12話 With You

 痛みを感じない。意識がある。そう認識した美香は目を開けた。


「……え?」


 美香の目の前には、自分を抱き抱えたヴィクトルの姿が映っていた。


「おい、無事かっ?」

「……」


 ヴィクトルはそっと美香を立たせた。周囲は土埃がまだ舞っていて、まるで霧みたいだ。


「……助けてくれたの?」

「……っ」


 何故かヴィクトルは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。その視線の先を辿る。


「……!!」


 見ると、先程まであの三人が下敷きになっていた場所に、ちょうどトラックが直撃していた。トラックが大型なため、彼女達の安否はわからない。しかし、あんな状況下で助かる確率は限りなくゼロと言っていいだろう。それはヴィクトルが苦し紛れに言ったこの言葉からも状況は察知できた。


「……すまん。もう少し早ければ助けられたんだが……」

「……っ!!」


 美香の体から血の気が一気に引いた。数歩後退しながらよろめき、震えていた。


「……?」


 美香の様子がおかしいのをヴィクトルが察知した。


「……まさか、知り合いだったか?」


 少し間を空けた後、美香は小さく首を横に振った。


「……とにかく、ここは危険だ。すぐそこに避難所を設けてある。早くそこへ行け。貴様の身に何かあれば、あの馬鹿がうるさくなるからな」

「……何で?」

「ん?」

「何でなの……? 何で私はこうなんだろ……? 私って、誰かを傷つけてしまう運命の元で生まれたのかな……? じゃあ、やっぱり死んじゃえばいいんだ……!」

「どうしたっ? 貴様様子が…」


 ヴィクトルが様子を伺おうとすると、美香は勢いよく走りだした。


「あっ、おい!?」


 避難所とは反対の方角どころか、そっちはまさに戦闘真っ只中だ。


「……ああっ、あいつも馬鹿なのかよ!!」


 ヴィクトルは頭を掻いて嘆いた。


(最低だ……最低だ最低だ最低だ最低だっ!! もう私、アルマ君にもみんなにも顔向けできないよ……!!)


 ♢


「えっ!? ミカが!?」


 アルマのヘッドギアから無線が入る。無線の相手はヴィクトルだった。


〈明らかに様子がおかしかった! 推測に過ぎんが、多分何かしでかすつもりだ! 厳しいかもしれないがすぐ止めに行け! 貴様はあの少女を守りたいんだろ!?〉


 美香が何かをしようとしている。アルマは絶対それは危険なことだと察知した。


「わかった! 絶対にミカを止める!」


 アルマは急いで走りだす。


〈……あと、可能であれば仲直りしろよ〉

「!」

〈喧嘩したんだろう? 見え見えだ。ちゃんと貴様の率直な思いを伝えろ。それで嫌われてでもいいからちゃんと言え。仲の良さというのは、本音をぶつけ合って初めて仲が良いと呼べるんだ。貴様が彼女を想っているのなら尚更だ。……僕から言えるのはこれだけだ。あとはそっちでなんとかしろ〉

「ヴィク……!」


 ヴィクトルからの言葉でアルマは目を覚ました。美香に本音を伝えた上で、彼女の本音も受け止める。それで上手くいくかはわからないが、やらないで後悔するよりは絶対マシだ。


「……ありがとう、ヴィク! オレ、ちゃんとミカに言うよ! オレの率直な思いってやつを!」


 走る速度を上げ、全速力でアルマは走る。早く美香に会うために。


 ♢


「……まったく。こんな馬鹿正直な機械人、僕が見た中では奴が初めてだな」


 ♢


 どれだけ走ったのだろうか。気づけば美香は息絶え絶えだった。過呼吸ぎりぎりで足も震えていた。もうこれ以上は走れない。あとは歩くのが精一杯だ。美香の目は涙で霞んでいた。体力が消耗していることも相まって、視界がぼやけてあまりよく見えない。

 だが、今の美香にとってはそんなのどうでもよかった。早く誰か自分を殺してほしい。ただそれだけだ。すると、美香の前に何かが降ってきた。


「……?」


 現れたのは、四足歩行する機械兵だった。明らかに美香を見ており、その証拠に赤いランプが点灯している。あそこから攻撃するのは目に見えている。


「……見つけた」


 美香は立ち止まると、両腕を広げた。


「……ねえ、私を殺して。私、生きてちゃいけない子なんだ。いるだけで誰かを不幸にしちゃう。だから、お願い。私を殺して」


 赤いランプに光が一点に集まる。多分レーザー光線だろう。それなら一瞬で死ねるし好都合だと美香は安心して目を閉じた。


(ごめんなさい、穂乃果さん……ごめんね、明里ちゃん、ちぃちゃん、康二さん、ルカ君、スクールのみんな……そして、アルマ君……)


 レーザーが今にも発射されそうだ。


(さようなら──……)


 その刹那だった。美香の耳に、がしゃあーんと派手な破壊音が響いた。何かと思い目を開けると、目の前に広がっていたのは、機械兵の頭部を真横から蹴るアルマだった。頭部は激しくひしゃげて胴体と分離した。アルマはそのまま後ろに後退し、美香の目の前で止まった。機械兵はそのまま停止し、爆発した。


「あ……」


 美香は思わず声を漏らした。アルマはしばらく爆発の炎を眺め、美香の方へと振り向いた。その表情は、とても心配そうであり、安心したかのような、そんな表情だった。

 美香が無事なのを確認すると、アルマは息を少し吸って美香に抱きついた。


「……良かった……間に合った……!!」


 振り絞って出したその声と腕は震えていた。助かって良かったと安心しているのがわかる。しばし抱いた後、アルマは美香の顔を見る。


「……話は後で聞く! とにかくここは危険だから、早く逃げてくれ!」

「……何でっ?」


 美香は掴んでいたアルマの手を引き剥がした。


「何で助けるの……!? 言ったじゃない……もうほっといてって……!!」

「ミカ……!」

「……私は、君が思うほどの人間じゃないよ……!! 無意識のうちに誰かを傷つけて、自分から動けなくて、気がつけば逃げてばっかり……ねえ? どう思う? 人生を滅茶苦茶にした人が、自分がピンチだからって助けを求めていて、それを跳ね返したばかりか見殺しにするって状況……さっきの私がそうだよ……私は、アルマ君が思ってるほど優しくない……もう優しくはないんだよ……!!」


 美香の目から涙が止まらなく溢れている。


「ミカ! お前は優しい! だってお前は…」

「やめてっ!! そういうところだよっ!!」

「!?」

「君はいつも正直すぎるよ……!! そのせいで私を心配させてるって、わからないの……!?無神経って言うんだよ、それ……!! 正直すぎて、無鉄砲で、自分のことは後回しで……君のそんなところが大嫌い……!!」

「っ!!」

「そんな君と私なんかが一緒にいても幸せになんかなれないよっ!! だから守ってほしくなんかなかったのにっ!! もうこれ以上私を苦しませないでよっ!!」


 美香はアルマに背を向け、再び走りだした。


「お、おい待てよ! ミカ!」


 アルマは美香を追いかけた。幸いにも機械兵がいなかったため、襲撃することはないがそれどころではなかった。


「ミカーッ!」


 しばらく追いかけていると、美香の速度が落ちてきた。アルマは好機と察知し、距離を縮めた。


「おいって!」


 やっとのことで美香の腕を掴んだ。


「嫌っ!! もうほっといて!!」


 美香は激しく拒絶し、振り解こうとする。


「傷つくのを恐れてんじゃねーよ!!」

「……!?」

「ミカは怖いんだろ!? 本当は怖いんだよ!! 自分も他人も傷つくのが嫌で、だから遠ざけようとしてんだろ!?」

「違う……そんなこと……!!」

「いーや違わない!! この際だからはっきり言う!! ミカは臆病だ!! 泣き虫で、怖がりで、その上心配症で、最初に否定から入る!!」

「違う……違う違う違うっ!! 私はそんなんじゃ……!!」

「怖がってちゃ何も変わんねーんだよ!! そりゃ怖いのは誰にだってあるし、オレにだって怖いことぐらいある!! 一番は、ミカを失ったらって恐怖だ!!」

「え……!?」

「ミカがいなくなったらと思うと、ここが、心がぎゅって痛むんだ!! それがずっと続くってなったら、オレには絶対耐えらんねー!! オレにとって恐怖はそれが一番で、この体が傷つくことや死ぬこと以上にこえーよ!! それぐらいオレにとってお前は大事な人なんだよ!!」

「!!」


 美香の腕を掴むアルマの手は強かった。絶対に離さないという意思の表れだろうか。


「オレは……ミカの事情なんて知らねーし、知ろうとも思わない!! オレは今の優しいミカが大好きなんだよ!! 本当に優しくないのなら、とっくにオレのことを捨ててるはずだろ!? でもお前はしなかった!! 優しい証拠じゃねーか!!」

「そんなのっ……ただ見捨てるのが嫌ってだけで…」

「だーかーらー!! そういうとこだって!! すぐに否定するな!! 現実をちゃんと受け入れろ!! たとえそれが嫌なことだったとしても、後々それでよかったって思える日はきっと来る!! ミカはそれを知らないだけなんだよ!! 傷つくことが駄目なことで、だからオレが傷つくのが嫌で無理矢理遠ざけようとしてたんだろ!?」


 自分からは何も言っていないはずなのに、ミネルヴァから言われたことを見透かされた。どこで見抜けたのかと美香は感じた。


「オレはミカが思っているほど弱くはない!! だから、そう簡単に折れたりもしない!! だってミカがいるから、ミカがそばにいるから!! ミカがいるってだけでオレは戦える!! 恐怖だって乗り越えられるんだ!!」

「あ……!!」


 アルマは美香を信じている。心が目覚めたあの時から、ずっと信じている。その心を目覚めさせたのは、美香自身だ。もしそんな自分がいなくなったら、彼はたった一人で生きていられるだろうか。


「……でもっ、やっぱり嫌だよ……!! 傷ついて、それで立ち直れなくなったりしたら、私はそんなの……!!」


 すると、アルマはぎゅっと美香を抱きしめた。


「!!」

「だったら、オレに半分よこせ」

「え……!?」

「ミカが泣くなら一緒に泣くし、苦しかったら一緒に苦しむ。それでミカが少しでも楽になれるなら、オレは全然構いはしない。だから全部背負うな。少しはオレに頼れ」


 そして美香の耳元で、アルマはこう囁いた。


「その分オレが、ミカを絶対に守るから」


 それまで荒んでしまっていた美香の心が、その言葉で救われたような気がした。アルマは何があっても優しい美香を信じる。それが彼の答えのようだ。


「……アルマ、君っ……私……」


 美香が言葉を紡ごうとした、その時だった。アルマの背後に何かが降って来た。


『!?』


 それは紛うことなく、あの紫色の化け物だった。


「お邪魔だったかしら?」


 背中にはあの女性が怪しくこちらを見据えていた。


「リアル充実のところ悪いけど、あんた達にはゼハート様のために死んでもらうわ!」

「……!」


 怯える美香を、アルマは後ろ手に隠した。


「アルマ君……!」

「心配すんなって。言ったろ? 絶対守るって。だから……」


 アルマは前を向いたままサムズアップサインを出した。


「オレを信じろ!」

「!」


 これはもう何が何でもやる気だ。止めることは難しい。なら、今美香にできることはただ一つだ。


「……だったら、約束して。絶対に生きて帰ってきて……!」


 それが美香の精一杯の願いだった。アルマは顔だけ振り向き、笑顔を見せた。


「確かに聞き届けた!」


 アルマは走りだし、化け物とのリベンジに挑む。


「裏切り者のあんたを殺して、私はゼハート様にご奉仕する!!」


 化け物のうなじから無数のコードが出る。アルマはそれを難なくかわしていく。距離を縮め、アルマは拳を突き出そうとした。すると、化け物の口が大きく開かれる。


「おんなじ手は二度も効かねーよ!!」


 アルマは跳躍し、化け物の頭を叩き落とす。化け物の顔部分がアスファルトにめり込んだ。


「なんて馬鹿力……!? なら!!」


 化け物が両腕を勢いよく伸ばしてきた。アルマと取っ組み合いになり、力試しと化した。


「どっちの力が上か張り合おうじゃない!!」


 両者一歩も譲らず抗戦している。すると、アルマの左腕から電流が流れだした。


「くっ……!!」

「聞いてるわよ! あんたの左腕はまだ完治してない! 状況次第じゃまたぶっ壊れるわよ?」


 一度アルマは後退する。


「アルマ君!」

「大丈夫だ! 心配ない!」


 とは言え状況は芳しくない。あまり戦闘が長引けば左腕がまた壊れるのも時間の問題だ。しかしかと言って逃げるのも得策ではない。

 何より相手が逃してくれるとは思えないからだ。


(どうする……一気に突っ切るか……!? いや、それじゃあこの間と同じだ……! せめてあいつの動きが止まれば……!)


 ここでふと、アルマは今日の鍛錬を思い出した。ヴィクトルからこんなアドバイスをもらったのだ。


〈貴様が戦闘する際に足りないのは、圧倒的に頭を使うことだ。その場その場で戦況は変わるのが当たり前。貴様がよくやるがむしゃら戦闘ではどこかで必ず詰む。躓いたらまずはその場凌ぎでいいから頭を使え。この間の敵に関して言うなら、一つだけ方法がないわけじゃない。ただし、それはあくまでもその場凌ぎ。長くは保たんぞ〉

「……そうだ! あれがあった!」


 再びコードが出てきた。アルマはそれを避けながら縦横無尽に走る。


「逃げてばかりじゃ倒せないわよ!?」


 コードを避けつつ、アルマは化け物の周りを走り回った。すると、コードの勢いが急に止まった。


「!」


 見ると、コードが化け物の四肢に巻きつかれていた。


「う、嘘っ!? まさか、これを狙って!?」

(ヴィクの作戦通りだ!)


 アルマは心の中でヴィクトルに感謝し、左手をリボルバー付きの義手に変えた。動きが鈍くなった今ならやれる。アルマは跳躍し、化け物との距離を詰める。

 すると、化け物はコードに取られながらも右腕を突き出してきた。爪がアルマの左の頬を裂く。だがそれでもアルマは止まらない。


「この間のお返しだあああああっ!!」


 アルマの拳が顔面に炸裂し、化け物を貫いた。


「ま、まずいっ!!」


 嫌な予感を察知した女性は高く跳躍した。その直後、化け物は光を出して爆発した。ビルの屋上に避難した女性は悔しがった。


「ちぃっ! キューピッドの奴! 話が違うじゃない!」


 女性は棒を出して光を発射させ、そのまま姿を消した。


「リベンジは果たしたってな!」


 リベンジ成功にアルマは胸を張った。しかしすぐに膝から崩れ落ちた。


「アルマ君っ!」


 美香は慌てて駆け寄った。左腕から電流が止まらない。明らかにオーバーヒートしている。


「やっべ……さすがに無理しちまったな。またミネルヴァに叱られるな、これ」


 やれやれとアルマは肩を落とした。


「悪ぃな、ミカ。また無理しちまった……」


 また美香が泣くか怒るか、アルマはどっちかを覚悟していた。しかし、美香はアルマを後ろから抱きしめてきた。


「ミカ……?」

「……っ、う……!」


 美香は泣いていた。だが今流している涙は、さっきまで流していた悲しい涙なんかではなかった。

 アルマがちゃんと自分を守ってくれた。アルマ本人も約束通り、生きて帰ってきた。嬉しかった。そこから来る涙だった。そして深く後悔した。何故こんなにも純粋な人を置いて自ら死のうとしたのだろうと。彼のためにも自分は死ねない。そう決意した。

 すると、負傷した左腕を上げて、アルマが美香の頭を撫でた。


「……泣くなよ。お前は笑ってる方がいい」


 その手から撫でられた頭越しに、アルマの優しさが伝わってきた。暖かい。そう感じた。


「……ありがとう、アルマ」

「!」

「私を、守ってくれて……!」


 涙ながらに美香は笑顔を見せた。それは心からの笑顔だった。


「……!」


 やっと見れた美香の心からの笑顔に、アルマの心が弾んだ。


「……ああっ! 当たり前だろ? オレはお前を守る騎士なんだからな!」

「うん、うん……!」


 アルマの優しさが、純粋さが、美香の凍った心を少しずつ溶かしていった。


 ♢


 機械兵をなんとか全て駆除し、避難してきた人達も帰ってきた。


「むっきいいいっ!! あれほど安静にしろって言ったのに何その状態は!? また治療復元しなきゃじゃないのよーっ!!」


 イサミからアルマのかかりつけ医として呼び出しを受けたミネルヴァから、アルマはこってりと絞られていた。


「あんた達もあんた達よっ!! 何勝手に戦場に出しちゃってんの!?」


 怒りの矛先はヴィクトルとイサミにも向けられた。


「何だこの女は……ヒステリックすぎるぞ……」

「すまない、副官殿。だがこちらに非があるのは道理。叱られるのも当然かと」

「まあ、それもそうだな……さすがに今回は無理させたしな……」

「とにかくっ!! 応急処置してあげるからさっさとこっち来なさいっ!!」

「わかったわかったって! だから左腕を引っ張らないでくれー!」


 アルマは半ば引きずられる形でミネルヴァに攫われていった。


「……仲直りしたのか?」

「えっ?」

「見ればわかる。さっきと顔が違うからな」

「……はい。後でちゃんと謝りますけど、とりあえずは仲直りしました」


 にこっと笑った美香に、ヴィクトルは珍しく頬を緩めた。


「貴様は仮にも奴の保護者だ。あまり奴を困らせるようなことするなよ?」

「はい、気をつけます」


 ♢


 全てが片付き、帰宅許可が出た頃にはもう外は真っ暗だった。


「ううう……しばらく左腕使用禁止かあ……まあしょうがないけどよ……」


 アルマの左腕には、治療用の固定ギプスが装着されていた。これで完全に左腕は曲げられず、左手もしばらくは使えない。傷ついた頬にもガーゼが貼られていた。


「まあでも利き手は使えるし、不便はあまりないな!」

「……ねえ、アルマ」

「ん?」

「改めて言うね。酷いこと言ってごめん。アルマが傷ついてるとこ見て、頭が真っ白になってたんだ。でもだからってあんなこと言うべきじゃなかったよね。本当にごめんね」

「……オレの方こそ、勢いとは言え悪い部分言っちまってたな。傷ついたんならごめん」

「ううん。私、本当は気づいてた。傷つくのが怖くて、逃げてたってこと。気づいてて気づかないふりしてたんだ。アルマに言われてやっと気づいた。私、臆病で泣き虫で怖がりで、心配症で否定から入ってしまうんだなって」

「で、でも! それでもミカが優しくて、すごく良い人だってのは本当だぞ!? これは断言できる!」

「うん、わかってる。だってアルマも優しいから」


 美香はアルマの右手を握り、頭を肩に寄せた。


「ミカ?」

「……本当にありがとう、アルマ。まだ全部大丈夫とは言えないけど、少なくとも今はもう怖くないよ。アルマがそばにいてくれるなら」

「ミカ……!」


 嬉しくなったアルマは右腕で美香を包み込んだ。


 やがて、二人は無事にシェアハウスに帰ってきた。玄関では穂乃果達が待っていてくれた。


「……ひょっとして、ひょっとしなくてもっ?」

「ヨリ戻ってるね、あれ」


 仲直りした二人に、康二とルカは安心した。


「ア、アルマ君大丈夫!? 左腕どうかしたの!?」

「あっくん怪我してるー」

「大丈夫大丈夫! すぐ治るって!」

「……何はともあれ、お疲れ様。二人分のご飯、取って置いたわよ」


 優しく出迎えてくれる、二人の居場所。

 まだまだ不安要素はあるけれど、今はこの時間を大切にしたい。二人は今日も心から安らげるこの場所に、足を踏み入れて羽を伸ばすのだった。



あとがき

第1章まで読んでくださり、ありがとうございました!


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『アルマかっこよすぎる!』

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