伝説の存在と歩む魔王様は平和に暮らしたい~最強クラスの存在と過ごす魔王は、数多の兵と最強の仲間と共に波乱な人生を送る~

勇黒

第1話 人間と魔族

「ユーラス逃げてッ!」


「逃げなさいユーラス!お前だけでも生き残りなさい!」


両親はそういって僕を逃がそうとした。勇者はもう扉の前まで来ていることだろう。それでも僕は逃げたくなかった、自分を育ててくれた両親を置いて逃げたくなどなかったのだ。


「そんなことできません!父上と母上が残るのなら僕も残ります!」


「もし全滅すれば誰が魔族の再建を図るというのだッ!お前は私の子だ!純血のお前が我らの意思を継がずしてどうするのだ!だが…儂の判断ミスでこんなことになってしまって済まぬ、お前たちもすまなかったな。最期まで何一つお前たちにしてやれなかった。…これが最後の王命である!必ずやユーラスを守り、魔族の再建を図れ!」


「「…必ずや!」」


こうして僕は、自分の専属執事と魔王軍第一、第二中隊に連れられ、逃げたのであった。僕が魔王城から出て馬車に乗り込むとき、最後に目にしたのは、城に開いた穴の部分からこちらを笑顔で見ている勇者だった。


その姿は父上や母上の者と思われる血液で全身を染めており、右手には赤く染まった聖剣、左手には二つの首。


「あいつを…あいつを殺す!」


「お待ちください…!今のままではどう足掻いても勝つことは不可能です!」


「でもあいつは父上と母上を…!」


「分かっています!ですが今はユーラス様が生きなくてどうします!魔王様はユーラス様に生きろとおっしゃられた、その言葉を裏切るというのですか?」


「……くっ、わかったよ…」


兵士の説得により、僕は渋々と馬車に乗って扉を閉めるのであった…。


   *   *   *   *


今から12年前、人間と魔族による勇魔大戦が勃発した。戦力だけで言えば魔族が圧倒的に優勢ではあったが人間界には勇者がいる、その存在は魔王は除くものの、魔界最強の四天王にすら匹敵するといわれていた。


勇者は人間界にいる兵を引き連れ魔界に進軍。


不幸な事に戦争が始まったときにユーラスは生まれてしまった。


戦争が始まってから1年後、魔王軍幹部の一人が討ち死にした。突如襲来した勇者との対決で敗北。このことからわかるようにやはり勇者の存在はデカく、四天王を倒したことによって人族連合軍は士気が大幅に上がり、は次々と進軍をしていった。


月日は流れ、戦争がはじまってから11年後、父上が持っていた領地の中で残るは魔都ベルセフォルクだけであった。生き残った部隊は魔王軍第一~第五中隊、四天王4名、特殊暗殺部隊だけであった。


暗殺部隊は既に各地に分散しており、敵の誘導と魔族の救出を最優先に行っている。




魔王軍第一~第二部隊はユーラスの護衛を、第三~第五部隊は魔王城の防衛をすることになっている。


四天王のうち黒い鎧を纏っている剣士であるユリウスは魔王軍第一部隊長に、スケルトンでローブを纏っているシィは第二部隊長に臨時襲名。


二人の元の配下は砦に派遣され、連絡が取れなくなっている。


残りの二人の四天王は第三~第五部隊からなる防衛チームのリーダーである。この城壁は非常に強固なもので、他国との戦争時でさえ壊れることはなかった。


そんな砦を見ながら僕は手元にある報告書を手に取る。

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