マーフ王国 ~運命に逆らう独りの物語~

SpaceyGoblin

開国宣言

 ある男が言った。


「今日からおまえらのほしいものは、俺が全て与えてやる。俺の国、マーフ王国に招いてやろう」


 この発言に賛同した、人々はぞくぞくとマーフ王国と呼ばれる場所に集まった。初めは広い草原にある小さな集落だったが、みるみるうちに拡大してゆく。

 男が約束通り、皆が望むものを、なんでも買い与えたからである。


 時が経ち、人々は働くことを辞めた。働かずともマーフ王国の国王は何も咎めない。

 そんなマーフ王国は人々にとって居心地が良かったのだ。


 マーフ王国では全ての家は木造で、平屋から二階建て、三階建てから五階建てまでの建物があり、遊技場や、学校、病院など様々な建物も建築されている。歩道はよく整備された木の板で、街灯や標識も木で出来ている。

 人々はマーフ王国での生活に幸福感を覚えていた。

 マーフ王国の国王はというと、街の中心に木造の城を築きその頂上に鎮座している。


 ある日マーフ王国の人々は、なにも欲しなくなった。

 なんでも手に入ってしまうからだ。

 物欲が完全に消滅してしまった。

 そうなると人々が求める対象は人に移る。性の対象だったり、喜びの対象だったり、怒りの対象だったり。

 すると忽ち、大人数での決闘までも起こり始め、中には国王の座を奪ってやろうと言う者まで現れた。


 国王の座を狙う人々は集まり、ゲリラになった。





『俺たちがこの国を変えてやる』





 ゲリラ達の力強い声が木霊した。

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