第2話

近藤さんに謝罪した後は、前金払って30連泊してる 薬師やくしさんを内線で呼ぶ。

定期的に客室を清掃する為だ。


内線に出た薬師さんは案の定ご機嫌だった。


「おう〜フロントの兄ちゃん。今キマっててさ〜」

「それは結構ですが、定期清掃の時間ですので20分ほどロビーで待機してもらえませんか?」

「りょ〜かい」


そうして薬師さんがご機嫌な感じでロビーに出たのを見計らって部屋を清掃した。

掃除夫が居ないので俺がベッドメイクまで一通りやったが見えない所に使用済み注射器が転がってて焦った。


「薬師さん、注射器ちゃんと蓋して下さいよ」


俺は薬師さんに一言注意した。


「申し訳ないね、兄ちゃん」


薬師さんは謝ると部屋に戻って行った。

さっきも言ったけど、ここのホテルに来る人は色々いる。


ヤク中、ヤバい薬を売りに来た奴、暴力沙汰を起こしそうな客、田舎から出て来たばかりの客、借金まみれの客、自殺志願者、などなど…… だから俺はそんな人達の為に常に最善を尽くしたいと思っている。


その包摂性が『ホテルFuckin' Tokyo』の持ち味なのだから…。

それから数時間後、俺は休憩室で仮眠を取っていた。


今日の仕事も終わりあと1時間ほどで日付が変わる時間帯だ。

……今日もよく働いたなぁ。

こんな時はやっぱりアレに限るよな。


俺は売店に行くと、いつも買っているドリンクを手に取った。


『Fuckin' Drinks』


名前から良からぬ薬でも入ってるのか? と誤解されがちだが、実際は単なる自家製エナジードリンクである。

ちなみに味は薄っすらコーヒーの味のする一般的なエナジードリンクのそれだ。

……これを飲むと嫌な事も忘れられる気がするんだよな〜♪


今回俺が飲んだのは軽い『Fuckin' Lite』の方だ。

ここでよくカンヅメになってる常連の作家先生方にはタウリンとアルギニンとカフェインがガッツリ添加された『Fuckin' Heavy』が好評だ。


何せ缶一本飲むと二日は寝れなくなるのだ。

通販でも24本入りギフトセットが飛ぶように売れるのも頷ける。


噂をすればエロ小説の大家、 院景四五九いんけいしごく先生が『Fuckin' Heavy』を二缶買い、自室に戻って行った。大家は今年で55歳になるらしいけど、まだ現役バリバリだそうだ。


俺みたいな若造と違って気力あるよな〜。


そうこうしてる内に俺の勤務時間は終わり。

支給されたタクシー券を使い、タクシーに乗り帰 宅。

そのまま倒れ込むように寝た。

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