世界最強の"王"が行く異世界制覇譚

Leiren Storathijs

第1話 異界の神

 王の名はアロガン・グリード。とある世界の一国の王でありながら、その世界を統治した男。その期間100年。

 生涯を終えるまでに齢100を超えても、威厳は変わらず、世界の民に愛されながら天へ招かれた。


 性格は傲慢で強欲。しかしながら愛国者という佇まいに反発する者もいたが、何にも曲げられない神的なカリスマ性は、100年という期間。世界中の戦争までも止めるという偉業を成した王だった。


 そうして生涯を終えた王だったが、死しても尚、その強欲は消えず────。


「神よ、我は死なん。死そのものさえも我は統治して見せよう。

 我は神の死の運命などという下らん戯言に付き合っている暇は無いのだ。

 今すぐ我が魂を現世に戻すが良い」


 最早一周回って清々しさを感じるその傲慢さに、一人の神が微笑った。

 この者は次の"統治者"に相応しいと。


『我は異界の神ルーラー。世界の王アロガンよ。我は今この時より、汝を次なる統治者へと認めたり。

 死を支配しよとうとし、神をも貶すその心意気が気に入った。

 汝の魂は汝の言う神の戯言により、現世に戻すことは出来ないが、更に生を求めるならば、別の世に送ろう』


 王は異界の神に笑い返した。


「ほう。真に神がいたとはな。今我は魂という体に、身動きが取れないというあり得ない状況だ。

 貴様が神であると信じるには十分すぎる現状であろう

 さて、異界の神ルーラーと言ったか。初めて聞く神の名だな。我を別の世へ送るとは、どう言うことだ」


 異界の神ルーラー。その名は王のいた世界では聞き及ばない神であった。

 王のいた世界ではそれも多くの神が信仰されていたが、異界の神とはその意味も王には理解出来なかった。


『異界の神とは、死者の国へ還った魂から選び、別の世へ新たな生を届ける役目を持つ。

 言わば転生。稀に、人に前世の記憶があると言う者は、正に異界の神の役目が影響している。

 死者の国とは、現世で死した者の一時的な故郷。そこで魂は次なる生を神に求め待つ場所である。

 よって汝は、その国から選ばれた一つの魂に過ぎぬ。深く考えることは無い』


「では、"次の統治者"とはなんだ? まさか、我がその世を統治しろとは言うまいな?」


『その通りだ。死を支配したいほどに生きたいのならば、次の世を統治すれば良いだろう。我は汝がどのような王かなどは知っている。

 だが次の世は汝が思う以上に過酷。汝がその世をどうやって統治するか我に見せよ。


 ……正直に言おう。神の遊戯に付き合え。汝にはその価値がある』


 神の戯言と言う通り、異界の神と名乗る者の話を長々と聞いていれば、最後に言われた神の遊戯という発言に王は微笑する。

 なにが死の国からの選抜か。何が次の統治者だ。やはり全て神のお遊びか。と、少しは真面目に話を聞いていたことが馬鹿らしくなる。


「そうか……。良いだろう。そのお遊びに付き合ってやる。今や魂の身。どうせ現世に戻せないのも事実なのだろう。

 ならば我がお前の言う通りに、その世界を統治してやる。よく見ておけ」


 その発言にまた神も微笑する。ここまで曲がらない魂は久しぶりだと。


『ならば行くが良い。別世界へ。お前の記憶と才能全てを引き継いで。

 世界を調停し、民を愛する。その姿を見せてくれ』


 ────そうして、王の視界はゆっくりと暗転し、意識はだんだんと途切れていった。

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