　カスケード城のランドール国王陛下は、玉座の上で悩んでいた。

　「まさか勇者が………」

　「ですがお父様、あのような性格の勇者様なら…」

　「分かっておるサネアよ。　だが…？」

　頭で納得していても、心では納得をしている様子では無かった。

　どの世界でも共通して、勇者は魔王を倒すという存在になっている。

　なので、国王陛下のこの状態は当然の反応なのだが？

　「それに、サクヤ殿は勇者ではありませんが…勇者の代わりに魔王を葬ったという実績があります。　彼のあの聖剣や魔剣の所持数にあの戦いを見れば…」

　「確かにサクヤ殿の強さは尋常では無かった。　それは分かるのだが…」

　国王陛下は、何故か勇者を支持している感じがする。

　だが…マサギが仮に勇者として覚醒したとしても、果たして世界を救うという目的を果たすかどうか…いや、果たせるかどうか？

　この世界はどうやら…過去にも異世界から来た勇者が世界を救ったという伝承が残っているらしい。

　それは当然、娯楽の少ないこの世界では…勇者＝ヒーローとして扱われて子供達に聞かせる物語として伝わっているのだろう。

　それだけに…勇者の起こした問題は大きいのだ。

　国王陛下はまだ国民に勇者の件は発表していない。

　簡単に発表できる内容では無いからだ。

　「国民にどう発表すれば良いかなのだがな…」

　「伏せておく事は出来ませんの？」

　伏せておく…それが一番正しいのかもしれない。

　下手に世界に発表して混乱を招くような事は避けたいし、何より発表する事により国が非難される場合があるからだ。

　何故、非難される様な話になるのか？

　召喚した王国側が勇者を上手く導けなかったと世間は感じるからだった。

　国王陛下の苦悩は、まだ続くのであった。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい