ラブコンフレクションファンタジア!

時長凜祢

始まりの日常

何気ない日常 昼

 ユーフォルビア学園は、世界樹ゲネシス・アーラムの根が届く魔力溢るる学園。

 ここにはギルドと呼ばれる冒険者たちが集まる働き口があり、日々多くの冒険者が出入りしている。

 だが、ここはギルドと言う施設だけがあるわけじゃない。わかっているとは思うけど。

 ここはあくまで学園だ。冒険者ギルドが併設されているだけの学園。

 ゆえに集まるのは冒険者だけじゃなく、私のような学生も通っている。


「ライラ。」


「ん?ああ、アイリスか。どうしたのさ?」


 今日も冒険者たちがギルドを行ったり来たりしてるなぁ……なんて、そんなことを考えながら、教室の窓から外を眺める。

 すると、私の友人である女子生徒、アイリス=ローズオーラが話しかけてきた。

 すぐに彼女の言葉に反応し、どうしたのかと聞いてみれば、どことなくワクワクした様子で、私の机に乗り出してくる。

 あまりの近さに少しだけ驚き、軽く体を仰け反らしていると、彼女はキラキラとしたアイスブルーの瞳を向けてきた。


「朝、アルヴィン先生が言ってたじゃない!明日、召喚術の実技試験だって!とうとう私たちもファミリアと契約をして、召喚士としての道を歩むんだよ!?もう朝から興奮して興奮してたまらないの!だから少しでも落ち着かせるためにちょっとお話に付き合って!」


「あ〜……はいはい。そういやアイリスは、その日を楽しみにしていたな……。」


「当たり前じゃない!だって私、お母様に憧れてこの道に入ったんだもの!やっとお母様のような……まではいかないかもしれないけど、可愛い妖精さんや、綺麗な精霊さんと契約できるようになると思うと嬉しくて!だってだってお母様ってすごいのよ!水の精霊妃であるウンディーネ様と契約を結んでて、いつもキラキラ眩しくて……!!」


「確かに、アイリスのお母様とそのファミリアであるウンディーネ様はとても綺麗だね。」


「でしょでしょ!だから、私もお母様のような綺麗な精霊や可愛らしい妖精と契約を結んで、立派な召喚士になって、イケメンな冒険者様のサポートをして!目指せメインヒロイン計画よ!」


「…………うん、だと思った。」


 ……私の友人であるライラは、愛らしく明るい女の子。

 しかし、少しばかり変わったところがあり、残念な美少女と言った感じである。

 なぜか立派な召喚士となって、イケメンな冒険者と旅をして、そんな冒険者様との恋愛ゴールインを目指しており、とにかくひたすら面食いだ。

 顔が良ければゴリマッチョだろうが細マッチョだろうが女好きだろうが腹黒だろうが何でもいいと言うほどに。

 たまに悪い男に騙されないだろうかと心配になってしまう。

 今のところ、イケメンじゃないからパス!と一蹴されている男子生徒を多数目撃することくらいしかないのである。

 だから……まぁ……一応、自衛はできている……のだろう……と、思いたい。


「……もし、召喚した存在が、ガンダルヴァのようなイケメン幻獣とかだったらどうなるのやら。」


「え?イケメンな幻獣?もちろん恋愛対象内でっす!イケメンな精霊とか、イケメンな妖精とかも全然イケる!」


「……まぁ、そうなるだろうなとは思った。」


 本当に可愛らしいのに面食い少女だ。幻獣や妖精、精霊といった種族を呼び出した場合、それらとも恋愛を開花させようとするとはね。

 イケメンなら何でもありなのかこの子は……。


「ライラもなかなかのイケ女だよね〜……ライラがもし男だったら絶対に狙ってた。……そういえば、性転換の魔術ってあったよね。」


「人を男体化させようとするんじゃない。」


「あははは。冗談だよジョーダン。」


 なぜだろうか?冗談ですまない目つきをしていたような気がしてならない。

 友人の知られざる性癖が暴露されていないか、これ?


「ライラなら、どんな存在を呼びたい?イケメン系?キュート系?ビューティー系?」


「何で選択肢が容姿ばかりなんだ。私が呼びたいのは自身と相性がいい存在のみだよ。火属性、土属性、闇属性の三つの属性のどれかだったらいいなと思ってる。」


「え〜……夢がな〜い……」


「夢がなくて結構。そもそも私はこう言う性格さ。良くわかっていただけたかな?」


「相変わらずだなぁ……」


 呆れたような表情で私を見てくるアイリスに、別にいいだろうと鼻を鳴らしたのち、再び教室の外を見る。

 すると、そこにはギルドマスター兼、ユーフォルビア学園の学園長がいた。


「あ、学園長。」


「え!?どこ!?」


 学園長とポツリ呟けば、アイリスがすぐに食いついた。

 そういえばアイリス、学園長のファンクラブの一人だったな……。

 ここの学園長の名前は、メレディス=ノーブルカルセドニー。

 前学園長の跡を継ぎ、20歳と言う若さで学園長とギルドマスター、そして、陸上領土国王という三種類の職をこなしている青年。

 アイリスがファンクラブに入っている時点でお察しではあるけど、彼は絶世の美丈夫と言われても過言ではないほどに顔が整っている。

 三つの職業をこなしているだけあって頭も容量も良く、身体能力や、ギルメンとしての実力もトップクラスというユーフォルビア学園のパーフェクトマーマンなアイドル的存在だ。

 多くの女教師や女子生徒曰く、パーフェクト以外の何者でもない世界一のイケメン……とのことらしい。

 なんだっけ……?世界イケメン大全集とか言う雑誌で、毎度世界一のイケメンマーマン国王って紹介されてるんだっけ?

 そんな学園長は、海洋の国・アトランティアに暮らしている国王、メイルシュトム=ノーブルカルセドニー国王陛下の第二子で、私が暮らしている海洋の国・アトランティアの陸上領土を収めている。

 海洋の国・アトランティアは、二つの領土に分かれている。

 海洋領土と陸上領土の二種類の領土だ。

 海の中にある海洋のアトランティアを治めるのはアトランティアの第一子であり、長女のメル様で、こっちの陸上領土を治めているのが第二子であり、長男であるメレディス様。

 この世界で一番大きな国である海洋の国・アトランティアは、複数の王で統治する必要があり、陸上領土は頭脳、運動神経、カリスマ力を一番求められるとされている。

 まぁ、だからメレディス様……メレディス学園長は、それを満たしている皇子であるため、かなりすごいお人ではあるのだ。


「はぁ……やっぱり学園長イケメン……♡」


「でもゴールインは狙わないんだね。」


「当たり前じゃん!!あんな雲の上……じゃないな。人魚の王子だし……。海底……?うん、海底だ。あんな海底の宝と言っても過言ではないお方の隣を狙うなんてできるはずないじゃん!!流石にそこは弁えるよ!!」


 ……イケメンなら誰でもいいわけじゃないんだな、と少しだけ安心する。

 王子まで狙おうとするほど無謀ではないと言うことか。


「それに、学園長はすでに番にしたい人がいるって話だもん。人魚が一途なのは授業で学んだし、番にしたい相手がいるなら、私たちはそれを応援するよ。まぁ、でも、あんなイケメンマーマン様に番にしたいと望まれるのは正直言ってめちゃくちゃ羨ましい!!」


「羨ましいんだ。」


「だってイケメンだよ!?パーフェクトマーマンだよ!?あんなパーフェクトマーマンに溺愛されるって最高じゃない!!」


「………そっか。」


「いったいどんな人なんだろうね!国の外に暮らしてる女性かな?それとも海洋の国に暮らしてる女性かな?別の国の王女様かな?」


「……誰だろうね。」


 興奮気味に、学園長が求めている女性を想像してはくねくねしてるアイリスの姿に軽く苦笑いをする。

 なぜなら私は知っている。彼が求めている存在が誰なのかを。

 まぁ、だからと言ってそれをアイリスに教えるつもりはないんだけどね。


「まぁ、学園長が番にしたい女性に関しては今は置いといて……。明日になったら召喚術の実技試験だから、今日はサモナーコースの授業は早く終わるでしょ?だから放課後、街に遊びに行こうよ!」


「いいね。」


「んね!だから出かけよ出かけよ!」


 かなり話が脱線していたけど、どうやら街に出ようと誘うために話しかけてきていたようだ。

 断る理由もないし、アイリスの誘いに素直に頷けば、アイリスはすごく嬉しそうに笑顔を見せてきた。

 あそこにも行きたいし、あそこにも行きたいし、海が見えるカフェでお茶もしたいし……と指折り街に出たらやりたいことを口にするアイリスの姿に、小さく笑みを浮かべながら再び外に目を向けると、学園長と視線が絡み合った。

 あ……と小さく呟けば、彼はふわりと私に微笑みかけたのち、軽く手を振ってユーフォルビア学園の中へと入って行った。

 それを見て思わず苦笑いをする。何でよりによって、彼は私に惚れるのかね……。




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