第44話

「兄さんはやっぱり国宝級ですね」

「そうね、すっごく可愛くて子宮がきゅんきゅんしちゃってどうしようもなくなっちゃった」

 

 兄さんが私達に一生懸命、日焼け止めを塗ってくれたことに私は母性本能のようなものが爆発寸前です。


 それに、兄さん自ら触ってくださったという快感で、性欲という名の獣が解き放たれてしまいそうです。


「さて、私たちも兄さんのあとをついていきましょうか」

「そうね。夕顔君を一人にしてしまってほかの女が虫のように寄り付いてしまうのも問題だからね」


 そうなのだ。兄さんから放たれる甘い蜜に虫たちが寄り付いてしまう。


 その前に私たちが兄さんに付いていないと。


 そう思い、一歩踏み出そうとしたときでした。


「ねぇ、君たち」

「.............」


 はぁ、面倒くさい。


 無視しているだけで何処かへ行ってくれるなら、私達だって何もしないはずなのになぜ寄ってきてしまうのでしょうか。


 まぁ、人間ではないのでしょうがないですね。だって人間であれば頭を使えますもんね。


 案の定私たちに無視された、馬鹿どもは段々とむきになっていきます。


「ねぇ、あんまり無視されると俺たち悲しんだけれど」

「そうだよ、こういうところに来たんだから俺たちと楽しいことしようよ」


 そういって、馬鹿な獣の片方が楓に触った瞬間でした。


 彼女は触られた方の手を掴んで、背負い投げの形で投げ飛ばします。


 私は非力なので、あぁいうことはできませんが。


「私に触れるなよ、蛆虫。私に触れていいのは夕顔君だけなんだから。虫に触られると蕁麻疹が出るから。キモイんだけれど」

「そうですね、身の程を弁えたほうがよろしいかと。虫は虫らしくしていた方が身のためですよ。楓は優しいので、あれだけで済ましてくれましたけれど、私はそれだけでは済ましませんよ?社会的に殺して差し上げましょうか?まぁ、早く立ち去ってくれるのなら、考えなくもありませんが」


 私と楓はなにも言わず目だけを合わせる。


「わ、分かったから。おい、早く起き上がれ」

「え、あ」


 男共は、怯えながら逃げるようにして去っていく。


「花蓮、あんたのくせに優しくない?あれで許すの?」

「え?何を言っているんですか?私は考えるって言ったんですよ?」

「性格、悪」


 私は考えた結果、許さないことにしました。


 残念でした。


 そう思っていましたが、


「どうしたの、二人とも。大丈夫」


 兄さんが少し騒ぎになっているのに気づいて戻ってきてくれて、心配もなさってくださいました。


 兄さんの私を心から心配してくださっている顔。


 凄くきゅんきゅんしてしまいます。


「ごめん、僕が逃げちゃったばっかりに」

「違うよ、なにも夕顔君は悪く無いから」

「大丈夫です。兄さん」


 まぁ、兄さんがこんなに心配してくれたのですから、半殺し位で許してあげましょうか。



 

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