第8話

中学生で友達の家庭環境のことを意識した私だったけど、初めて彼氏ができたのも中学だった。



彼は入学式で私の前に座っていて、

そんな彼の襟足が妙に長いことが気になった私は校長先生の話なんてまるで聞かずにその彼の襟足をぼぅっと見つめていた。



「なぁ、話長くね?」



突然隣の男の子が発言したことに胸がどきりとして目を向けた私に お前に話しかけてないわ と告げた後、男の子は襟足の彼の肩に触れた。



「ん?」


「校長。話長すぎだろ」


「だな。俺眠い」




私の横に座っている少しヤンチャそうな男の子と喋る彼の囁く声に先程とは別のどきどきを感じながら、ちらりと覗いた彼の笑顔になんとも言えない気持ちになった。



同じクラスで、席が近くで。

話しかけるチャンスなんていくらでもあるのに…


入学式から1ヶ月が経っても私は彼と会話したことがなかった。



私ではなくあの時のヤンチャくんとばかり話しているけど、彼自身がヤンチャではないことは日頃の授業態度を見ればよく分かる。


だけどヤンチャくんは彼にばかり話しかけている。



(内心、困ってそう)




そう思いながらも口出しできない私も、その頃は友達関係で悩んでいてそれどころではなかった。



そんな状況から抜け出したのは入学して半年が経った頃。



私は幼馴染の2人と、小学校の違う2人の(この2人も幼馴染だった)5人でいつも一緒にいるようになって学校生活にも落ち着いてきた時、はじめての席替えがあった。



ヤンチャな彼は先生の目の前に。


彼は1番端っこ、廊下側の後ろから2番目にいた私の隣の席に。




くじを引いた人から先生が黒板に描いた空白の席順に名前を書いていって、私の隣に彼が名前を書いた時じんわりと汗をかいたことを覚えている。




「真弓と席離れたねー」



最近1番仲良しのえりが寂しそうに声をかけてくれてもなんだか心がふわふわして曖昧な返事しか出来なかった。




「よろしく」




机と共にやってきた彼の姿を直視できなかったのは言うまでもない。


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