浮気の残り香【元バージョン】

FP(フライング・ピーナッツ)

浮気の残り香

※初めに、こちらは元のざまぁ無しの浮気の残り香です。ザマァあり版は普通に浮気の残り香と言うタイトルです。個人的にはこちらのほうが好きです。良かったら見ていってください。(内容ははっきり言ってそこまでは変わらないです)


それではどうぞ…

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ほとんどの女は化けるものだ。いつも化粧に時間を使っている、それは本当の自分の顔を相当信頼している人以外に見せないためなのだと思う。


俺の母親は浮気をしている・・・と思う。


そう思い始めたのは中学生になってしばらくのことだ。


俺は昔から勉強は苦手だ。だが小学校の頃までは家に帰るたび母親は勉強嫌いな俺を捕まえては勉強を教えてくれていた。


母親は教師ではないが教えるのが非常に上手く、要領の悪い俺でもすぐに問題を解けるようになり学校でも学年トップ3に入る成績が良い生徒になっていた。


その頃は母親が勉強を無理やり強要してくるけど「俺は愛されているんだな」と母親が好きだった。(※マザコンではない)


旅行などにも年一度は行っていた。ある年は夏に大きなプールに俺と父親と母親の3人家族で行き、ある年は冬にスキーに行ったり、またある年は海外旅行などにも行ったりしていてとても充実している。


そして家では毎日のように食卓家族全員で囲むことやこどもの日・ハロウィン・クリスマス・お正月・誕生日など毎度のこと家族でずっと笑っていた幸せ過ぎた家庭だ。


ただ中学生になってしばらく経つとそれらがほとんど全て無くなった。


途中まで勉強を教えてくれていたがそれが突然なくなり俺の成績は地に落ちた、父親に散々怒られたが母親には怒られなかった、まるで関心がない感じだった。昔は一度テストで悪い点を取ったときはハンガーなどで叩かれたりしていた。本当に痛かった。特に冬。


夏休みなどは一度も「今度どこかに行こう」という話はなくクリスマスも朝起きると隣にはプレゼントなどなくあるのは昨日の夜に紙に書いた願いだけだった。


もちろん小学校の頃からサンタ=親というのを知っていたが、知らないフリで紙に書いてプレゼントを要求していた。母親には多分まだこの子はまだ脳が子供だなと思われている。


家族全員食卓を囲むこともすっかり減ってしまった。例え食卓を囲んでも会話もほとんどなく、つまらない話ばかりだ。笑いなどなかった、


一度ハロウィンのときに父親に聞いた。どうして「ハロウィンコスしないの?」って、そしたら父親は「もう中学生になったんだからもうそんなことはしたくないわ!友達としとけ!」とゲラゲラ笑っていた。


それを聞いて中学生だからクリスマスやハロウィンなど親は一緒にしてくれないと知り、全て俺が中学生になってから変わったんだと思っていた。


学校の数人の友達に中学生になって家族の変化を聞くと「うちもそうやわ〜」とほとんどの人は皆言っていた。だが成績が悪くて怒られないということには誰も首を縦に振らなかった。



でも俺が母親が浮気だと本当に疑い始めたのはあることがきっかけだった。


ある日のことだった。俺は中3になり受験勉強をしていたことだ。


突然母親の部屋から電話がかかってきた音が聞こえた。


母親はキッチンでご飯を作っており、母親の部屋とキッチンは家の中では結構離れていた。そして換気扇をつけているせいか母親は電話が鳴っているのに気づいていなかった。


俺はもしかしたら仕事先の連絡やなにか重要な電話ではないかと思い、母親の部屋に行き充電中のだった携帯を母親に届けようとした。


母親の携帯は手帳型のカバーで覆われていた。


俺は駄目だとわかっていながら興味本位で誰からかかってきたのだろうと見ると…


そこには「ゆうた」という名前が書かれていた。ライン電話のアイコンには俺の母親とその「ゆうた」って人が二人で手でハートの形を作っていた。


とても幸せそうな写真だったが、俺はなんだか胸糞が悪かった。


心のどこかでこの写真が同窓会とかで王様ゲームとかみたいなゲームで無理やりやったに違いない。


あんなに良い母親がそんなことするはずがない。そう無理やり理解した。


俺はこの写真について聞こうと一瞬思ったが、なんだか聞くのが怖くて聞くのをやめた。


そのまま何も知らないフリして携帯を母親に届ける。


母親は「ありがとう!」と言った後すぐに「中身見たー?」と微笑んで聞いてきた。   


本当にすごく怖くて逃げ出しそうだったが「いや見てない」と感情を殺して返事をする

と、「あらそう?それなら良かった」と言っていた。


俺にはその瞬間が凍りついたように空気が冷えているのを感じた。




浮気の疑惑をもったまま中学を卒業して高校に入学するとき俺は受験勉強を頑張ったかいもあって有名な公立高校に進学した。


家から学校まですごく遠いため引っ越しをすることになった。その頃に父親も仕事で俺の学校のある地域に転勤になっていたからちょうど引っ越すときだったのだろう。


父親の提案だった。母親は何故か不機嫌だった。今思えばそれはきっと浮気相手と離れ離れになるからだろう…。


そこで俺と両親の寝室は隣同士で、壁が薄く、二人の夜の営みのときは細かい音まで聞こえる。そのおかげか、いや、そのせいか眠れないのである。2つの意味で…


だから俺は営みが始まろうとするとすぐに耳栓をするようにしている。それも2000円ほどの高級品だ。


100均の耳栓ではだめだ。壁が薄いのもあるが母親の喘ぎ声はとんでもなく大きい。


しゃっくりが止まらない人と同じリズムで尚且つ肝試しに行くギャル女の「キャァー!!」より大きい声だ。


そんな母親の喘ぎ声のせいで起きてしまう、それを回避できるのが2000円もする高級耳栓。


気持ちの良い睡眠を取るために2000円なんて安いもんさ!


まぁ高校生の俺の一ヶ月のお小遣いの半分を夜の営み回避に使うのは結構痛手だけどね。



母親は俺が中学の頃からアルバイトをしている。引っ越しをしてからはまた新しいアルバイトをしている。


引っ越してからの母親は何故か昔に戻ったような感じだった。ただ俺にはそれが嘘のように感じた。


しばらくしたある日、父親が今度2週間ほど仕事で海外に行くことになることを知らされた。


それを聞いた母親の顔は笑っていた。


俺はそれに酷く怯えていた。




ある日、俺は風を引いて寝込んでいたとき、隣の部屋から声が聞こえた。


誰かと電話をしている感じだった。


俺はしんどくて疲れていたが何を話しているか不思議と耳を傾けた。


「あなた、久しぶりに会えるわよ!」

「うん、そうよー!可愛い服を着ていくわ!」


それを聞いて、俺は誰だろう?ママ友なんだろうか?と思っていたが、すぐにどういう相手なのかわかった。


「ん?子供が家にいるかって?」

「いるけどあの子風邪で寝ているし、しかも中学になってまだサンタを信じてるくらいだから『浮気』という言葉すら知らないわよ〜!」


隣の部屋から母親の笑い声が聞こえた。


俺は心が痛かった、どうして自分の子をこんなにも知らないのか。


サンタ=親というのも知っている、浮気も知っている、性知識なども学校で習った。仕事で基本外にいる父親は俺がそれらを知っていることを既に知っている。なのになぜ父親より長く関わっている母親は知らないのかと…


「それよりうちのバカ旦那は今度海外出張だってー!ア・イ・ツばっかりズルいわ海外『旅行』だなんて!」


俺は泣き出しそうだった。それでも母親の口は止まらず俺の胸にズキズキと刺さる。


「まぁアイツは金は持ってるからねぇ〜!散々むしり取ることができたら、籍を移してあなたの所に行くわぁ!」


父からの愛は本物だ。笑ってくれるときは笑ってくれているし、悪いことをしたらだめだとしっかり怒ってくれてもいる。  


俺は父親が好きだ、が母親は好きじゃない。


「今度長めの出張だからお泊りデートしよっ!うちの息子にはちょっと昔の友人と泊まりに行くとか適当に誤魔化しとくわ!」


それを聞いて俺は目から涙が溢れこぼれ落ちた。疲れてたせいか涙を流すと眠くなる効果があるのかわからないが俺はそのまま眠りについた。


次に目を覚ましたとき、ふと布団(ダジャレじゃない)を見ると涙を流した跡があった。あの会話は夢じゃないと改めて分かった。




海外出張の日、父を見送ったあと、母親はすぐに化粧を始める。


バイトに行くときと違いいつもより長く化粧を施している。


化粧が終わりリビングでゲームをしている俺に母親は…


「今日私昔の友達と一泊二日の旅行に行くの!」

「だからご飯は自分で作ってね!」

「あんたは私の息子だからいい子にできるよね!」


「う…うん……」


そう言うと母親は玄関を出ていった。


俺以外誰もいない家で俺はゲームをしながら独り言を呟いた。


「あんたは私の息子だからいい子…ねぇー」

「俺はお前を母親とは思わないけどな…」

「化粧してどんだけ綺麗になったって、心は綺麗にならねーよ…」


しばらくしてお腹が空いたとき、俺はキッチンへ向かおうとした。


その時『浮気の残り香』臭い香水の匂いがした。


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