第49話

「はい、兄さん。あーん」

「あ、あーん」


 花蓮にカレーをあーんされる。


 有無を言わさない瞳でスプーンを向けられるので何も言えない。


「じゃあ、こっちもあーん」

「あ、あーん」


 同じように楓からもあーんされる。


 こちらも案の定じぃっと慈しむように僕の事を見ている。


 どうしてこんなことにいなっているのかというと、僕が家事をやってしまったことが原因だ。


 二人は僕の頭をひとしきり撫でた後、やあっぱり僕が家事をするのは我慢ならなかったみたいで、今日一日は本当に何もさせてもらえないようにされてしまった。


「お口汚れちゃったね。はい、拭きますよー」


 ティッシュでカレーで少し汚れてしまった口を拭かれる。


 何故だか楓は恍惚とした笑みを浮かべている。


 そのままカレーを食べさせてもらい、サラダ他にも汁物もすべて食べさせてもらった。


「あ、ありがとね。二人とも」

「気にしないでください。兄さん」

「そうだよ。私たちがやりたいって言っているんだから」

「そっか。でもありがと。じゃあ、僕はお風呂に入ってこようかな」

「お待ちください。兄さん。私たちも行きますよ」

「え?」

「だって、言ったではないですか。兄さんの世話は私達がしますと。もちろんお風呂も例外ではありません」

「で、でも」

「良いですよね?」

「..........はい」


 にっこりとした笑みを浮かべられると何も言えなくなってしまってこくこくと頷いてしまう。


 そのまま二人にお風呂場へと連れて行ってもらう。


 流石に隠すところは隠させてもらった。


 花蓮は兎も角、楓は僕の物なんて見たくもないだろうから。


 三人で入ると流石に狭いけれど、二人は気にした様子もなく僕の体を洗い始める。


「前は流石に自分でやらせて」

「どうしてもですか?」

「どうしても!!」


 そこだけはどうにか死守して自分で洗うことに成功するけれど、他の部分はすべて綺麗に洗ってもらうことに成った。


 途中、花蓮と楓の胸がむにゅむにゅと形が変わってしまうくらいくっついたことがあり、僕の理性は溶けて仕舞いそうになるけれど素数を数えてどうにか事なきを得た。


 今は、僕の膝の上に花蓮、対面に楓という形で浴槽に浸かっている。


「今日はこのまま兄さんには何もしないことを学んでいただきますから」

「そうだよー。桜君への罰だからちゃんと言うとおりにしてね」


 二人が甘い言葉で僕をよりダメにしてくる。


 ただでさえ花蓮が毎日家事とかいろいろしてくれていてダメな兄なのに楓まで僕を甘やかしてしまったら本当にダメになってしまう。


 今日はそのまま僕が眠りに着くまで二人はずっと甲斐甲斐しく僕の世話をし続けた。

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