対貧血になってますから。」


2人の言う通り、治したからといって噴いた血が元に戻る訳ではない。実際2人に心配されるくらい練の顔色は、青を通り越して青白くなっていた。


「…………ふぅ。」


差し出された水を一気に飲み干し、ふぅっと深いため息を吐き出す。

そして、覚悟を決めた表情で2人を見つめ、


「俺は、みんなとお風呂できるなら死んでもいい。」


「「かっこ悪いッ!!!」」


「クゥーン……。」


飼い主に怒られたチワワみたいな顔になってるこいつが主人公ってマジ?

……と、そんな醜態を晒す主人公にライトが一言刺す。


「というか、幼女の裸体を見たら死ぬ奴と風呂に入る幼女って、幼女の方もだいぶ神経終わってません?」


それはそう。


「ライト、言い方。」

「失礼しました。」


少し無神経な言葉だったので、ダークが少し咎めた。

一方、致命傷を受けた主人のサポートはなかったため、


「うぐぐぐぐ……一理ある……。」


練は呻きながら撃沈した。


「じゃあ、寝ましょうね〜!私達はルミナちゃんとお風呂に入ってから寝るからさ!!」


またもや提示された無慈悲な現実に、変な音を立て始めた練だったが……


「ガガガギギゴグググ…………あっそうだ!!」


遂に突破策を見つけたのか、それとも苦し紛れの策かは不明だが。

その策とは一体…………?


「「?」」


「こんな時こそ錬金術の出番だ!!!」


やっぱりな。


そして別室で練を待つこと10分。


『パパまだなの〜?』


「きっともうすぐですよ。ルミナ様。」

「うん、もうちょっと!」


……と、ルミナを宥める2人。

そんな和やかな雰囲気を全部ぶち壊す勢いで襖が勢い良く開いた。


「お待たせぇぇっ!!」


『あっ!パパ〜!!』


金子練、現着。


「完璧に完成した!!入ろう!!」


頭痛が痛いみたいなことを宣いながら、3人の幼女を風呂に誘う高校男児。

うーん、アウト!


「ようやくですね〜。」

「早く入りたーい!」


『おふろー!!』


それはそれとして、


「……それで、どうやって興奮せずに風呂に入るつもりなんですか?」


ライトがそんな疑問を練に投げかけた。


「自主規制をかけることにした。

……いや、。」


そんな事を言っている内に、4人は風呂場の手前、脱衣所へとたどり着く。


「……?何を言っているのか分かりませんが……。」

「百聞は一見に如かずだよっ!!」


ブワッ!ライトが言い切るのを待つ前に、ダークが自らのワンピースを雑に脱ぎ捨てた。

その幼い肢体が露わになり、練はまた懲りずに鼻血を噴き出す……なんてことはなく。


「…………無事だぁぁぁぁぁ!!!!!」


『無事なの〜!!!!』


なんと、耐える事に成功した。

さて、その方法だが……


「わっ……光が身体に……?」

「…………これってどういう?」


なんと、何かした訳でもないのに、ダークとライトの身体に光が纏わりついていた。

〇lu-rayディスクを買えば剥がれそうな感じの不自然な光だ。


「脱衣所と風呂場では局部が絶対に見えないようになったんだ。」


「はぁ???」


何気にとんでもなさそうな事をやっているせいで、ライトが眼を丸くしていたが、その他の3人に関してはそんな事どうでも良かったようで、


「まぁいっか。これでみんなで入れるんだし!!」


「そうだ!!!行くぞ──ッッ!!!!」


『行くの〜っ!!!!』


渇望していた風呂場へと突入するのだった。

一応、ルミナの身体を洗ったのはダークとライトであるという事だけ記しておく。

だって練が洗うと血の噴水が出ちゃうからね。



……さて、身体を洗い終わった後は、しっかり湯に浸かって温もる時間だ。


『パパー!これ楽しい!』


そして、当然そんな事を知らないルミナは風呂でザブザブと泳いで遊んでいるのだった。


(可愛い良い良い良い良いい!!!!)


そんな娘を注意出来ない親も親だが、他人に迷惑がかかってない上、風呂がプール並にデカいのでまぁ……大丈夫だ。


「うーん……いーね!これ!!」

「そうですね……日頃の疲れが癒されます。」


さて、普段苦労人(剣?)の2人もこの機会にと、風呂で身体を癒していた。

剣なのに風呂に浸かっていいのかは知らん。


「そうだな……こんな風呂は転生前にも入ったことはなかった……。」


ふと、聞き覚えのある声が湯けむりの向こう側から聞こえてくる。

その声の主は…………


「ん……?え?クロノスちゃん?!」


まさかの時空神だった。


「…………え?なんでここに?だってえ?みんな女の子で……????」


当たり前な反応をするクロノスに対し、練は追い討つように質問を返す。


「いや、それより!クロノスちゃん?何でここに?」


「……ゴホン、いや、わた……ゴホンゴホン!!我は風呂なんぞ久しぶりだからな。是非入りたいと思ってな……我の加護の代金とでも思うのだな。」


そんな痛い発言も厨二ファッションがなければ可愛いものだ。

練は少し考えた後、悪ガキの顔になった。


「え〜っ!?そ〜なのォ〜っ!?風呂入ってないのォ〜ッッ!!!」


言い切った瞬間、生命の危機を感知する……だがそこまで、回避も防御も間に合わない。


「「コラッ!!!」」


「ガフッ!!!」


2人の鋭いグーパンが練の顔面に入る。

主人の不始末を片付ける……素晴らしい、剣の鏡だ。


「ち、違っ!勘違いしないで!シャワーは毎日浴びてるから!汚くないよぉ……!」



涙目になってこちらを見ているクロノス。

そしてそれを見てほくそ笑む練。


「ガハハ!!これが見たかったのだ(鬼畜)。」


全く反省の意図が見えない主人の首に、クロノスの剣が添えられた。

そりゃあキレるって。


「冗談だって!冗談ですよ!!ごめん!!ごめんなさい!!!」


冗談で済む内容じゃない気がするが、どうやらその弁解で許しを得たらしく、


「よかったぁ……。」


そう呟きながら剣を下ろすクロノス。胸を撫で下ろす練。


(本当に汚いと思われてたら時空壊してたかも……。)


……なーんて、凄い冗談ですね。え?本当?

…………はは。


「本当の理由は?」


剣を向けられた直後に何を言ってんだこの男は。


「……ち、違うもん!みんなと仲良くお風呂できたらなぁ……とか!!そんな理由じゃ無いから!ほ、本当に違うから!!」


一瞬で瓦解する厨二病フォームとのギャップの威力を至近距離で受けた練は、


(か、可愛いッ!……可愛いが……過ぎるッ!!)


「ァ!!!!!!!!!」


カワイイの過剰摂取により鼻血を出しながら気絶した。


「ご、ご主人様!?」

「あー!お兄ちゃんが沈んでいくー!」


どんどん広がっていく血溜まり。どんどん沈んでいく金子練。

なにこれ。


『パパー!』


「そ、そんなぁ……可愛いなんてぇ……え?練君?」


クロノスが嬉しさにくねくねしている内に、練は3人の手によって湯から引きずり出され、地面に仰向けに横たわっていた。


「金子練ッ!悔いはないッ!やっぱり悔いあるからアイルビーバック……でも今日は無理おやすみ。」


何言うてんねんこいつ。

当然、これも意識が朦朧としていたために出てしまった言葉であり、本人が面白いと思って発言した訳ではないと弁解させて欲しい。

……さて、死にかけの練を目の前にしてアタフタしているクロノスに、ビシッと人差し指が向けられる。


『クロノスちゃん!絶対に負けないから!パパは渡さないの!!』


ルミナからクロノスへの宣戦布告だった。


「え…………えぇ!?」


『絶対パパは渡さないの!クロノスちゃんとルミナはライバルだから!』


「ライバル……初めて……。」


もうダメだこの神。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る