第4話 魔物に遭遇


 無事冒険者カードを貰うことができた僕は、早速ダンジョンに行く事にした。

 駆け出しの冒険者の場合、大体は冒険者掲示板と呼ばれるものを確認し、レベルごとにダンジョンに挑戦する人が多い。

 上級者にもなると苦戦することが少ないのと、臨機応変な対応をすることができるのでレベルは気にしない人が多いらしい。


 ちなみに、僕の場合はどちらに属するのだろうか。冒険者登録もしてないし、ダンジョンでもあまり活躍はできていなかった。

 だが、レドルンドのパーティーは町でも強いと評判のパーティーだったので、ダンジョンの挑戦回数は負けてる気がしない。


「安定をとるのが一番かな」


 一からやり直したいと言う気持ちもあったので、掲示板に載ってるレベル1のダンジョンから挑戦することにした。

 幸いなことに、この掲示板はギルドだけでなく、町のあらゆるところに設置されている。

 なので、冒険者登録をすることができた僕は実質もうギルドに行かなくてもいいと言うことになる。

 パーティーを組むなどの事をする場合は、別だが今の僕の状態では到底想像もつかない。

 夢のまた夢の話だろう。


 そんなことを思い、僕は掲示板の方へ向かった。


 掲示板には、レベル1からレベル10までにそれぞれ振り分けられたダンジョンが表示されていた。

 それ以外にも、薬草採取などの依頼や未開拓ダンジョンなど様々な情報が載っていて、冒険者でなくても利用することが多い。


 もし僕が掲示板を見ているのを他の冒険者が見ても、特に怪しんでは来ないだろう。


 そう思い僕は周りを気にせず掲示板に集中した。


 ――――――――――――


 ラットダンジョン。

 数あるダンジョンの中で最も難易度の低いダンジョンであり、ダンジョン内は駆け出しの冒険者で溢れている。


「うわあ!」


 ダンジョンに足を踏み入れると、目の前にステータスが表示された。


 ――――――――――――


 ヴィリー・ルート 15才 男

 レベル:1

 MP:10

 攻撃力:30

 防御力:30

 素早さ:30

 スキル:透視


 ――――――――――――


 自分でも自覚できるほど情けない声がダンジョンに響いた。

 恥ずかしさのあまり、周りに冒険者がいないことを確認しダンジョンの奥へ進んだ。


 「ペチャッ……ペチャッ……」


 開始早々何か水が落ちているような音が聞こえ始めた。

 周りが静かな分、余計音が響き恐怖感が増している。

 初めての一人でダンジョンという事もあり、慎重になっていたので油断をする事はもちろんしない。


 そっと足を前に出し、慎重な赴きで音の鳴る方へ進む。

 少し進むと、壁がうっすらと反射した光に照らされている事に気づいた。

 光源が何処にあるのか気になったので、そのまま光の反射している方向へ進んでいく。

 進むめば進むほど、壁に照らされている光が明るくなっていき、最終的に地面に転がってる丸い光源を見つけた。


 その光源は、肉眼で長時間見るのが厳しいほど強い光を放っていた。


「うわ! 眩しい!」と、僕が思わず声を出すと、丸い光源は光を発しなくなってしまった。

 辺り一面が一気に暗闇に包まれてしまい、方向感覚が狂いそうだった。

 方向感覚を失わないよう、しっかりと地に足をつけ驚かずその場から動かなかった。


 ただ、視界は真っ暗でなにも見えない。

 つまづかないようゆっくりと足を前に出し、手を横に振り回しながら壁に触れられる位置まで移動した。


 ホッとした僕は、壁に沿って手を離さずに前へ進んだ。


「このまままっすぐ行けば、丸いのが足に当たるはず」


 無意識に、腰を引きながら前に進んでいると水風船のようなものを踏んだ感覚がした。

 視界が見えない僕は、それを何かに吸い込まれてしまうものだと勘違いし直ぐに足を上げた。


 一度落ち着き、さっきの丸いやつだということを自分に語りかけもう一度足で探った。


「ムニョン……」


 足で探るとそんな感覚がした。

 真っ暗なので、断定はできないがおそらく魔物のスライムだろう。


 スライムは、魔物の中でも一番ランクの低いFランク級。

 駆け出しの冒険者でも足で踏み潰して倒せる事で有名だ。

 そんなスライムだがしっかりとスキルがあり、それが先程の発光である。

 発光は、自身の体からものすごい光を出し、自分の視界を確保する。

 だがもし人の気配を察知すると、体からの発光を止め、急に強い光で照らされた人間の目の性質を裏取り、相手の視界を奪う。


 こんな少し厄介なスキルがあるが、上級者であればスキルや魔法で簡単に対策することができる。

 スキルが一つしかない駆け出しの冒険者が苦戦してしまう事はしょうがない。


 スライムだとわかった僕は、そのまま足に力を入れ踏み潰した。


「キュゥゥゥゥゥゥウン……」


 弾けたような感覚の後に、こんな可哀想な鳴き声が聞こえた。


 少しだけ、罪悪感に襲われた。


 その後、僕の視界は元に戻った。

 


  ――――――――――――


 ヴィリー・ルート 15才 男

 レベル:1

 MP:10

 攻撃力:30

 防御力:30

 素早さ:30

 スキル:透視


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