第8話 甘い考えの三人組

 あれから3日…

 魔王を倒す旅で着いてきた3人だが、未だに魔物との戦いに参加はするが…倒す迄はいかなかった。

 魔王は倒せるが、魔物は倒せねえのかよ?

 俺は頭が痛くなった。

 ミクは確か…自作自演の襲撃時にドラゴントゥースウォーリアとうまく立ち振る舞っていたよな?

 何匹か倒していた様な気がしたが、まさか骨だから戦えていたのか?

 ちなみにあの骨は倒しても経験値は一切入らないので、ミクもマミもユウトもレベルは1のままだ。

 まぁ…熟練度位は上がったとは思うが。


 「はぁ…確かユウトは言ったよな、あのウサギは無理だが魔物なら殺せると。」

 「あぁ…言ったが。」

 「それで、何故魔物は逃げて行った?」

 「自分が躊躇った所為だ。」

 「ちなみにあの魔物は、ギルドから依頼されていた討伐対象の魔物だったんだが?」

 「そうだったのか…」


 ユウトの奴…意味が解ってないみたいだな。

 そしてミクもマミも…別な方向を見ながら笑っていた。

 甘やかしているつもりは無かったんだが、甘やかしていたのかなぁ?


 「今日はあそこに見える村に泊まるから、そのつもりで!」

 「サクヤ…どうするんだ?」

 「3人には現実を知って貰おう。」

 「なるほど…それだと、甘えた事は言わなくなるかもな。」


 俺達は村に辿り着いた。

 ここはスローヴィルの村という場所で、セルリアがカスケード城に来る際に立ち寄ったという村だった。

 王国から近い場所にあって、住民は割と穏やかだった。

 そしてこの村では交代制で下級冒険者が滞在しているという事で、治安も割と安定しているという話だった。

 俺達は宿屋に行くと、恰幅の良い女将に話し掛けた。


 「いらっしゃい! 銀河の白鳥亭へようこそ! 此処は食堂と宿が両方あるよ。」

 「ここの宿泊料金は幾らだ?」

 「食事なしなら1泊1人銅貨10枚だ。 食事付きなら2食付いて銅貨25枚だが?」

 「サクヤ、ここの料理は量があって美味いぞ!」

 「それは楽しみだ!」

 「おや? お嬢さんは以前うちに来てくれた事があったね!」

 「あぁ、短い間だが…また頼む!」

 「では宿泊は2人で食事付きで…銅貨50枚で頼む!」

 

 俺は金を支払うと、ミク達は不思議そうな顔をした。


 「私達は5人だけど?」

 「俺とセルリアの分だけだ。 お前等は外で寝てろ。」

 「なんでよ? 私達は仲間でしょ‼」

 「仲間だよ、だから?」

 「仲間なら、宿代くらい…」

 「この村は見張りもいるから、外で寝ていても安全だから安心しろ。」

 「そういう事じゃなくてさ、女の子を外で寝かせるつもりなの?」

 「セルリアは宿に泊まれるが?」


 俺は意地悪く言った。

 さて…いつ気付くかな?


 「何か勘違いしているみたいだが…何の仕事もしていない、ただ着いて来るだけで何故お前等の金迄払わないといけないんだ?」

 「それが仲間でパーティーだからでしょ!」

 「だって、お前等何も仕事してないじゃないか! 先の討伐対象の魔物…3人とも取り逃がしただろ?」

 「あれは…まだ慣れてなくて。」

 「言い訳だな、チャンスはいくらでもあった。 お前等が躊躇をした所為で取り逃がしたんだよ。」

 「次は頑張るから…」

 「あれは1匹につき、銀貨1枚が報酬だったんだよ。 この宿なら泊まれる分はあった…それを逃した。 俺とセルリアは俺が11匹、セルリアは9匹仕留めている。 ちゃんと仕事をしているぞ。」

 「だから次こそは…」

 「次なんてねぇんだよ! それが解ってないみたいだから外で寝ろと言ったんだ。」

 

 3人は立ちつくしたまま下を向いていた。

 そうやっていれば、俺が優しく声を掛けてくれると思ったんだろう。

 なら、救済処置を出してやるか。


 「わかった…では、マミとミクの2人は夜の相手をしろ。 金が無い上に仕事もしてないんだ、泊まりたいならそれ位の事をしてみろよ。」

 「そんな事…出来る訳ないでしょ‼」

 「なら、もう1つの条件だ。 2人は宿に泊まらせてやるから、じゃんけんをして負けた奴を決めろ。」

 「それなら、自分が負けた事にして良いから…2人は泊めてやれ!」

 「ユウト…」

 「そうか、最後まで話を聞かずに決断するとは恐れ入ったよ。 お前、勇気があるな! ミクもマミも喜べ! お前達の為にユウトは奴隷に売られる事になったから。」

 「は?」


 3人はまだ理解出来ていないみたいだった。

 間抜けな顔で呆けていた。


 「それはどういう意味だ⁉」

 「街や村の施設を使うには金が掛かる。 その金を支払うには自分達で討伐をするか、自分を売って仲間の為に金を作るかだ。 ユウトが幾らで売れるかは知らないが、これでミクもマミも当分仕事をしなくてもユウトを売った金で生活出来るぞ!」

 「サクヤ、あなた本気なの?」

 「何か間違った事を言っているか? なぁ、セルリア?」

 「サクヤは何も間違った事は言ってないぞ。」

 「どうするか決めろ、外で寝るか、相手をするか、奴隷に売られるか…まぁ、もう1つ手はあるが。」

 「もう1つって?」

 「このまま大人しく城に帰るかだ。 ただ、このまま城に帰ると…どういう扱いを受けるかは分からないけどな。」

 「サクヤ君、それはどういう意味なの?」

 

 これも説明しないと解らないのか…。


 「異世界召喚された者が特別視される理由は、魔物や魔王を討伐する為に素晴らしいギフトが与えられる。 そのギフトが、召喚された特別な者だからと言って何もせずに城に居座るだけなら不要とみなされて、処刑されるか奴隷落ちになる。」

 「そんな事になるなんて事は…」

 「働ける年齢なのに、働きもしないで家でゴロゴロしているだけの奴が何の役に立つ⁉ 自分は特別な存在だから、何をしても許されるってか? それがマサギと同じ事を言っているという事に何で気付かない?」

 

 そして俯いていれば、俺が今日は良いぞ~何て言うのを待つつもりだろが、俺はそこまで甘くない。

 だが、他の救済処置は用意しておいてやろう。


 「夜の相手は嫌で、城にも帰りたくない、奴隷としても売られるのを嫌がり、外で寝るのも嫌か。 なら救済処置として、幾つかの助言をやるよ。」

 「それはどんな?」

 「まだ日が高い…先程の魔物を見付けて討伐をするか、もしくは村の中で困っている人に声を掛けて仕事をするかだ。 食事付きは無理かもしれないが、宿に泊まる事くらいなら出来るんじゃないか?」

 

 救済処置をしてやったのに、何故まだここにいる?

 もしかして、俺が許可するとでも思っているのか?


 「言っておくが、幾ら待っても考えは変わらないからな。 先程の4つの条件が出来ないのなら、自分達で何とかしろ!」


 俺は女将から部屋の鍵を貰うと、セルリアと共に部屋に向かって行った。

 背後を見ると、3人は宿から飛び出して行った。


 さて、どうなるだろうな?

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