第5話

「明日は何する?お皿選びに行く?」



過去のことを思い出していた私の携帯が ピコンっ と音を立てた。


LINEの通知には彼からのメッセージが表示されている。



部屋を借りない限りは大きな家電は買えないし。

一粒万倍日、天赦日、それに大安…といい日に入籍したいと考えてしまった私たちは入籍の日を4ヶ月も先延ばしにしたのだ。



そうなるとお部屋探しは早すぎる。



お皿なら早く買っても置き場所には困らないか…名案だね。


ささっと同意の返事を返して、あの日々のことを思い出した。



あの後、私はごうくんに告白された。

そしてかつてのメンバーから無視された。



(いじめ)




そういう表現にならないのは私が決して1人になることがなかったからだ。


もともと話が合わない人だったし、無視されようが辛くなかった。


あからさまな態度に傷つくことはもちろんあったが、学生特有の

「明日からあの子無視ね」

という行為が私には効かなかった。


だから私はあの日々を決して辛かったとは思わないし、いまだに心から信頼できる友達を手にすることができたのだ。



みかちゃん、みさき、ももちゃん。



幼馴染の存在。




いつか将来自分に子どもができたなら、

必ず幼馴染という存在を作ってあげたい。


つまらないことでイライラする多感な時期に

人を傷つけるのではなく、自分に必要な存在を見つけられるようになってほしい。



そう思うの。



そんなことを考えながらゆっくりと目を閉じると、大好きな友達に会いたくなって少し目頭が熱くなった。


これは大人になって涙もろくなったのか?


それともやっぱり悲しい日々だったのか。



「10時に迎えに行くね」



彼からの連絡を見て急いでお風呂に入る準備をした。


一階からは母と父の笑い声が聞こえる。

我が両親ながら仲良いなと思い、静かにティッシュで目元を押さえた。

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