ベクトル
俺は……あの女を許さない。
俺が必死に、人生で初めての告白をしたのに……
「あたし……今は『
……といけしゃあしゃあとほざきやがった!
『
……
俺を振った事を後悔させてやる!
……ある日俺は、会社帰りのあの女をこっそり付けて、暗がりで背後からネクタイを首にかけ一気に締め上げた。
**************************************
……この前、変なことがあった。
電車で何回か見かけただけの、ちょっと……いや、かなりキモいオヤジが、突然花束を差し出して
「俺と付き合ってくれよ〜」
……って言いながら迫ってきた。
しかも、あの花……仏花よ! 常識知らずにも程がある!
……あたしは『
あ〜やだやだ!
ホントにキモい! 思い出したくも無い。
さて、早くお家に帰って、愛しい『
グッ!?
く……苦しい!
何? 何!?
首に……何かが……
誰か! た……助けて〜!
……!
声が……出ない……!
……だんだん、目の前が……ま……真っ暗に……
**************************************
……やがて、女が抵抗しなくなり、その場に崩れ落ちた
その後、完全に息が止まった事を確認して、俺は道のど真ん中に女の身体を投げ捨て、そのまま放置した。
へっ! ざまぁ。 メス豚の死に場所に相応しいぜ。
……俺は口笛を吹きながら帰宅した。
翌日……早速、この事件の事が報道された。
女の友人が……
『……あの
なんでも、観葉植物『月の王子』ってのが大好きで、それを増やして育てるのが趣味だったらしい。
……!
『
……やばっ! 勘違いだったぜ……テヘペロ〜(汗)
**************************************
その後、警察の必死の捜査にも関わらず、あたしを殺した犯人は見付からなかった。
……あたし……あいつを絶対に許さない……
あたしは、地縛している思念を、遺した『
**************************************
……数日後
……とある植物学者が奇妙な現象を発見した。
多肉植物『セダム』(別名『月の王子』)は、陽光に向かって伸びる性質を持っているが、ある日を境に、世界中のセダムが、陽光とは全く無関係の方向に伸び始めたそうだ。
調査の結果、セダムが伸びる方向は一点に集中している事が判明した。
そこは、とあるアパートの一室だった。
……当該住人がテレビの取材を受けたが、それを観た視聴者から警察に、この男性が、先の未解決殺人事件の被害者に言い寄っていたのを思い出した……という情報が寄せられた。
警察が任意に事情聴取すると、その男性は、あっさりと自供したそうだ。
部屋からは、被害女性のDNA型の付着したネクタイが発見された。
……その男は取り調べで『毎日どこに居ても突き刺さるような視線を感じ、睡眠不足になって、辛い毎日を送っていた』……と語ったそうだ。
**************************************
……その後、犯人は留置所で、服を歯で裂いて作った紐状の物で自殺した。
『あの世で彼女に謝罪します』……と書かれた遺書が見付かったが、あいつの魂は無限地獄に墜ちて行ったので、あたしと会うことは永遠に無い。
あたしは……天国で次に生まれ変わる日を一日千秋の思いで待っている。
……早く生まれ変わって、また『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます