第4話 異世界最初の町

 一度部屋に戻った。

 自分の部屋に戻り、出かける服装に着替えるため、服を脱ぐ。今まで着ていた服装だと目立つという理由からである。

 脱いでいる最中、ふと自分のことについて考えた。まず、朝食は高級そうな食べ物ばかりだった。その時いた自分の父が国王であること。城っぽい感じや高級そうな服。今思いつく所はこのくらい。そう考えると、自分の身分は結構高い位置にあると考えることができる。つまり、貴族の可能性が高い。


 そんな事を考えていたら、ガチャッとドアが開き

「まだ着替え終わっていなかったのですか?」と呆れた表情を浮かべたイオがいた。僕は急いで服を着た。

「ご、ごめん。ちょっと考え事をしてて…」

「やはり、今日はいつものカルマ様とは、様子が異なりますね。」

「そっ、そんな事はないよ。」

「そうですか。しかし、何か悩み事がありましたら、遠慮なく言ってください。」

正直、あの紙の事はイオに相談したい。しかし、僕はイオや他の家族に様子がおかしいと思われている。そんな状態で相談なんか出来るわけがなかった。

 

 自分の部屋を左に行くと中央階段があり、そこを降りると一階の出入り口に繋がる。入口付近にリミア姉さんが立っていて、誰かを待っているようだ。降りてくる僕に気づいて、近くに駆け寄ってきた。

「ちょっと遅かったわね。何してたのよ?」

「あー、ちょっと考え事をしてて…」

「珍しいわね。普段考え事なんかしないのに。」

「そんな事ないよ。」

この世界の『僕』でいるためには、様子が変でも否定しないといけない。まぁ、急に様子が変われば誰でも怪しむ。


 姉さんとの会話が中々終わらないので、イオが話を中断させて、やっと外に出た。

 王宮の外は広く、周囲には騎士っぽい人達が声を上げて訓練をしているようだ。予想した通り、騎士達は存在していた。

 大きな門を通り過ぎると、下の方は町が広がっている。王宮の位置として、山の付近に建っていて、町は平野の方に広がっている。坂を下り、石造りの家やレンガの家などが多くなってきた。前世ではビルなどがあったり、割りと都会の方に住んでいた。

見慣れない景色を見て、僕は改めて異世界に転生したと実感をした。なので、思わず

「なんか見慣れないな。」と言葉にしてしまった。

また怪しまれるかと全身に緊張が走る。

「そうね、カルマは普段町には行かないからね。何か新鮮でしょ?」

「そうだね、姉さんは普段出かけてたりしてる?。」

「う〜ん、月に2,3回くらいかな。貴族って結構予定とかあるし、中々出かけたりとかさ、難しいじゃん?」


 僕はこの世界に来て間もなく、貴族の予定とか全然分からない。僕と姉さんは年齢や性別が違うし、同じ予定とは限らない。なので、僕はその質問には答えなかったけど、「うん」と頷いた。


 人通りが多くなってきて、賑やかな声がだんだん聞こえてきた。ほんの少し歩いたら、広い道に出て、そこには多くの店が並んでいた。食べ物や武器、何かのアクセサリーなど種類も豊富。一軒ずつ見たい気持ちになったが、何を買うのかまだ聞いていなかった。


「イオ、今日は何を買うの?」

「今日は、小麦と肉とフルーツ系といった食べ物の買い出しです。」

「ちなみに、どんな種類の動物やフルーツなの?」


 僕はこの質問して少し後悔した。なぜなら、全部知らない動物やフルーツだったからである。しかし、彼女達からしたら僕はこの世界の人間、知らないじゃ不自然なので、「あー、あれね。美味しいやつ。」と知ったかぶりをした。

そんな雑談をしていると、フルーツや野菜っぽいものがある店に着き、早速品を選び始めた。すると、若い男性が店の奥から出てきて、此方に駆け寄っ

た。

「いらっしゃい。おっ!イオじゃないか。今日は何を買いに来たんだい?」

「こんにちは、ザラさん。今日はメイルの実とアロカの実を買いに来ました。」


 会話の様子から、二人は知り合いっぽい。そういえば、ここって国民も買える場所なのに、貴族の僕たちは此処で買ってもいいのだろうか?

「姉さん、僕たち貴族も買って大丈夫なの?」

「確か、問題はないわね。王宮内に出てくる食材の殆どは、この辺りに売っている物を、貴族たちが買っている感じ。」

 普通に驚いた。貴族専用の店があって、そこで買っているものだと思っていた。でも、なぜ国民も買える店に食材を買いに来てるのか。疑問が残る。


「イオ、何でこの辺りの食材を買っているの?」

「王様が、この辺りの店を信頼しているので買ってもいい、と以前言われました。なので、私は此処で食材を買っています。」

なるほど、と頷いた。王様がそうした行動をするのは、貴族と平民との壁を無くすという考えなのか。そうならば、王様は平民のことを考える立派な王なのだと思った。


 さっきから、ザラさんが僕の方に視線を向けていた。その視線が気になり、ザラさんの方に向くと視線があった。

「なぁ、イオ。そちらの少年は?」

「王様の息子である、カルマ様です。」

「まじですか!?じゃあ、そちらの女性は?もしかて…」

「はい。カルマ様の姉のリミア様です。」

イオの紹介で驚いているザラ。驚くのは無理もない。王様の子どもが二人も揃って店を訪れているのだから。

「いや~、これは失礼しました。私はザラと言います。」

それに続けて、僕と姉さんは名前を言った。その後、目的のアロカ?とメイル?の実を2個ずつ買って、イオがこの国の通貨を出して払った。


「毎度買ってくれてありがとうな。また、仕入れとくからよ。」

そう言って、イオがお辞儀をして店を出た。次は小麦を買うので、別の店に向かい、再び広い道に戻る。

 しばらく歩いていると、トン、トン、トン。と後ろの方で足音が妙に近くで聞こえた気がした。一瞬振り向いても、人々が歩いているだけ。これだけ人がいたら、近くで足音がなるのも不思議ではない。


 しかし、以前に似たような事を体験したことがある。その時は一人で家に帰っていて、視線を感じて振り向いても誰もいなかった。しかし、途中にあったカーブミラーに自分の跡をつける人が二人映っていたことがあった。

 

 しかし、ここは異世界、カーブミラーなんて物はない。確証はないけど、誰かにつけられている。トン、トン、トン。また聞こえた。振り向こうとした次の瞬間、イオが思いっきり僕と姉さんの手を掴み、「走ります!」と言い、全速力で走り出した。すると、足音が聞こえていた音は段々間隔が短くなっていき、相手も走り出した。走っていると、大きな噴水のある広場に着き、奥の方に店があるのを見つけた。そこに僕たちは避難させられた。


「ハァ、ハァ。一体どうなっているのよ!カルマ。」

「そっ、そんなの、分からないよ。」

走り疲れ、息が乱れる。イオは「そこにいてください。」とだけ言って外の方に戻った。

窓の外を見ると、イオの方に一人で走ってくる者が見えた。そして、その者がイオに対して


「おい、お前さん。あの貴族を知らんか?」 

と低い声で質問をする。声からして男性であると予想。イオはその質問に「知りません。」の一言で返した。その態度が気に入らなかったのか、男は短剣を出し、戦闘態勢に入る。

「もう一度だけ言う、あの貴族はどこだ?」

男の圧のある発言を無視し、その発言がウザいかのように殺気のある眼つきで、言い返す。

「何度も言いますが、知りません。」


周囲がざわつき、一斉にそこから逃げる平民。目的は僕たち。心臓の鼓動が早くなり、中々ゆっくりにならなかった。

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