スライムしかテイム出来ない最弱テイマーは家を追い出される。たまたま中の良かったドラゴン達に時々助けてもらいながら最強になってしまう

武田 健太郎

第1話 はじまり

「おい、いつまでかかってるんだ! 早く薪を運んでおけ」後ろにワイバーンを従え威張り散らす声。その声の主は僕の弟、ベリス ダシャナ16才だ。僕と違い才能に溢れ父からの信頼も厚く、ゆくゆくはテイムマスターになると言われる存在だ。


「わかったよ。ワイバーンを寄越さないでくれ」


「ふん、餌だと思っているんだよ。スライムしかテイム出来ない何て最低だな!!

そんなスライム必要無いだろう。ワイバーン食べていいぞ」


ギェー!

ワイバーンが嬉そうにスライムを襲う、スライムの前に体を乗り出しスライムを守ろうとするがワイバーンに叩かれはね飛ばされる。


「ベリス!! いくら何でもやり過ぎだろう」そう怒るが僕の言うことは耳を貸さずに、鼻歌を歌いながらはなれて行ってしまった。


僕の家は、ここオーヂェン国の首都 ラアド で代々テイマーを行う家だ。

先代の国王の代から旅のお供やボディーガードを任される家だ。

僕 リオン ダシャナ 17才は由緒正しいテイマーの家柄の中で唯一の落ちこぼれだ。


父、スカルプ ダシャナは首都ギルドに所属しているAランクの冒険者。ドラゴンマスターの称号を与えられ、複数のドラゴンを従えるこの国の英雄でもある。


そんな格式の高い家柄にも関わらず、僕にテイム出来るのがスライムだけ。


どういう訳か外のモンスターをテイム出来た試したがない。モンスターとは会話も出来、仲良くなるのに。父のドラゴンも僕の方に良く懐いているのに?


最近では父も諦め気味だ。元々テイマーの仕事は冒険者について、ダンジョンの攻略や商人の護衛等、危険なものばかりで最低でもミノタウロスクラスのモンスターをテイム出来ないと話しにならない。僕にもわかってはいるけど、才能ってやつだよね。


僕 リオン ダシャナは今日18才の誕生日を迎える。ダシャナ家では、代々18才を成人と認め家を出て生活を送る習わしがある。


この国では16才で成人と認められるが、テイマーの早い成人は身を滅ぼすとの始祖の教えから18才で成人となっている。


家に戻ると父さんがいて、これこら家族会議が開かれる事になっている。

「リオン、座りなさい」

父さんの声が聞こえ椅子に座る。弟のベリスが嫌みたらしく言ってくる「変わりのスライムは見つかったの?」

弟を無視して父さんの方を向く。ベリスのワイバーンが僕に近づこうとしたが父さんと目があってしなだれる。


「ベリス、ワイバーンのしつけごなっていない。こんなわがままに育てるならワイバーンを森に帰すぞ」そう叱られ何故か僕を睨む。


「リオン。お前は今日で18才だ。家の仕来たりに従いお前を1人のテイマーと認め今日より一人立ちを命ずる」


突然ベリスが口を挟む。

「父さん、こんな役立たずを家で雇うの? テイマーとして?」頭を両手で押さえ天井を見ながらさらに文句を言う。

「そんな事をしたらダシャナ家の信用が無くなるよ」


その声に、母 リーナダシャナが追い討ちをかける。「そうですよ。やっと先代の国王の信頼を得てここまでやって来たのです。リオンをこの家で雇うなどもってほかです」息子ですら母のプライドが許さない。まあしかたない。母と僕は血のつながりがない。それも有るだろう。


まして母 リーナは元貴族の出、母のお祖父さんが問題を起こし貴族を剥奪され、その再興を目的に父さんに近付いてきた人物だ。だからだろう、僕なんかより家の立場が重要ようだ。まあ、わかりきってはいるが。父さんもあれが無ければ本当に素敵な人だとぼやいている。


父さんが不満そうに「この家の家長は誰だ。ベリス、リーナ! お前達は私に口を聞くのか?」

父さんの怒りにテイムしているドラゴンが呼応して家に降り立つ。ドラゴンの気配を感じ、ベリスのワイバーンが震えて縮こまってしまった。


「だってスライムしかテイム出来ないなんて、テイマーとして問題でしょ。仕事が無くなるよ」ベリスが慌てて弁明すると、母のリーナもうなずく。


父さんが呆れたようにベリスに言う

「お前は薪割りを全くやってないだろう。いつになっても貧弱な体付きだ。リオンを見ろ、見るからにがっちりとした体付きでどちらが優秀か一目瞭然だ。

まして我々が紙祖もスライムのテイマーだ、私達はスライムからテイムを初め、スライムをテイムしたことから現代にいたる。

ましてリオンの魔力はこの国随一だ、その質と量は目を見張るものがある。我が家が魔法使いの家ならベリス、お前が勘当されている所だ」


さらにテイマーは戦う事が求められる。テイムしたいモンスターから尊敬される必要がある、モンスターは基本的に自分より弱い者を見下す傾向が強い。

戦う事は必須条件でもある。


一息ついて「リオン、お前には辺境都市 

 マリエラに行ってもらう。マリエラで自分の家を起こしてもらいたい。最近ダンジョンも発見され、テイマーを探していると国王陛下より話しを聞いてな、行ってもらえるか?」


「はい、父さん。今までお世話になりました」深々と頭を下げる。


「今日は身支度を済ませ、家でゆっくり休め。出発は明日だ」父さんの表情がいつもより固い。


ベリスとリーナはほくそ笑む。

辺境都市は辺境伯 ライズ シーナ マエンがおさめる土地だ。この辺境伯はが物凄い変人で通っている。

また首都ラアドの騎士団、代7兵団長 ランナー マルズ マエンの妹で、自らも私兵の軍を所有し数々の武功を立てる女傑としても有名で、オージェンの英雄として庶民からの人気も高い人物だ。庶民からは兄、ランナーよりも人気者だ。


ベリスが近づいてきて嬉しそうに「よかったね兄さん。これでワイバーンにいじめられることも無いよ」

そう、満面の笑みを浮かべる。リーナは侮蔑の眼差しで僕を見ると小声で言う。

「早く出ていけ」


辺境都市まではランナーに同行することになった。


翌朝、朝早くリーナに起こされる。

「ふん、厄介者がいなくなる。やっとおさらば出来るよ。とっとと出てお行き」


ぞんざいに僕の荷物をぶつけて来る。居間にいき、父さんから当座のお金をもらう。


リーナが嫌みを言う。

「こんな役立たずにそんな大金を渡すのですか? どぶに捨てるようなものです」


父さんの顔が真っ赤になって怒りだす。そんな父さんを抑え「本日まで有り難うございました。お体にお気をつけ下さい」

そう頭を下げて家をでる。


家にはベリスとリーナには絶対になつかないドラゴンがみんな揃っていた。この家には、父さんの祖父の時代から受け継がれたドラゴンがいる。祖父から父に受け継がれたが僕にはテイム出来なかった。


ドラゴン達は僕に気を使う。僕が悲しい顔することを特に嫌がる。なんとかしてやりたかったがテイムも出来ないテイマーには何も出来ない。


それに今日はリーナの両親。僕の祖父母が来ている。この2人はリーナよりひどい差別主義者で自分達にとって利用価値が無いと判断したら、家族でも平気で捨てる人物だ。

それでいて父さんに対する態度は物凄く丁寧で、貴族同士のやり取りで身に付けたおべっかを駆使して父さんに好かれようと努力を惜しまない努力家でもある。


そんな2人が来てリーナのテンションはMAXになる。弟のベリスを称え、僕を貶める事に躍起になる。祖父母もリーナの言葉に一喜一憂し僕を攻め立てこんな者はお金すら勿体ないと家を追い出された。


何時もの事で慣れっこだが、残されるドラゴン達が寂しそうにしていることがやるせなかった。ドラゴンが暴れ無ければいいが、今日は流石に抑えるのは無理だろう。

ドラゴンが祖父母に対しドラゴンフレイムを出しかけていた位だ。


流石に問題になると思い止めたが、今日は確実に誰の言う事もきかないだろう、何故かそう思う。

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