第四話

こんにちは楓です。俺は現在学校一の人気者と名高い柊君と一緒に帰っております。


何故一緒に帰っているか。それは、自己紹介が終わった後の話なのだが……




「さて、お互いの事を知れたわけだし!」


と先程まで涙目になっていた柊が急に叫んだ。


一瞬クラスメイトのほとんどがこちらを見たが、本人は全く気にしていない。いや、気付いてないだけか。




「急に大声出すなよ。まわりを見てみろ。」


「えっ?まわり?」


若干戸惑いつつも柊はまわりを見渡した。そしてしばらくして状況を把握し、柊は急に恥ずかしくなったのか顔どころか、耳まで赤くなった。


こいつでもこんな顔するのな。


ちょっと面白いな、茹でダコみたいで。




「……どうしたんですか柊君。赤いですけどもしかして熱ですか?保健室行きますか?」


「楓ちょっと面白いとか思ってるんだ!からかわないでよ!」


柊がムキになり、言い返す。今度は怒りで顔が真っ赤になっていた。あっこれヤバい奴だわ。




「よーし。お花を摘みにでも出掛けてくるか〜。」


「まぁ楓君落ち着きなさい。席へ戻るのです。あとそれ女の人が使う言葉だから。」


柊がにこにこしながら語りかけてくる。


ツッコミを添えて。


にこにこしながらとは言っても、怒っているのは分かるし、圧を感じる。この場から逃げ出したいけど多分俺より柊のほうが足が速いのですぐ追いつかれるだろう。俺は柊に従い、席へと戻る。




「取り敢えずですね……謝って!さっきのこと謝って!」


謝れと言われても俺は悪くないんだけど。短気か!


でもずっと謝れと言われるよりマシか。


「すみませんでした。」


「じゃあ、許す代わりに」


ゴクリ。なんだ?何をされるんだ!?パシリに使う気か?


「僕と今日一緒に帰りなさい。」


「はい?」


思ったより軽かったな。俺はてっきり虐められるのかと。というか大体それ……


「こんなことなくても一緒に帰ろうとしてただろ。」


「あっバレた?」


そう言うと、柊はいっけねみたいな顔になり、その後少し舌を出し笑う。さっきまであんなに怒っていたのにいっけね(笑)じゃねぇよ。全く……


……ということがあったわけです。




しかも、準備を済ませ俺が帰ろうと!帰ろうとしたその時でした。なんと柊は、鞄を背負い待ち伏せていました。どうやら本気だったらしい。


その時の柊には犬耳と尻尾が見えたような気がした。






なんで俺と一緒に帰りたいだなんて思うんだろう。


前は対等な関係だとか言われたがどうも引っ掛かる。


多分それは言い訳で、なにか違う理由があるのではと


俺の勘がそう言っている。


「なんで俺に構ったり、それに帰ったりするんだ?


お前の目的はなんなんだ?」


それとなく聞いてみた。


「あ……に……たよ。」


柊が俯向いてぶつぶつと喋る。だが全然聞き取れない。


「へ?いや何言ってるか分から無いんだが……」


「会いに来たよ。やっぱり君は可愛いな〜!こはる〜。」


は?と柊の足元を見ると、まだ小さなトイプードルがいた。なんだ、犬のことだったのか。分かっていたことだけど柊と犬が戯れているだけでも絵になるな。


イケメンめ……




「その犬どうしたんだ?」


「ああ、この子はこはるって言ってこの家で飼われてる犬なんだけど、僕がこの家の前を通ると、僕を見つけて飛び出して来ちゃうんだよねぇ。」


と柊が犬の説明をする。こはるか……ちょっと可愛いな。柊にもよく懐いてるし。




「すみません!うちのこはるが!」


と飼い主らしき女性が出てきた。とても上品で優しそうな雰囲気をまとっている。


というか今気付いたけど家でかいな。


「ってあら、柊君じゃないの。今日はあの子は一緒じゃないのね。その子もお友達?」


「いえ、ただのクラスメイト……」


「はい。今日は一緒に帰ってて。」


「そうなのね。じゃあ私はお邪魔だったかしら。


あっそうそう。今度クッキーでも焼こうかなと思っていたところなの。休みの日にでもいらっしゃい。


三人でね。」




「えっ俺もいいんですか?」


「勿論。貴方のことも知りたいしね。」


と目の前の女性が微笑みながら言う。


「わぁ!ありがとうございます!美紀さん!」


「あ……ありがとうございます。」


美紀さんって言うのかこの人。


「じゃあまた今度ね。」


「はい!」


美紀さんと別れ、また二人で歩き始めていた。


そういえば。


「そういえば美紀さんが言っていた、あの子ってなんなんだ?」


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