自己紹介ってタイミング無くすとし辛くなると思うんです。

前略

天邪鬼なお父様

猫たんが急にしゃべりました。

実家の猫たちはいつになったら喋りますか?


★異世界にトリップしましたが、何の能力も無くて生きるだけで精一杯です!★


「貴方、察しが悪すぎじゃなくて?

ちょっと考えればわかる事じゃない。

おバカさんを相手にしてる暇は無くてよ。」


「大変申し訳ございません。」


即座に謝罪をいれるが、この猫たん口悪いな。

猫たんだから許されるんやぞ。

猫たんだからだぞ!


「まあ、いいわ。

シャル、貴方は許さないわ。


この人間を気に入ったなんて勘違いをするなんて、どういう事?


上位使い魔の私が、撫でる技術しかない人間を気にいるなんて勘違いはしないで頂戴。」


猫たんは空色の眼の彼を睨んだ。

ちょっと聞き捨てなりませんね。


撫でる技術気に入って頂けたんですか?

それは、もっと撫でていいんですか?


「ルゼル、普段から撫でられるのを嫌うお前が、撫でさせてやっている時点で気に入っているんだろ。」


「それと此れとは話が別ですわ!」


内心で猫たんにデレデレしていると、二人は口喧嘩を始めてしまった。


イケメン無表情な癖に割と話しするなこの人…

てか、話し進まないなー。

どうしよう、保護してくれるらしいし話を切り出してみようかな。


でも、こう、3人でいる時に二人は会話で盛り上がって一人だけ話に入れない居心地の悪さを感じる。


だって、二人して普段の気に入らないことをぶつけ合ってるんだもん。


へー、空色の眼の彼は疲れると猫たんの肉球プニプニするんだ。


へー、猫たんは寝る時は猫たんようベッドで寝るのに朝起きると彼の顔の横で寄り添って寝てるんだー。


へー

へぇー

ふーん…


いや、終わらないな。

ええい!度胸をだせ!!


「あのー、結局どうしたら良いんですか?」


私が声をかけると、二人はこちらを見た。

空色の眼の人、無表情だけどヤッベ忘れてた!って雰囲気出てるからな?


「すまなかった。

先ずは能力値検査を受けてもらう。」


「能力値検査ですか?

どんな事するんですか?」


「お前にどの適性があるかを調べる。

適性内容により、仕事の割り振りや待遇などが変わる。」


へー、適職診断みたいなものかな?

保護対象と言っても無償でして貰えるわけないよな。


いつ帰れるかも分からないし、仕事が貰えるのは有難いよな。


場合によっては、聖女!みたいなのもあるのかな?

異世界トリップの王道よね。

聖女(29歳)って字面は良くないが、妄想なら許される!


「分かりました。

その能力値検査は何処で受けるんですか?」


「城だ」


「城…それは、奥に見えるあの建物の事ですかね?」


「そうだ、本来であれば移転魔法を使うがお前に魔力耐性がどれくらいあるか分からないからな。


今回は徒歩で向かう。」


歩く事自体は良いんですがね。

視界に入れないようにしていたが、やはり城だよなぁ。


あそこに行くのか。


なんだろ、若ければキャッキャできるのかもしれないけど…不安しか感じない。


城って事は、王や偉い人いるんだよなぁ。

粗相しないように気をつけなきゃいけないんだろうが、マナーすら分からない。

日本のマナーで通じる??


不敬だって突然牢屋行きになったりしない?


私が不安感に陥っているが、猫たんは欠伸をひとつした。

興味がなさそうだ。

私も猫たんになりたい。


何も言わなくなった私を見て、空色の眼の彼は立ち上がり私の前に跪いた。


「危害を与えないように約束しよう。」


たった一言、その一言で安心してしまう私もだいぶチョロいかもしれない。


ただ、初恋の人と同じ眼の色の彼…

それだけでも安心してしまうのだ。


「わかりました。

よろしくお願いします。」


そう言うと、彼は立ち上がり私に手を差し伸べた。


「ああ、誓うよ。

では、城へ向かおう…」


目の前の彼は無表情から少し表情を崩した。

消して笑ったとかではない。


怪訝そう顔をしたのだ。


「お前の名はなんだ…?」



…うん!

自己紹介すらしてないもんね!


でも、私も言いたい事あるんだよね!

おまんも名乗ってねーから!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る