第八話

「うしっ!過去最高点!次は誰が歌う?」


「ハイハーイ僕が歌う〜!」


本当に来てしまった……カラオケに。


「〜〜♪〜〜!!」


「お〜ノリノリだな(笑)」


あの後柊とツインテール(名前が出て来ない)の二人


に無理矢理カラオケに連れてこられた。というか男三人で遊びに来るってなぁ……まぁ女子が居ても話せやしないけど。


 


 しかし、カラオケなんて何年ぶりだろうか。最後に行ったのは家族とだったから……あれ?友達と行った事あるっけ?あれ?ともだ……ち?もしかしなくても、友達いた事ない?そんな馬鹿馬鹿しいことを考えてるうちに柊が歌い終わったようだ。




「あ〜あ。七十五点かぁ。」


そこはいつも通り百点であれよ!と思わずツッコミたくもなったが、少し安心した。そうやはり完璧な人間などいないのだ!!




「はい、楓。」


そういって柊がマイクを差し出してくる。


「キョトンじゃないでしょ。歌って?」


ああそういうこと……じゃなくてというか。


「ヤダ。」


「えっ!?でもここカラオケだし?」


お前らに無理矢理連れてこられただけだけどな!


「大体俺は聞く専だし。」


本当に歌うことあまり無いし。


「まぁ楓が嫌なら仕方ないよね……。」


と柊がシュンと項垂れてみせた。子犬かよ。本当にこいつはズルい。そんな顔されたら断り辛い。面倒くさいことになったなぁ……


結局俺は柊からマイクを奪い取り、歌う歌を予約した。




「ああもう歌えばいいんだろ、歌えば!でも下手でも絶対に笑うなよ!」


俺が勢いでそういうと柊はパッと表情が変わり一気に笑顔になった。


「えっ嘘歌ってくれるの!?やった〜!!うん絶対に楓が絶望的に歌が下手でも、僕は絶対に慰めるよ!」


「それ俺が歌が下手なの前提じゃねぇか。」


失礼な奴だな。


「なるほどこれが駆け引きか。」


横のツインテールはなんかブツブツ言ってるし……


俺はそいつを尻目に歌いだした。




「〜〜♪」


意外とリズムに乗れるかも……悔しいけど歌うの楽しいかもな。柊にそう思わせられるのは少し癪だが。


そう思っているうちに歌い終わったようだ。




その後


「ねぇ歌下手なの嘘じゃん!上手いじゃん!」


柊がそう叫ぶので、ふと画面に目をやるとなんと


九十六点だった。もしかして俺は上手いのか…?




「お、固まってるけど。おーい戻ってこーい。」


「自分でも驚いちゃってる!?楓戻っておいでー。」


「はっ…俺は今何を?」


ちょっと言ってみたかったセリフ。


「オレ達がお前に今歌ってもらおうとしたんだよ。(嘘)」


「ちょっと翠!?」


「ってなる訳ねぇだろ。」


まだ俺が歌ってた曲の点数が画面に残ってるっての。


「全くアホ……」




「ねぇ僕、楓の歌声好きだな。もう一曲歌って?」


「ヤダ。疲れるのがヤダ。」


こちとら体力もやしなんだぞ。


「オレからもお願い(上目遣い)」


こいつは見た目だけは美少女だし……上目遣い


クソっ可愛いっ!!


「だが断る。」


「「そこをなんとか!」」


「歌わない!」


俺が二人に迫られて、歌わせられそうな瞬間


ドアが静かに開いた。


「あの〜お客様もうお時間ですが……」


「「延長で。」」


二人がすかさず答えた。先程といい息ぴったりだな、こいつら……って


「はぁ!?延長!?」


「さぁ楓、歌ってもらうよっ!」


「ほらよ、マイク。」




そうして俺は二時間ぶっ続けで歌わされたのだった。

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